ネクスト・ゴール・ウィンズ : 特集
【実話】負けを知るすべての人々に贈る、人生の応援歌
笑いと感動の波が同時に押し寄せる このジャンルでは
ここ10年でベストの超良作 みんなで映画館に行って、
みんなで笑って泣いて、“幸せ”な気持ちになれる1本
“良い映画”を観た後、どんな感情になりますか? 身震いしたり、興奮したり、胸がいっぱいになったり。さまざまな感情が生まれますが、その一つに“幸せ”を感じることもあります。
たくさん笑って、気付いたら感動の涙を流して、鑑賞後には幸福度が上がっている――そんな最高の体験ができる映画「ネクスト・ゴール・ウィンズ」が、2月23日から公開されます。
「ジョジョ・ラビット」のタイカ・ワイティティ監督が手掛けた本作は、米領サモアのサッカーチームで起こったまさかの実話を描いています。一緒に映画を観た相手と「面白かったね!」と話す時間までも楽しいおすすめの1本です。
この特集では、見どころを解説しつつ、本作を観て幸せを感じた理由をご紹介。映画.comユーザーの皆さんにも、ぜひ素敵な体験を堪能してほしいです!
【ホントの話】破天荒なコーチ、最弱チームを立て直す
暗い話題を吹き飛ばす、“負けを知る人々への応援歌”
まずは、概要とあらすじを簡単にご紹介します。興味をそそる物語に、誰かと観に行きたくなるようなメッセージと、観たくなる要素がてんこもりなんです!
●物語が良い!一度もゴールしたことのない“世界最弱級のサッカー代表チーム”が、落ちぶれた名コーチと猛特訓…でも問題だらけ! どう這い上がる? どうやって1点とる!?
わかりやすくあらすじを伝えると、負け続きのサッカーチームが、1勝を求めて戦うお話。王道でドラマ的なのに、これが実際にあったことなんです。
2001年、ワールドカップ予選史上最悪の0-31の大敗を喫して以来、1ゴールも決められていない米領サモアチームに、次の予選が迫っていました。チームを悲願の勝利に導くため、破天荒な性格でアメリカを追われたトーマス・ロンゲンがコーチに就任することになり、猛特訓を開始しますが……。
詳細は次の【超期待して大丈夫】の部分で改めて語らせてもらいますが、1勝を目指して特訓するなかで、コーチと選手それぞれが成長していくというストーリーが丁寧に、かつユーモアを交えて描かれます。舞台となる米領サモアならではの陽気で穏やかな雰囲気もあり、心に温かい光が差すような気持ちになっていきました。
●ここ10年でベスト級、おすすめしたい一作!アツい涙が止まらないクライマックスを、ぜひ劇場で
鑑賞後に思い出したのは、過去に挫折した経験でした(筆者の場合は、学生時代の部活)。人は誰しも、生きていれば何かに挑戦するなかで挫折の一つや二つ経験しているはずです。
目標に向かって努力を続けること、仲間との関係性、そして、挫折を経験したからこそ、さらに大きく成長できるということ。本作はそんなシーンを丁寧に描くことで、“負け”を知るすべての人々が共感できるストーリーであり、自分も頑張ろうと思えるような、前向きなパワーを与えてくれます。
クライマックスの試合のシーンでは、涙が流れていました。悲しい涙ではなく、胸を熱くさせるドラマに心を動かされ、自然とあふれた感動の涙です。笑って泣けて、満足度がかなり高い……! 同じようなヒューマンドラマのジャンルとしては、ここ10年で間違いなく“ベスト級”だと胸を張っておすすめします。
2024年、日本では悲しいニュースが続き、心を痛めている方も多いと思います。本作は、観れば心が癒されるような素敵な体験が味わえる……そんな映画なのです。
【超期待して大丈夫】監督はアカデミー賞受賞の鬼才!
“らしさ”全開のユーモアと感動が一つになっていく
「ジャンルとしては、ここ10年でベスト級」。大きなことを言ったなと思われるかもしれませんが、この項目では作品としてのクオリティーを証明していきます。確かな魅力、まだまだあります!
●ベスト級な理由①:監督
「ジョジョ・ラビット」を手掛けたコメディの天才 スポーツ×ヒューマンドラマを撮ったらどうなった!?
脚本・監督を務めたのは、映画ファンから絶大な人気を誇る「ジョジョ・ラビット」で第92回アカデミー賞脚色賞を受賞したタイカ・ワイティティです。
ワイティティ監督の作品といえば、「シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア」「マイティ・ソー バトルロイヤル」など、独自でセンスの良いユーモアが特徴。本作でもそのユーモアセンスは印象的ですが、シリアスなシーンとのバランスも絶妙(トーマス・ロンゲンの過去の話は泣いた……)なんです。
父親がマオリ族出身のワイティティ監督は、自らを「ポリネシア系ユダヤ人」と表現しており、ポリネシア地域にルーツがあります。映画の登場人物の“民族的な感情”を、“当事者に近い”温かな視点で捉え、それを弾けた笑いに昇華させているのも、ワイティティ監督ならではの“技”と言えます。
●ベスト級な理由②キャスト演技派マイケル・ファスベンダー×無名だけれど上手すぎる俳優陣
トーマス・ロンゲンを演じたのは、「それでも夜は明ける」のマイケル・ファスベンダーです。激昂しやすい性格ですが、ちゃんと反省できる人であり、応援したくなるような人間臭いキャラクターを体現しています。
ファスベンダー以外のキャスト、特にサッカーチームの選手を演じたキャストたちは、まだ名の知られていない俳優たちが演じているのですが、これが揃いも揃ってみんなすごい。
特に、FIFAワールドカップ初のトランスジェンダー選手(米領サモアではファファフィネ=第3の性と呼ばれています)のジャイヤ・サエルアを演じ、自身もファファフィネであるカイマナの演技には圧倒されました。太陽のような存在のジャイヤ、大好きです! もっといろんな作品で観たくなる逸材揃いなので、ご注目を。
●ベスト級な理由③ストーリーとメッセージ予想以上のユーモア! 新鮮な笑いと感動が同時に押し寄せてくる
全体に流れるのは、諦めずに希望を持っていこうという前向きなメッセージです。王道でありながら、そこにワイティティ監督ならではのいい意味で力の抜けた笑いのエッセンスが加わることで、新鮮さも感じます。予想以上に笑えたことでそのメッセージが押しつけがましくならず、すっと伝わってくるんです。
そのワイティティ監督も本作に出演しています。登場シーンからクセが強くて、「さすがだ……」としばらくツボにはまっちゃいました。こちらもぜひお楽しみに。
【レビュー】笑って泣いて楽しんで、幸せになった時間
今だからこそみんなで観たい、大切にしていきたい1本
最後に、編集部員のレビューを通して本作の魅力を紹介していきます。
実は、たまたま参加した試写会が過去一レベルに超最高の雰囲気だったんです! そんな嬉しい体験もあり、大いに笑って楽しんできました。鑑賞後は心がぽかぽかして、これからどんな困難があっても前向きになれそうな、そんな気持ち。映画.comのユーザーの皆さんも、最高の映画体験をしに映画館へ行きましょう!
笑いながらポップコーン食べて、没頭して、また笑っていい「タイカ・ワイティティ監督の作品は好きだけれど、今回はどうかな」。厳しい寒さの日、そんなことを考えながら試写会場に向かっていました。場内で近くの席に座っていたのは、サモア独立国大使館の皆さんでした。
上映がスタートしてから10分。この辺りからずっと、サモア独立国大使館の方々がめちゃめちゃ笑っていたのです。「笑っていいんだ」「このシーン、あるあるなんだ」とつられて笑う人が増えていき、場内の雰囲気が一気に和やかに(ありがたかったです!)。その後も何度も笑って、どんどん陽気な世界観に入りこんでいきました。
個人的に悔やんでいるのは、関係者向けの試写なのでポップコーンが食べられなかったこと。この映画、絶対にポップコーン片手に観たいやつでした。たくさん笑って、ポップコーンを食べて、また映画に没頭していって。公開後に劇場でリベンジしようと決意しました。
超リアル 賑やかだった場内が、終盤は水を打ったように静かになって……盛っているわけではなく、場内では10分に1回くらいのペースで笑いが起こっていました。しかし、終盤の試合シーンになると、水を打ったように静かになっていったんです。
ゴールを決めて1勝できるのか――試合の行方を真剣に見守っていることがわかり、まるで現地で試合を観戦しているような臨場感に。私もいつの間にか手をグーにして緊張しながら、祈るように本作にのめりこんでいました。
クライマックスは胸アツ みんなで劇場へ行って楽しもう!そして迎えたクライマックス。これまでの米領サモアチームの歩み、コーチのトーマス・ロンゲンと選手たちが距離を縮めていく過程を観てきたので、本当に本当にぐっときました。何かに夢中になって、挫折して、でもやり遂げた過去の経験を思い出して、涙を拭っていました。
劇場を出た後、同じく試写に参加した編集部員たちと「めっちゃ良かった~」「劇場内の雰囲気も明るかったね」などと話しているとき、みんな自然と笑顔になっていました。それが嬉しくて、観る前よりも幸福度が上がってるのが自分でもわかりました。一人で観るのもいいけれど、誰かと観に行っても間違いなく楽しめる&盛り上がれる作品です。
「ネクスト・ゴール・ウィンズ」は、2月23日から公開です。映画.comのユーザーの皆様も、幸せな映画体験を堪能してください!