「演技が下手な演技」愛にイナズマ サプライズさんの映画レビュー(感想・評価)
演技が下手な演技
10月公開作品で1番に楽しみにしていた本作。予告の出来が完璧であるために、多少の不安はありましたが、、、はい。とんでもなく面白かったです。石井裕也監督の「町田くんの世界」が大好きな私としては、本作も好きにならないわけが無い。しかも、映画作りの映画かつ、お仕事映画必須の松岡茉優とカメレオン俳優・窪田正孝のダブル主演。映画ファン歓喜やで、こんなの...ずるいもん。
冒頭はひたすら三浦貴大とMEGUMIにイライラ。信じられないほど、イライラ。これがリアルなのかもしれないけど、そのシーンがあまりに長すぎて、結構見ているこっちもストレスが溜まった。かなりキツイ。もう分かったから、これ以上何も言わんといてや。ここまで腹立たしい助監督とプロデューサーを完璧に演じれるなんて、誰かモデルが居るんだろうな〜。とにかく見ていられない場面、というだけなのでここの尺はもっと短くても良かったのかな。
そんな2人とのいざこざがあり、そんなこんなで家族と再会。ここからがべらぼうに面白い。松岡茉優×窪田正孝のタッグの時点で、めちゃくちゃ笑って既に刺さっていたのに、佐藤浩市・池松壮亮・若葉竜也という、主演を張れる強面メンツが家族役で登場し、完全にノックアウト。こんなのね、やっちゃだめ。演技が下手な演技が上手いって、マジどゆこと。「みんなのことが大好きだ」と棒読みで言っちゃう佐藤浩市に、腹痛くなるほど大笑い。松岡茉優と池松壮亮の殴り合い寸前の口喧嘩も耐えられないし、途中でdisられる若葉竜也もたまらない。何だこの家族、最強で最高じゃねぇか。
タイトルやポスターからして勝手に恋愛映画を想像していたけど、本作は完全に家族愛を描いた映画。バラバラになった家族が、とある出来事を通して元通りになるという何ともシンプルな話だが、名優たちの力もあって全く普通じゃない。〈家族の映画〉と〈空気の読めない男〉が家族の絆を取り戻す。「人間はみんな演技をしている。だから、人間は全員役者だ。」これまで多くの映画を見てきて、こんな見方をした人間ドラマは無かった。嘘をついて生きてきた家族。死んでも会いたくないはずだった家族。だけど、やっぱり家族なんだ。ラスト際の一致団結するあのシーンは、何度見ようとも涙で溢れると思う。
鑑賞後は全力で走り出したくなるような映画。
今年の「ハケンアニメ」枠。仕事と家族、両方描くには尺が足りていなかったけど、あの作品同様、すごい熱量。これだよ、これ。日本映画のいいところが詰まっている。上映館はそれほど多くないけど、超オススメです。是非、家族とご一緒に。
余談
同日公開の「唄う六人の女」とポスターの構図が全く同じ。流行りかな?
冒頭本当に嫌な感じでした。書き忘れてましたが、マスク警察所属論破少年にも虫唾が走りました。でもこれが有ったから後半スカット、監督! 焦らしにも程があります。