「不安症にとっては居心地のいいファンタジー。」ボーはおそれている 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
不安症にとっては居心地のいいファンタジー。
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個人的には冒頭のパートがコメディとしてべらぼうに面白く、そこから先は3、40分ごとにスタイルを変えていくこともあって、振り落とされないように、ほどよく刺激的かつときおり退屈を感じながら最後までたどり着いた。明らかに、観客を戸惑わせ、右に左に振り回すのが目的の映画だと思うので、まんまといい観客をやりました!とアリ・アスター監督に報告したい気分。
ただ、大好きな映画かと自問するとそこまででもないのだが、アリ・アスター作品では一番しっくりと身近に感じられる作品でもあった。というのも、不安症のあり方に非常に親近感が湧く描写が続き、とにかく最悪のことを想像し、実際に起きることを想定して覚悟することが人生を無事に生き抜く方法だと思っている者として、この映画の心配性は他人事ではなく、でも1/1000くらいの確率でしか起きないはずの最悪の事態が、ここではほぼ100%の確率で発声するのだから、むしろカタルシスを感じて気持ちいい。
この映画は「イヤな想像はすべて映画の中に置いていけ!」というアリ・アスターなりの親切なのかもしれない。たぶん違うと思うけど、そういう効能は確かにある。
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