「大丈夫デス」ペナルティループ kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
大丈夫デス
ループもの作品が大流行する中で、低予算でありながらオリジナリティに富んでいる。何しろ、誰が砂原唯(山下リオ)を殺したんだ?!という過程が全く描かれず、犯人であろう男・溝口を復讐のため何度も殺すというストーリーなのだ。いや待て。2回目の6月6日からは溝口も岩森によって殺されるということを知ってるぞ!つまり、通常のループ作品ならば主人公(もしくはそのパートナーとともに)の視点でのみ繰り返しが認識されるのに、殺される相手も繰り返しを知っているのだ。まるでAI。うーん、斬新。
しかしながら、あの手この手で殺人を試みたりすれば、相手だって身構える・・・が、相手の溝口は殺されることを運命だと思って素直に受入れている。やがて、被害者遺族のためのループゲームをVRによって実現しようとしている業者がいることが判明。岩森と溝口は運命共同体のようにシンパシーすら感じている様子だし、復讐殺人を手伝ってさえいるのだ。笑いと虚しさも取り入れたゲームの世界・・・しかし、いつ終わるんだ?
いいように解釈すれば復讐することの虚しさをメッセージとしているのだろう。そして、『マトリックス』的装置と『オーメン』の666。色んな映画の要素を取り入れて、静かに展開する雰囲気は好きだけど、全てが業者によるものだと考えると、単に復讐劇を楽しんでるだけのような気もする。全ては夢、ゲーム。平凡な日常から抜け出したいがために、VR業者が暗躍する世界とも言えようか。
ラスト、自損事故を起こして痛い思いをする主人公・岩森。ようやく現実に戻れたことの証ではあるけど、「痛み」ということがわかったようなのでハッピーエンドなのでしょうね。
