「ワン・ゴール」ネクスト・ゴール・ウィンズ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
ワン・ゴール
スポーツ実話って、案外映画化が難しい。
個人に焦点を当てた伝記ならまだしも、試合そのものだと結果が分かっているからだ。
スポーツは筋書きの無いドラマ。そこが醍醐味。
勿論、やりようによっては巧く見せられるが…、そこは異才タイカ・ワイティティの腕の見せ所。
“筋書きの無いドラマ”と言ったが、本作の題材がまさにそう。
アメリカ領サモアのサッカーチーム。
2001年のW杯予選で、オーストラリア相手に31対0の大敗。これはW杯史上最低の記録だという。
それどころか、チーム創設してから一点も得点を入れた事が無い。
稀に観る弱小チーム。最弱レベル。
そんな彼らが如何にして初勝利を飾ったのか…?
実話であり、2013年にドキュメンタリー映画化もされている。
さてさて“3試合目”を、ワイティティがどう見せるか…?
熱血!感動!…のスポ根ではないのは容易に予想出来る。
ワイティティ本人も謎の語り部として登場するなど、人を食ったユーモア。
実際にチームに所属しているトランスジェンダー選手やサモアの文化など多様性テーマもシリアスになり過ぎず、軽快に。
サッカーに興味無くとも実際の試合を知らなくともすんなり見れる。
世界弱小チームを立て直す為に、アメリカ人の鬼監督トーマス・ロンゲンが雇われる。
…と、一見王道なのだが、
サッカー界で名を馳せる名監督ではなく、別の意味で名を馳せる。つまり、
すぐにブチギレ、度々暴言や問題行動を。米サッカー界の暴れん坊。
クールな役やシリアスな役が多いマイケル・ファスベンダーがリアクション爆発の演技。
そんな性格故米サッカー協会が仕事の無いロンゲンに新たな仕事を手配したように見えるが…、要は厄介払い。
暴れん坊監督と弱小チーム。当初はロンゲンもやる気なく、選手たちもソリ合わず。
勝てる訳ない。負けて当然。端から捨てゴマの負け犬たち。
そのままでいいのか…?
選手たちはあの大敗のトラウマを未だ抱えているが、サッカーが嫌になった訳じゃない。
サッカーは好きだ。それにやはり、勝ちたい。せめて、ワン・ゴール。
ロンゲンは渋々監督を引き受けた中で、選手一人一人にポテンシャルがある事を確信する。
各々の才を活かし、スカウトもし、僅か4週間後のトンガ相手の予選試合に向けて…。
負け犬監督とチーム。ワイティティ印であっても、何だかんだ王道のゴールを決める。
悪くはない。が、作品自体、最高の名試合って訳でも…。
訓練や練習。何だかそれほどタメになるアドバイスやコーチ無かったような気が…。
チームが成長する上で重要なここら辺が淡白であっという間。実際に4週間だから仕方ないが…。
試合が始まると、また負けモード。ビビってしまう。ロンゲンも遂に呆れてしまい、試合も監督もボイコット…。
が、己の傲りを見直す。試合に対しても見方を変える。
勝とうとするからプレッシャーに感じる。
楽しめばいい。ただただ、リラックスして楽しんで試合を。
そこからチームは変わり始め…。
その気持ちの持ちようは悪くはない。けど、技巧云々ではなく、結局精神論…?
クライマックスは遂に初勝利を果たした試合で高揚感を見せてはくれるが、サッカーや試合そのものより関わる人間模様の方に重視な気が…。描きたかったのはそっち…?
それもそれで悪くないんだけど、他のチームからの誘いや監督続投を断って、人生にはサッカーより大切なもがあるって…。
弱小チームの奇跡の初勝利を謳う作品なのに、それでいいの…?
笑って、エキサイティングして、奮闘して、ハートフルにも。
見た人の満足度は高いようだが…、
個人的には平凡な試合。
ワイティティ、ちょっとゴールを外したか…?