「「あの日から私達はずっと二人でいる」」路辺花草 いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
「あの日から私達はずっと二人でいる」
俳優・岡本信人の野草調理の話ではないが、なんとも世知辛い話を、私小説風に作られた作品である
共依存からの脱却の為にしこたまDVを受けた女が、(どんな関係かは描かれていないが)ある男の元へ転がり込み、その傷を癒しつつ恋仲に堕ちる しかし男も倒産により、職を失い今後の不安が現実に迫る中、経済的に追い詰められた二人はどうなるのか?という基準点からスタートする
男の元妻からの恋慕、又は女の拭いきれないDVの後遺症や精神の病の中で、登場人物達が中々前に進めず藻掻く様は、痛いほど解るし、なんなら正しく自分自身の投影である 男は愛する女を助ける余り、段々と前の男のような共依存を現してくる 女はその男の優しさが、いつか観た地獄を想起させ、錯乱に陥る 経済が破綻すると如何にして人間は正体を表わすのかを如実に物語る内容である それ以上に痛々しいのは、肋骨骨折の治療をせぬ儘、ほったらかしにしてしまった結果、性愛時にやたら骨音が鳴り、痛みも伴う症状を発するシーンは、今迄の濡れ場では考えられない程、苦痛に歪む気持での観賞である 現実には多分そんな行為など出来る筈もなく、即座に中止して、医者に掛かるのが普通だが、いかんせん二人には金がない 結局、経済的困窮は恋愛でさえも醒ましてしまう それでも二人はその状況を克服せんと、藻掻く 夢なのか現実なのか、女は元の男の元へ行き、SEXで決着を着ける 男は、元妻からの依頼の仕事の怪しさを受け入れ、4日間の大坂出張に出るが結局は20日間も家を空けることになってしまう もしかしたら仕事の内容等嘘で、元妻の求めに応じることで幾ばくかの応酬を得たのかも知れない そんな二人が、それでも二人だけの世界から、もう少し引いた輪を構築することで新たな関係性を構築しようとする将来に、灯りが見える結末になっている ベランダに植えた小松菜やレタスは、もしかしたら"子供"の代替かもしれない 傷付け合いながらも前に進みたいその姿勢は、本当に学ぶべき作品であった