PERFECT DAYSのレビュー・感想・評価
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こんなふうに生きていけたなら
というコピーで括られたヴィムベンダースの映画。仕事はトイレの清掃員だが、幸せに生きている。という内容の時点で気になっていた。内容は緻密に計算されたエンタメ映画の対局にある。平山はガラケーを使いカセットテープで音楽を聴いていてSpotifyは知らない。古本屋で100円で買った本を読んで、古いフィルムカメラで決まった場所で写真を撮り、安酒場で酒を飲む。他人には分からないレベルで自分の好きな事を深く味わっているのだ。情報が溢れ、忙しく大量の情報を摂取している現代人に向けて、自分の本当に好きな事を解像度を高く味わっていますか?と、聞かれた気がした。
淡々と綺麗にしてくれる人の存在があるから。
役所さんレベルになると、台詞はなくとも雄弁に伝わってくるものがあります。というか台詞が少ないことを感じることが無いというか。起きて仕事をして、食事をして寝て。仕事の日と休みの日のルーティン。家の中でのルーティン。日々、少しの人と関わり、小さな良いこと、小さな嫌なこと、嫌なことかと思ったらそうでもないことに変化したり。同じことの繰り返しのようで、同じではない毎日を感じます。日本のトイレは世界一綺麗とよく言われますが、いつも綺麗にしてくれる人のおかげで綺麗なのです。
きれいすぎる公衆トイレ
私は「映画は映画館で観るべきである」という持論があるが、本作を観て、やはり映画館で観るべきだと、再度確信した。それは大きく2つの理由がある。ひとつは大きな画面で観ないとホントの感動や迫力は得られない作品が多いって事。MCUの作品や007、トップガン、ワイルド・スピードシリーズなどは少々大きなサイズでもテレビ画面ではもったいない。
そしてふたつめは、自宅のテレビで観たのでは、なかなか映画館ほどは集中出来ないということ・・・である。
この「PERFECT DAYS」は2番目に相当する。普段から娯楽映画、エンタメ映画好きの私はこの手の文芸作品風な映画は苦手である。カンヌ映画祭で主演男優賞を獲得したと聞いていたので、予想通り、エンターテインメントな物語ではなく、正直、125分は淡々と過ぎた。たぶん自宅で録画を観ていたら、寝るか、途中で止めて、最後までは観なかっただろう。
この映画、世間の評価はすこぶる高い。観客もそこそこ入っていた。ただ残念ながら、私の心にはそんなに響く作品ではなかった。トイレの掃除夫さんの日常。本当の日常ではありえないような、きれいすぎる公衆トイレ(まあ、現実的な汚いトイレを見せられるよりはよかったのだが・・・)。「THE TOKYO TOILET プロジェクト」のための作品。小津安二郎のオマージュ満載だというが、その辺も私には響かなかった。評価は★3.5にします。
人々の人生が織りなす木漏れ日が沁みたー
特に面白味のないアート寄りの作品である
なのに!
鑑賞後、席を立てないほど心に溜まるものがある
トイレ清掃員の平山は、人生訳ありぽくて
世間と距離をとりながら、淡々と毎日を過ごしている
それでも、
他人の人生と、木に茂る木の葉のように
風がそよげば、重なったり、離れたりする…
平山の前に現れた姪っ子、迷惑をかけ通しなうえ突然仕事ををやめる後輩、平山の音楽の趣味に好感をもつ若い女、死期が迫る飲み屋のママの元ダンナ…
同じように日々を過ごそうとしても
突然、木漏れ日が差したり、葉が重なって影が
濃くなったりするように日常は変化してゆく…
人生、みんなこうだよね
単調に思える日々の中に、ささやかな楽しみや
予測できなかった出来事が混ざり合う
そうして、人々の人生が織りなす木漏れ日は
風にそよぐたび、こんなに美しいんだよと
この作品に教えられた
たびたび、差し込まれる木漏れ日の映像が
象徴的だった
役所広司の演技は、世界の称賛に値する
素晴らしかった
特に、ラストシーンの音楽に合わせて表情だけで
語るシーンは忘れられない
60年代〜70年代の音楽もとても効果的に挟み込まれていた
映像も芸術的
うーん、
やっぱり、カンヌやアカデミーで話題になるのもうなずける
幸せになれる・・・・いや、幸せを感じられる
とても哲学的で余白の多い作品という印象。
でも、押しつけがましくはない。
幸せ、人生、お金、人間関係、家族、友人、仕事等々、本当に自分が望んでいるもの・・・・・この映画を見終えて考えて、少しですが整理ができました。(流石に平山さんの域に到達することはできません)
朝目が覚めて、自宅の天井が見える。穏やかな朝。体がちゃんと動く。家族が元気でいてくれている。等々・・・・・・・・思い通りにいかないこと、ストレス大なり小なりありますよ。それでもしみじみと「幸せだ」と感じることが出来ます。特に2024/1/1能登半島地震の報道、それ以前に国外の戦争や紛争の報道を見聞きすると余計に。。。。。
それと、平山さんが何故幸せそうに見えるのかを考えたのですが、「平山さんはしっかりと自分自身で考えたうえで『この生活が良い』と結論を出して、自分の意思で自分の理想とする生活を過ごしている」からなのかなぁと。
ワンシーンでしたが、行きつけのスナックのママさんの歌声が痺れました♪全く想定外のキャスティングでした。
あまり70年代の洋楽がわからないのですが、この映画でカセットテープから流れる音楽が素敵で興味がわきました♪
静かで、劇的な展開はない、地味な映画だけど、凄い映画ですね。本を読むような映画だと感じました。
★2024年劇場鑑賞09★
シンプルで整った暮らしは美しい
渋谷区の公共トイレ清掃を担当する平山さんの日常を淡々と綴った、ただそれだけの作品。
けれど2時間、ちっとも退屈には感じなかった。
平山さんの毎日は、規則正しい。
毎朝、道を掃くホウキの音。
苗木たちに水をやり、いつもの自販機で甘い缶コーヒーを買って飲む。
音楽はいつも車に積んでいるカセットテープ。時々替える。
仕事場の公衆トイレで掃除をして、駆け込んで来る人が用を足す間、空を見上げる。
トイレ掃除というのは、見下され屈辱的な事も多いだろうと思うけれど、
煩わしい人間と対するよりも、シンプルに美しく整えていく作業は無心で美しい。
掃除というのは修行に近いものだと言われているからか、
平山さんの整った暮らしは、本当に修行僧のような印象。
雲の変化や木漏れ日に目を細め、100円の文庫本を吟味する。
昭和感漂う、シンプルで美しい暮らし。
(音楽が洋楽が多いというのがオシャレすぎるけど…)
平山さんは今の暮らしに十分安らぎを感じているように見える。
そして、人によって持っている世界はそれぞれ違うもの。
何を大切にして生きていくかは、自分で決めて良いんだよ、とニコに言っている気がした。
※余談ながら、平山さんが家を出る時、鍵をかけている描写がないぞ…
そう感じてすぐに思い出した。
古いタイプのドアによくあった。
ドアノブの真ん中のポッチを押して扉を閉めれば施錠完了なタイプですね。
嫌いではないが、やっぱり外国人監督。
起きて半畳
舞台は東京だけど、監督が外国人で、外国で賞を取ったという情報が先行して、外国人の眼で見てしまう。寝具を毎日たたむんだ!とか、共同浴場に知らない同士で入るんだ!とか。何ならかかる曲もほぼ洋楽だし。
主人公はアキ・カウリスマキの登場人物以上に無口だ。「サムライ」のアラン・ドロンに似た印象も受けた。あちらは殺し屋で、こちらは清掃員だが、仕事を終えてひとりの部屋に帰ってくると、あちらは小鳥の世話をし、こちらは鉢植えの世話をする。
淡々とした生活を描写するのは悪くはないが、随所に置かれた背景があまりにステレオタイプに思える。居酒屋の客や公園の女、舞踏家などなど。影踏みのくだりもわざとらしい。斬新なトイレを紹介するのはいいけど、一応劇映画なのだから。たびたび挿入されるモノクロのインサートは最後までよくわからなかった。このプロットで「PERFECT DAYS」のタイトルは、狙いすぎ。
端正な作品とは思うが、かと言って積極的に面白いとも言えなかった。
能の世界のような
いい映画だった。欧州で受けるのもわかる。
映像は美しい、東京の様々な表情をとらえている。時々、主人公の夢か脳内か、抽象的な映像が出る。
音楽は60年代等のものが流れて時代を感じる。
役者は豪華。主演の役所の笑顔が素晴らしい。表情の変化もある。その他、贅沢に実力派を配している。
トイレ掃除という地味な仕事、カセットやフィルムカメラ、銭湯という昔のもの、小さな植物、ちいさな日常を描く。誰にも、家族や悩みがあることも描かれる。読書の知性が人生のスパイスのよう。
そうだ、表現が能に通じるものがある。セリフも少なく、余分なものをそぎ落とし、観客のイマジネーションに委ねる。ただ、能のストーリーは劇的なものだが、この映画は小さな日常のストーリーだ。
若い時に観てもわからなかったかもしれないと思った。
自転車乗りとしては、自転車の飲酒運転はいただけないなあ、苦笑
何度も見返したくなる
説明過多な作品が多い中で必要最小限の情報提示で充分に想像できる演出が心地良い。平山というひとりの人間のドキュメンタリーのようでもあるしロードムービーのような趣きもある。
特に大きな何かが起こる訳でもない。でもずっと同じ日々が続くこともない。変わらなければいいのにと思っても変わっていく。その変化は些細なものであっても、光と影のようにゆらめきながら反射角を変えながら人生を照らす。木々のこもれびのように感情の機微がそこにはある。
どれだけ正確にルーティンをこなす日々を送っても、完璧な日なんてない。いろんな変化が訪れる。その陰影を噛み締めながら、泣いたり笑ったりしながら過ごしていく。むしろそんな起伏ある人生こそがパーフェクトデイ。
それにしても監督はよほど役所広司が好きなんだろうなぁ。愛が溢れている。それにしっかり応えている演技もさすが。
この先、何度も見返したくなる映画。
朴訥なトイレ清掃人を描いた木偏の映画
カセットテープを取り出すから『これはどれぐらい昔の話だろう?』と思っているところに、スカイツリーが楔(くさび)を打ち込んできて、『そうきましたか、それも想定内』と踏ん張っていましたが、激渋銭湯に古めかしい雨合羽と追い打ちは激しい。
しかし時代遅れの古い物に囲まれているからといって古風な人というわけではありません。朴訥な人です。そう「朴訥」という言葉がぴったりです。
そういえば朴という字は木偏。
調べてみますと(ChatGPTのコピペです)
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「朴訥(ぼくとつ)」の「朴」は、木の一種である「ボク」または「クス」を指します。この木は比較的地味で質素な印象があります。そのため、「朴訥」は、物事や性格が飾り気がなく、素朴で質素な様子を表現する言葉となっています。
朴訥な性格は、装飾がなく控えめで真摯な態度を指し、無駄な飾りがない、素朴で地道な性格を表す言葉として使われています。この言葉は、単に地味であるだけでなく、その素朴さや真摯さに美点を見出すという意味合いも含まれています。
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ですって。
平山さんの生活をみて、このように過ごしていたら日々なにが変わるだろうかと考えたら、部屋に並べているあの鉢の木の成長と、古本の冊数と写真の缶ぐらい。静止物の代名詞みたいものが逆に変化の焦点となっている妙が、いつしか思考の沼にはまっている自身を自覚させられて、『一日を生きた中身は、なにから作られて、なにに宿り、なにに刻まれるのでしょうか』と、途方もないところへと誘(いざな)われます。
便器を磨いていても、すなわち自身の日々を磨いているようで、「何をするか」ではなく「どう迎え入れるか」、自身の内側が大切なんだとルーチンなシーンごとに反芻しました。
幸田文の「木 (新潮文庫)」、読んでみようかなと図書館を当たりましたら、蔵書100万を超す図書館でも蔵書してませんでした。日の当たってないところに目をつけてくれました。さすがです。
そう見えるだけ。
孤独は自分には合わないかも
静かな日々
boring days
役所広司や三浦友和、柄本時生などが出ているので何とか観ていられた。
何回歯磨きするんだろう、何回缶コーヒー買うんだろう。
フィルムの現像にあんなにしょっちゅう支払うならデジカメやスマホが買える。
コスパもダイパも悪い暮らしが延々と繰り返されて。
朝日のあたる家など、時おりかかるカセットテープの曲だけが変化を呼び起こすような似たような毎日。
本人が満足しているので悪くは無いんだけど、いらちな関西人には倍速どころか3倍速でちょうどいい。
久しぶりに長く感じた映画だった。
日本の生活は丁寧に描けていて違和感はなかったが、姪っ子や妹の麻生祐未とハグするシーンは違和感を感じた。
日本人はあの状況でハグしないけどなあ。
姪っ子が海に行こうって言ったらいつかはいつか今日は今日、じゃなくて今すぐ海に行けよ!たった今だよ。
そういうパッションのある映画が観たいよ。
海で姪っ子と水の掛け合いするよ。それが人生じゃないの?なんて退屈なんだろうか。
俳優の演技の上手さだけが印象に残った。
同じトイレを扱うなら、黒木華と池松壮亮のせかいのおきくは、排泄物の汚いところもとことん描いた上で、人々の様々な感情が楽しめたなあと思いながら鑑賞していた。
あと、田中泯さん出すならもっと見せ場を。曲に合わせて踊らせてあげて!もったいない。
死にゆく他人さんの三浦友和にハイボールやピース奢って影踏みする暇があったら、もうボケてしまった父親の見舞いぐらい行け!
運転しながら泣き笑いしてる場合じゃねーぞ。父親死んじゃうぞ、過去に何があったか知らないが。
まあ、君の生き方、10点満点で言ったら1点ですかね。
上流側が何となく日本の下流はこんな感じかな?で作った感じ 全てが綺...
救われました
若い頃から、どんなに酷い状況でも孤独よりはマシだと思っていました。また、人間はただ生きるためには生きられず、どうしても付加価値を求めてしまうのだという一種の諦念を持っていました。
歳を取って孤独であることには賛否両論あると思いますが、この映画はそれだけに収まりません。朝、玄関を出て空を見上げる主人公の嬉しそうな表情がそんな議論を吹き飛ばしてくれます。
自分が今、生きていることへの感謝の気持ち、それを絶えず感じて一日一日を生きている主人公の様が、孤独の淋しさや強がり、どうしても付加価値を抱いてしまう悲しい素性を綺麗に掃除してくれます。
何故ならそれは、人間が己の想像力で獲得した他の誰のものでもない、己自身の叡智だからです。
歳をとり、こころも錆びつき、未来に恐怖しかなかった私の感覚もまた、きっちり掃除してもらいました。感謝しかないです。
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