PERFECT DAYSのレビュー・感想・評価
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いい映画です
間違いなくいい映画だと思います。ただ理系人にとっては最も苦手とするタイプの映画だと思いました。過去、私の知っている人が大抵そうだったので。私自身は前半理系マインドで後半文系マインドになっていたのではと思います。😸 精神、心、マインドという面で文理を超えた、何か未知のことを思いました。
平山さんの品格。
人の幸せなんて十人十色、平山の清貧生活はほぼルーティン通り。だけど毎日木漏れ日が違うように、彼の意思ではないところで、とんでもない事がおきたり、心がザワザワしたり、癒されたり、悔しかったり、日々変化している。それを彼は全部受けとめて、また穏やかに日常に戻っていく。どうして彼がこういう生活をしているかは、ラストまで観て想像するしかないけど、ラストシーンがなんて素敵なんだろう!!目頭が熱くなった!ヴェンダース監督のカメオ出演が嬉しい
画面ににじむ諦めに注目
この映画がある種の静謐さを感じさせるのは、その撮影手法に理由があるんですね。ヴェンダースはさすがに手練れで、カメラはもちろん美術も照明も編集も、あるべきものをあるべきところにきちんと置いている。脚本も演技も、主人公の生活をひとつに解釈してしまわずに、広がりをもたせるように作っている。主人公は生活の小さなことに喜びを見出しているかもしれないが、人に言えない暗い思いを抱えてもいる。その余白が、うまいのです。
だから、これを「底辺労働者が低賃金で満足するよう企業家が画策してるプロパガンダ」だとか自称映画評論家がネットで繰りかえしてるのは、自分のフシ穴ぶりを喧伝しているのと同じ。画面にしっかり刻まれている、主人公のあきらめ、後悔、押し隠された不満、それらをぜんぶ見落としているだけなのです。画面をきちんと見ていれば、「貧しい暮らしを美化」などまったくしていない。
べつにどんな感想を持ったって好きにしたらいいんだけど、少なくとも「金持ちが労働者を美しく描いている」とかのコメントは、「主役俳優がかつて自分を振った元カノ/元彼に似ているから気に食わない」みたいな感想と同じで、この映画とはぜんぜん関係ありません。
もちろん好き嫌いというものはあって、ロンドンやニューヨークでも、社会描写の踏み込みが足りないと文句を言う人はいます。だけど、東京は、映画のプロですらこの種のひがみっぽいコメントを言う人が多すぎますね。とくに「トイレが99%の公衆トイレとは違ってきれいすぎる」と言う人は、ハリポタ映画をみても「大半の現実の子供はこんなに美しくない」と怒るんでしょうか? たぶんそうじゃない。自分のビンボーな暮らしをあてこすられたと感じたから怒るのです。でももちろん、日本の経済が上向かないのも平均賃金が上がらないのも、この映画に責任はありません。
十数回登場する主人公の「夢」の映像なんか、うまく作られていますよね。それは単純な貧しさの賛美ではないし、静寂主義への逃避でもありません。もっとしたたかに周到につくられている。映画史に残る傑作だとも思わないけど、そういう巧みさはきちんと評価しなければ。少なくとも映画のプロを自称する人は、ちゃんと画面を正確に精密に見られるようになるべきなのです。そうでないと日本の映画批評は、英語圏の批評に永遠に追いつけないままです。
これも一つの幸せの形?
前半はほとんど記録映画。トイレ清掃員の主人公が「朝起きて身支度して仕事に出かけて清掃して帰ってきて銭湯行って居酒屋でチョイ飲みして寝床で本読んでから寝る」日々がひたすら繰り返される。本当にこのまま最後まで行くのかと思っていたら、後半になると色々関わる人間も増えます。ただ、主人公の境遇自体は変わらない。非常に淡々としていますね。
地味な生活を送る主人公を演じるのは役所広司。そのせいなのかどうなのか、劇中では三人の女性に好意を持たれている。まあ、一人は親戚(姪)だし他の二人からの好意も淡いものとして描写されているわけですが、初老の域に達していながら色気のある男性像を見るとクリント・イーストウッドのようです。してみると、役所広司は日本のイーストウッドなのか。役者としてはちょっとタイプが違う気もしますが。
それはともかく、映画としては台詞回しがぎこちないというか洗練されていないし、演技もところどころ棒読みっぽかったりして、いかにもエンタメでない芸術作品感はあります。ただまあ、これは一種の雰囲気映画だと思えばそこまで気にはならないかな。登場人物が皆、基本的にはおしゃれでもなく、かっこよくもないのは見る方にもわかることだし。
演技について補足するなら、主人公がセリフなしで肯定と否定を示すときに首をふるところはすごくいいと思いました。娘を連れ戻しに来た女性が別れ際に見せる表情とかもそうだし、セリフなしの場面のほうが伝わるものが多いとすら感じます。
主人公が休日に行くスナックのママが石川さゆりで、接客中、急に歌い出したのにはびっくりというか、妙なおかしみがありました。歌ったのは本職の演歌ではなく洋楽(歌詞は訳してある)だけど、それがまた面白い。
古本屋の店主が売れた本に一言コメントをしたり、フィルムを現像する店の店主とはお互い挨拶ともつかぬつぶやきでやりとりをしたり、慣れた者同士の飾らないコミュニケーションがいい。そんなものでもあれば、少なくとも社会的には完全な孤独ではないということでもあるし。
ちなみに、自分は似たような仕事をしていて、そこから興味を持って見に行ったわけですが、仕事そのものの描写は丁寧でリアルだと思います。強いて言うならゴミを拾う時は素手ではなく軍手でもつけたほうがとは思いましたが。
仕事がトイレ清掃であることに特別な意味はない気もします。あくまでも地味で社会的には上等でない仕事という意味でちょうどよかったのでしょう。その日常を描くことで人生とか幸せとは何か、と押し付けがましくない感じで問いかけているのだと思います。
今度は今度、今は今。
この人のことを、私はきっと知り得ない!
そう気づいた瞬間にもドゥバッと涙が溢れました。
繰り返させる毎日の中で、徐々に平山の世界が広がっていくのを感じられる2時間を、私はもっともっとずっと観ていたいと思いました。
彼を知りたいと思う気持ち、映画の醍醐味を堪能しました。
何もない。そんなものは無いのかもしれない
どうして嫌な目にあっても文句や愚痴が出てこないの?
私ならドロっとした時間でしかない、その同じ時間にしか見つけられない、今だけの心動く時間を見つけていた
そうだ彼は役割りを生かされていない
自ら選んで日々生きている
自分が嬉しい選択をしている
完璧な日常はいつも側にある
やるべきことに押し込まれ
ただ捕まえきれていないだけ
心が壊れる前に彼を思い出そう
こんな映画はじめてかも
ここ最近、何が起こるのかを楽しみにしながら映画を観ていたことにこの映画を観て気がつかされた。大体の映画は主人公が平凡な日常を過ごしているところから始まり、何かが起こったり誰かに出会ったりすることでその人生が大きく変わる。この映画ではそのようなことは起きない。それなのに、主人公の平山の人生は変わっていく。大陸移動のようなゆっくりとしたスピードかもしれないが、それでも変わらないものはない。考えてみれば人はどんどん歳をとるし、変わらない日常なんてものはないのに。あー毎日同じだとか、変化を求めてしまうとか、それもきっと悪いことではないけど、今周りにあるもの、周りにいる人のことにもう少しちゃんと向き合いたいなと思わされた。
家を見渡したらカセットテープを聞けるオーディオがあったので、眠っているカセットテープを引っ張り出してみようかな。
For your hard work!!!
バンクーバーの映画館は毎週火曜が安く、しかも今月だけ毎週火曜は全作品8ドルで観られる、スーパー感謝デー。
バンクーバーにはたくさん映画館があるのですが、ウチからちょっと離れた不便なところ一軒でしかこの作品が公開されておらず、私はシネプレックスの年会員なのでいつでも8ドルだし、毎月1本無料だし…ということで、とりあえず空いてそうな月曜の開店直後に行きました。
えー、最前列と端っこ以外、全部売れてる…。しかも、日本人はほとんどおらず、白人系かインド系ばかり…。トイレではかなり年配のマダムから「私は『生きる』が好きなの。『7人の侍』も観たわ〜」と声をかけられましたw
静かな冒頭から六畳一間のアパート?カセット?銭湯?え、昭和の話?と思ったら、スカイツリーはあるし、最新のオシャレトイレはあるし…、一瞬こんがらがりました。
ただ、カナダにもうすぐ2年近く住んでみて、改めて日本を誇らしく思えることがいっぱいありました。
公衆トイレまでウォシュレットがついてること、
外に自販機があること、
自転車を外に停めておけること、
裸で銭湯に入れること…
道っぱたをチャリでダラダラ蛇行運転できるのは、日本人が丁寧に舗装した平らな車道のお陰です。バンクーバーはアップダウンが激しいし、道は凸凹で、来たばかりの時はよくつまづいてましたw
というか、自転車なんてチェーンで繋いだってあっという間に盗まれるし、ヘルメットも必要なのでずっと乗ってません。チャリでどこまでも行けた日本が、とても恋しくなりました。特に治安が悪いってわけでもないんですけどね。日本が安全過ぎるんですw
果たしてこの作品が、カナダ人の琴線に触れたかどうかはわかりません。私もみなさんのレビューで引かれた補助線がいくつもあったし、日本文化にどれくらい親しみがあるかわからないし。ただ、エンドロールでの観客席からのパラパラという拍手の量に、言葉にならない平山の人生の深みが理解できたのかもと感じることができて嬉しかったです。
三浦友和も嘘でしょ?っていうくらいカッコいい。石川さゆりのママ役もキャスティングした人に感謝したし、「朝日の当たる家」の日本語バージョン、もっと聴きたかったなあ。石川さゆりの艶やかな歌声、カナダ人もウットリ聴いてました。
それにしても、役所広司は冴えないおじさん役なのに、ありえないほど色っぽいですね。失楽園の時から、大して年取ってない!www
湯船に浸かって顔半分隠してるのに、ほっぺにチューされてニヤケてるのを、目尻のシワで表現したのも素晴らしかったな。もちろん最後の笑い泣きシーンも。
That's how life ends, I suppose. 日本語のセリフは忘れちゃったけど、影踏み前のシーンで、とても印象的な英訳でした。
英訳と言えば、一杯飲み屋で最初に「お疲れさん」って言葉と一緒に焼酎が出てくる時の字幕が
For your hard work!
でした。「お疲れ様」って英訳できないけど言われたら気持ちが温かくなる日本語も恋しいなあとしみじみ思いました。この日本語、世界共通語にならないかな。「カローシ」なんかより、よっぽど使いどころあるのに。
帰りの電車で平山みたいに空を見上げたら、日本の空と繋がってるんだなぁと思って、またウルっとしてしまいました。いやー、誇らしい。どうりで日本人好かれるわけだ。
素朴な映画
この映画をドイツ人監督が撮ったとは…⁉︎ いや、だからこそ撮れたのかもしれない…
トイレ清掃員の男の日々の生活を淡々と映す。しかし其処には貧しさや過酷さは皆無で、むしろその男の精神的な豊かさに溢れた映画となっている。しかしこの男にも勿論過去がある。それは1階にある荷物を見れば分かるし、妹が訪ねて来て言った言葉でも分かる。彼女が言った「父に会ってあげて…」と「ほんとに…トイレの清掃員をやってるんだ…」の僅かな会話でも分かる。
しかし映画では決っして語らない。あくまで観る者に委ねるかたちをとっている。
そしてラストシーンへとつづくのだ。日々が続くように…。
ドイツ制作チームの描写の美しさ / 若干わかりづらかった日本的表現
特に印象に残った箇所
・ホームレスの人と目が合うところ
・昼食時に公園で居合わせた女性
・娘を銭湯につれてきた時に驚く常連さん
淀みなく進行する映画の中でこうしたサイドストーリー的な挿入の難しさはあったと思われるが気になってしまった、悪い意味で引っかかった箇所。
・元奥さんとの会話
・スナックを覗いたシーン
美しい表現だけではつまらないとか、人生にも淀みがあると、わざとこういうシーンをもたせたのだろうか?と考えてしまったが、作品全体にはあまりなじまないように感じた
役所さんじゃなくても
映画を得手不得手に分けるなら、私には不得手な映画でした。
★2としたいところを、役所さんへの敬意を加え2.5としました。
が、役所さん起用が前提だったそうですが、これ役所さんじゃなくもう少し
若い50前後の働き盛りの年齢層の俳優さんがテーマ的によかったのでは?
どう表現すればいいのか悩むところですが、すべてがちぐはぐなんです。
社会的底辺である清掃員にも家族、過去、人生がある、と言いたいのか?
重苦しい人生の過程が彼を底辺ともとれる清掃員にしたのか?
どんぞこ感を表現するためのスカイツリー近くの文化住宅。
にしては毎週フィルムを現像し購入する余裕あり。
寡黙に仕事をこなしているのにシフト増えるとすぐ怒る。
疲れただけでルーティーン崩す。
実はインテリでしたのための文庫本と洋楽。
私にとっての最大の違和感は、妹を抱きしめたこと。直後に泣いたこと。
家族の亀裂、甘くみすぎです。
ドキュメンタリーのような作り方をしている割には私にとってはリアリティーゼロな
映画でした。
飽きない124分間 平山の笑顔に癒される 92点
ずっと観ようか迷い、時間があったので観ることにしましたが観て良かった!
予想以上の期待を超えて集中して物語に入り込めた。何ひとつ無駄のないシーン。毎日が繰り返していく訳ではなく、新しい毎日が続いていく。
主人公が中々前半喋らず、「え?まだ喋らないんだ。いつ喋るんだろう」とそこが気になっちゃいましたね。主人公は別に人が嫌いかと言う訳ではなく単純に口数が少ないだけである。また感情がないかと思いきや、子供や嬉しいことがあればニッコリと微笑む。観てて癒される。ここまで安心して観られる映画は久々です。
主人公の生活も悪くないなぁと思いましたね!スマホなんてなくてもここまで楽しく生きられるし、自分が幸せならそれでええやん!って思いましたね。仕事も別に好きな仕事よりかはこれならやり続けられることの方が重要なんだなと感じました。
それにしてもトイレ掃除の手際が良すぎる…器用さがまたいいですね。観てて気持ちいい。
定期的に観たくなる♪
心地よくて平山さんという人間が好き。
穏やかな気持ちになれる。
仕事も頑張ろうと思える。
無口だけど、優しい目をした平山さん。
いつも笑み。
仕事は職人、仕事終わりの銭湯、行きつけのお店で一杯、眠る前の読書、最高ですね。
神社の境内でのお昼休憩に織り成す葉の撮影、カセットテープの音楽が良い雰囲気出してくれる。
休日は洗濯、掃除、カメラやさん、古本屋とお決まりのコース。これがシンプルでいい。
たまにスナックに行くという楽しみもある。
平山さんのルーティンはずっと観ていたい。
こころ優しく豊かになれます。
3回目も行くだろう。
変らないことなんてない。
何となくいいんですよねー
毎日が同じように思っても何かが違う。
変わらないことなんてない。
ほんの少しの変化を感じ取れたらそれでいい。
笑いたくなったり泣きたくなったり
日々過ごしていくと何かが起きる。
木漏れ日のように同じ形は二度とない。
役所広司は単調に見える演技を深く見せてくれました。
ラストシーンの役所広司の表情が素晴らしい。
さすがヴィム・ヴェンダース監督です。
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