「ポリネシア文化の面白さをふんだんに見せてくれた」ネクスト・ゴール・ウィンズ 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
ポリネシア文化の面白さをふんだんに見せてくれた
タイカ・ワイティティ監督は、大作よりもこういうほんわかした作品の方が力を発揮できていて良い。米領サモアのサッカー代表の実話を映画化したものだが、サッカー云々よりも、ポリネシアのカルチャーを描くことと、主人公の白人男性の心の成長を描くことに主眼がおかれている。
これが米領サモアが舞台であるというのも一つキーポイントで、この地では白人は歴史的には占領者でもある。南国の新鮮な文化に触れて触発される欧米人というのは、オリエンタリズム的な観点でよくあったわけだが、そうなりすぎないに描いている点はさすが。結局のところ、主人公の教え方では勝てないと悟り、サモア人たちに合ったやり方を尊重することで勝利するという展開に、啓蒙する欧米、啓蒙されるポリネシアという図式も壊している。陽気なサモア人はいつでも楽しもうとしている。楽しんだもの勝ちであるという風土をリスペクトするということで決着する点や、ファファフィネが自然にチームにいるという状況など、欧米とは異なる歴史と文化の重みをきちんと感じさせてくれるのがいい。米領ではあるが、完全に欧米化されない部分をふんだんに描くことで、欧米視点とは異なる多様性を見出すことに成功している。
コメントする