「斬新な視点の変化」ペナルティループ つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
斬新な視点の変化
クリックして本文を読む
タイムループものの作品は数多くあるが、この作品が他と一線を画する部分は視点の違いにある。
多くのタイムループものは主人公が謎のタイムループに巻き込まれそこから脱出するものだ。しかし本作では「謎のタイムループ」を仕掛ける側が主人公なのが面白い。
つまり、大概は伊勢谷友介演じる死刑囚が主人公側であるはずなのだ。
そして、物語は、若葉竜也演じる復讐者がタイムループを繰り返すだけの状態から死刑囚の視点が加わり俄然面白さを増していく。
てっきりループしても復讐者以外の人物の記憶その他はリセットされるものだと思っていたから、死刑囚にも記憶が蓄積されているところが面白い。そのせいで二人の攻防は複雑化していくが、死刑囚が何となく状況を理解し始めてから劇的な変化が起こる。
それはある意味で復讐者の心境の変化でもある。
タイムループを抜け出せず、プログラムの終了を待つだけになってからは死すらもどこかコミカルで、二人は陽気だ。
思いもしなかった展開に驚きと笑いが込み上げる。
そして最後にもう一つ興味深い点として、死刑囚の変化を上げたい。
死刑囚はプログラムの存在であるから実在しているわけではないバーチャルだ。本来は死刑囚に変化は訪れないはずである。
逆にいえば、復讐者との交流によって変わったのだとすると、それは事前に予想できる範囲の行動だと言える。
つまり彼は、悔い改めることができることを意味する。
最後にリセットされたあと、残された「絵」にもの悲しさを感じた。
と同時に、意味があったのか定かではない復讐劇に一筋の光明と新たなしこりを残し、複雑なやるせなさを感じた。
コメントする