PERFECT DAYSのレビュー・感想・評価
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優れた作品だとは思うけれど……
完成度の高い、優れた作品だと思います。
以前にも何かのレビューで書きましたが、主人公に明確な目的(たとえば、「逃げる」「捕まえる」「勝つ」など)がないストーリーを退屈させずに最後まで見せるのは、なかなか難しい。
本作もとくに何が起こるということもないお話。事前にだいたいの内容は知っていたので、寝不足で出かけたし、眠たくなるかなぁと少し心配していたのですが、そんなことはまったくなくて、きゅう~っと映画の中に引き込まれていった。「何なんだろう? この力は」と思いながら。
禅の修行や、茶の湯の作法のように、平山の動きには無駄がない。そんな彼の淡々とした生活をとおして、とても大切なことが表現されている。この作品には、人間という存在とその営みの本質がしっかりと描かれているのではないか。だからこそ退屈せずに最後まで緊張感を持って鑑賞できたのだろう。――そう思いました。
でも、その一方で「これがPERFECT DAYSか?」と、他者とのやりとりが極端に少ない平山の日常にどこか物足りなさや違和感をおぼえたし、それから作為的というか、少しわざとらしさのようなものを感じた場面もありました。そういったところに意識をフォーカスすると、この作品をどうも手放しで賞賛できなくなってくるのです。
そして、本作の背景を知ると、さらに見え方が変わってきた。脚本にたずさわった方のことです。日本を代表する大手企業 D社に属するエリートが、(柳井氏と組んで)トイレ清掃員の日常をネタに「いい話」をでっちあげたんじゃないかという気がしてきた。そんなふうに見ると、この映画のリアリティーが急に失われていくような感じがしたのです。あるいは、さっき書いたような「わざとらしさ」を感じたのは、そういったこの映画の成り立ちを無意識のうちに嗅ぎ取っていたからかもしれません。いや、ダメだな。いくらD社に(それから柳井氏の会社にも)いいイメージを持っていないとはいえ、こんな穿った見方をしたらいけませんね。ごめんなさい。
さて、……上記のほかに印象的だったのは、脇役の使い方が贅沢だということ。とくに女性の使い方がうまいなと感心しました。
著名な外国人監督が撮ったという先入観があるからか、東京の街もどことなく違って見えた。
平山の穏やかな日常。それに反するように時折挿入されるモノクロの不穏な描写は迫りくる老いや死のイメージか。そして「光」と「影」の対比もこころに残る。
市井の人々の、また、日々の繰り返しの中の「静かなすごみ」を巧みに描き出しているのは、小津の精神を受け継いだ成果なのでしょう。
「感じること」に長けた平山さん、ステキです。
というわけで、『PERFECT DAYS』。最初に書いたように優れた作品だとは思いますが、いささか引っかかるところもある、好きか嫌いかと問われれば、ちょっと考えてしまう映画です。
それにしても、東京にはユニークなトイレがたくさんあるんですねぇ(「THE TOKYO TOILET」の取り組みじたいに文句をつけるつもりはさらさらありません)😊
淡々とした日々の繰り返しが描かれますが・・なぜか飽きないし 退屈も...
淡々とした日々の繰り返しが描かれますが・・なぜか飽きないし 退屈もしない・・不思議な映画。
外国人の視点で描かれる日本は、時に????と感じることが多いが、この映画は、そういう違和感が全くない・・。小津安二郎を連想させるビム・ベンダースの深い「日本」理解が描き出されていると思う。
好んでいる音楽や、書籍・・規則正しい生活パターンから、只者ではない過去があるのでは・・・と役所広司演じるところの平山さんに対する興味を湧き立たせられる・・、生い立ちはこうだったのかな?、どんなことに傷つき挫折してきたのだろう?など・・。最後まで、平山さんの正体があかされる事はないが。
なんとなく、ぼんやりとした人物像が浮かび上がらせて・・映画は終わる。
喜びと悲しみは表裏・・嬉しい事が悲しい事を思い出させてしまうのか・・平山さんの最後の表情がとても印象に残る・・。
トイレ清掃でなくても、今の日本で表舞台には出てこないエッセンシャルワーカー、例えば「ノマドランド」の物流ワーカーなどが設定であっても面白かったと思う。
仕事に行く時には、腕時計をしないけど、休みの日には時計を身に付ける、平山さん。これは、どんな意味があるのかしらん・・。仕事は判で押したように過ごすから時計は必要ないが・・休みの日は、行動が流動的になるからなのかしらん? どういう意味を持たせたのかしらん? 気になる・・。
こういう風に、細かいことが気になってしまうがクセなのですが・・。
なんで、出かける時に 部屋のドアに鍵をかけないのだろう??当然、帰宅時にも鍵を開けない・・
キチンとした性格の平山さんは鍵をかけると思うのだけど・・。見た目の演出の問題?
でも、姪が尋ねてきた時には、鍵を開けて部屋に入るし・・。
役所広司がカンヌでの男優賞受賞も肯ける、役所広司は偉大な俳優だなぁ。
再発見
2023年カンヌ映画祭主演男優賞、役所広司。
へえー、すごい。監督は黒沢清? え、ヴィム・ヴェンダースなの? どんな作品? 東京のトイレ清掃員? なにそれ。
おかしくないか?このパッケージ。ヴェンダースがそんな映画を撮るか、普通? 役所広司を起用するのも意外だし、ヴェンダースがトイレ清掃員の映画って、想像の埒外だし。
永瀬正敏に庭師をやらせる、ならすごいよくわかる。
まあ、なにはともあれ、役所広司が主演男優賞なのは祝福すべきことだ。ヴェンダースだし、観に行かない理由はない。
ヴィム・ヴェンダースを再発見した。
サウンドトラックがすごい。
溝口健二を想起させる。
この作品が企画された経緯がどうあれ、その資金がどこから出たものであれ、だ。
優れた作家が、優れたスタッフと、優れた役者で、しかるべき場所でしかるべく撮られると、僥倖となる。
平山は、そうなっていたかもしれないオレだ、と思い入れる中年男性のひとりです。
完璧な一日はきっとどこまでも小さな光が見えるそんな日
この前予約した日を勘違いしてしまって行けなかったので今日は間違えずに行ってきましたw
ヴィム・ヴェンダース作品をロードショー期間中に映画館で見るのは初。
前評判なども気にしつつ映画館に入る。
ドキドキしながら映画が始まる。
冒頭数分でなんだかわからない気持ちになり泣き出してしまった。
この気分は一体なんなんでしょう?
主人公が住んでいる場所が家の近所という事もあったかもしれないです。
そういった親近感にホロッときたのかもしれません。
でもそれだけじゃない。音楽が好きな音楽だったということもあるかもしれない。それもあるでしょう。けれど、本当にそれだけじゃない。あそこにいる役所広司さんのいる部屋。あれはうちの部屋なんじゃないかと錯覚させるような。あの車に乗った自分が本当は自分なんじゃないかと思ってしまうような錯覚を与えるようなそんな寡黙な主人公に寄ったカメラワーク。映画全体を決めるその景色の佇まい。
本当に完璧でした。
オープニングだけでご飯が100杯くらい食べられそうです。
この映画はストーリーとしては何もない映画です。
ネタバレということもないでしょう。
おじいさんがトイレの清掃を毎日やっているというだけの映画です。
ただ、主人公のおじいちゃんの所作をずっと丁寧に見るだけの映画です。
そのためにこの映画は存在していると言っていい。
そんなやついるかよ。って思うかもしれないけれど、世の中にはいるんだよ。
ちゃんとこういうおじいちゃんいるんだよ。
そんなことを思いました。
この映画で色んな人が色んなことを考えるでしょう。
本当にいい映画です。ありがとうございました。
ストーリー 6 演技 8 芸術 6 エンタ 6.5 総合 7.5 ...
ストーリー 6
演技 8
芸術 6
エンタ 6.5
総合 7.5
この歳になってこんな映画もいいなと思うようになりました。キャストがいいですね〜いい演技。田中泯だけ分からない。
なんで、いつまでも同じようにいかないのかね?
この、飲み屋の女将さんの一言が、
この映画を表してます。
何でもない日々は無限ではなく、
ルーティンてとても大切なのに、
他人には理解されない。
しかし、東京のトイレ、
オシャレすぎるだろ😎
清掃員の日常
清掃員の日常を延々と見せられる謎映画。
こういう作品の面白さが分かればもっと映画が楽しくなるんやろな。
正直さっぱり面白くなかった。
面白さを求めてはいけない部類なのだろうか。
芸術性を感じなければならないのか。
ただ日本人が海外の賞に選ばれることは誇らしいことですね。
まじで何がおもろいのかさっぱり分からん。
知足按分
無辜の民が淡々とした日常を積み重ねる日々の中にこそ価値があることを示した作品。
役所広司の演じる主役と同様に、作品自体もバックグラウンドを説明的に語ることはない。
そのことにより鑑賞する私たちにさまざまな物語を想起させる。自らの人生、事情を投影する鏡のような作品。
そこには承認欲求や他者批判による自己肯定の欺瞞もない。
素晴らしい映画である。
初めて映画で2回目行きました!
役所さんの表情が、たまんない!なんか、この映画の世界観に引き込まれる!内容は?なとこあるけど、こう言う映画は初めて!自分的にはPERFECT DAYSショックです!ストロングスタイル一番😊
神は細部に宿る、という生き方
私たちにとって「完璧な日」とは?職場で昇進する、恋が成就する、欲しかった物が手に入る…それは大抵、何か特別なことが起こった単体の「一日」として想像されるだろう。しかしこの映画のタイトルは違う。PERFECT DAYS、それは複数形の「完璧な日々」を意味している。
トイレ清掃員の平山の生活は、一見単調でつまらない。毎日同じ場所で同じ業務をひとり繰り返し、低給独身ゆえの慎ましい生活を送るだけ。そんな彼に憐れみの目を向ける人も少なくない。
しかし、彼の目を通した世界は変化と刺激に溢れている。車で流すレコード、公園の四季模様、街中の人間模様、毎晩のお供の小説、そうした些細なことに彼は心を注いでいるから。映画の最後、「木漏れ日」という日本語特有の表現が紹介される。太陽から木の葉を通して地面に映し出される光と影は、絶え間ないダンスを続け、二度と同じ文様を見せることはない。世界とは、実はそれほどまでに贅沢で底知れないものだ。しかし、私たちはいつしかそれから目を背け、数字とスクリーンを凝視するだけになってしまっていたのではないか。
作中では様々なヒューマンドラマが差し挟まるものの、どれも曖昧に流されていく。起承転結もなければ、伏線と思われたものが回収されることもない。しかし、実際人生で遭遇する物事なんて大抵はよく分からないまま過ぎ去っていくものだ。そんなところも含めて、革新的なほどに「平凡」を極めた内容の映画だった。
役所広司が可愛い
びっくりするくらい可愛い。
単調に見える。
しかし、事件は毎日のように起こっている。
私の日常も、きっとそう。
おじさんの日々を綴って、2時間画面に釘付けにさせるのだから、この映画に力が無いとはまるきり思わない。
「すばらしき世界」へのアンチテーゼ
個人評価:4.2
光への感謝の眼差し。
この世界に生きている事の美しさ。光と影の対比の比喩が哲学的でもあり、この単調で美しい物語に身を浸し漂う事が出来る。
毎日登る太陽に世界の美しさ、幸せが込められており、役所広司の過去作で主演した「すばらしき世界」のアンチテーゼにも思えて、なんだか嬉しい気持ちになった。
彼の人生が満たされたか否か。答えはイエスだ。
一人の生き方を追体験できる作品
Filmarksでは4.2でつけました。
人の人生に触れた時、その深みを実感できます。
そして自分の人生を見つめ直すきっかけになります。
生きている日々で小さな出来事が起こり、些細な触れ合いがあり、日常に確かな充実感が得られることを思い出しました。
次々に映画や遊びや物を取り入れて刺激を入れていることも好きですが、充実感はそれだけではなく、もっと身近にたくさんありますね。
現代版の晴耕雨読的生き方
とにかく変化の無い毎日、毎週決まったルーチンを繰り返し主人公。その生活中でも小さなさざなみのような出来事が主人公を揺さぶる。
木漏れ日の様に風景的には大きな変化は無いが、ディテルとしては決して同じ景色は存在しない。
主人公は世捨ての人のような生活を送っているが、地味だが喜怒哀楽の感情までは捨てていないのが微笑ましかった。
役所広司は演技なのか、素なのか判別出来ないほどの名演技でした。
ゴマンと転がる知り得ぬ物語へ
一番のドラマであろう主人公の背景に何があり、
今ここに至っているのか、が描かれることなく物語は進む。
主人公の過去を切り離すことと、
訪れる毎朝と、その度にリセットされたように繰り返される日々は、
過去も未来も関係ない「今ここ」の大切さ、尊さを印象付けているように感じられてならなかった。
むしろそうして収斂することで、ある意味閉じることで、
研ぎ澄まされる感覚の豊かさと、だからこそ「豊かさが完璧な日々」に思い馳せる。
ゆえに主人公に訪れる些細だろうと見逃せない様々な出来事はなんとも美しい。
それは言葉を交わさぬ人との間で起ころうと、
毎日、顔を合わせる間柄で起ころうと、
突然、初めて向き合うことになったとしても。
こんな感覚野のレンズから世界をのぞけるのは、子供の頃だけ?
(知性がたりないから同じにはならないけれど)
対峙したときの主人公のありようを見て、想像せずにおれない過去はなお深く重みを増し、
しかし何ら具体的に解き明かされることがないなら、
何もわからないままおわってゆくんだなぁ、と呟いたクライマックスの三浦さんの台詞がひどく染みた。
そのとおり、描かれることのない主人公の過去のように、日の目を見る事のないトイレ掃除のように、主人公の毎日に彩りを与えるささやかな出来事も、
同時多発と世の中でゴマンと起きているに違いないが、そのほとんどは知らぬ間に、知られぬままに過ぎ去って行く物事だ。そして自身もまた他者から見ればその一つに過ぎない。
けれど、だから、今ここにしかない、わたしだけの日々を生きることができる。
寂しくもだからこそ力強い、強さの向こうから沸き起こる、見えざる希望にじわじわやられた1本だった。
劇中歌がまたよい!
歌詞は絶対に物語と連動していると思えたので、和訳の字幕があった方がよかったのでは。などと振り返りもする。
あと、ところどころ大笑いしてしまったのだが、わたしだけか?
たとえばラスト、川べりでどちらもむせまくるくだり、とか。
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