PERFECT DAYSのレビュー・感想・評価
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ただひたすら生きる
この映画は東京の公衆トイレ清掃員の日常が描かれている。けしてドラマチックな展開ではない。よくある大都会の安アパートの一室で夜明けと共に起き、顔を洗い、植木鉢の木に水をやり、アパートの前の自販機で缶コーヒーを買う。いつもの道を走りながら昔、流行した曲をカセットテープで聴く。いつもと同じ公衆トイレを巡回清掃し、昼食時間にいつもの神社の境内の木漏れ日を撮影する。また巡回清掃をし仕事終了。3時頃に銭湯に行き、安飲屋で一杯引っ掛け、帰りにフイルムカメラの現像に行ったり、中古専門本屋で小説を買い、寝るまで部屋で読書。そして寝る。次の日、いつもの時間に起き、昨日と同じ事が繰り返される毎日。実に平凡だ。考えてみれば私たちの人生の98%は平凡な毎日のルーチィンで成り立っているのではないだろうか。今独居老人が社会問題になっている。しかし主人公は平凡な日常の中で植木鉢の細い木の葉がゆっくり成長して行くのようにそうした小さなの変化に喜びを感じ、ただ毎日をひたすら生きる生活に幸せを感じている。監督はこの映画を通してこの事が言いたかったのではあるまいか。
繋がらない世界の片隅で…
歌 本 樹木 家族…
繋がらない世界で、ヒトは何故、それぞれに惹かれるのかしら。
繋がらない世界で、揺らめく影。
影は重なることで、世界はどうなる?。
何も変わらない?。
変わらなくて、いいの?。
気づかないだけで、変わっているの?。
私達の生き様なんて、木漏れ日みたいなもの。一瞬で、移ろいゆく。形に遺そうとしても、ただ、逆光するだけ。
それでも、陽は昇る。
だとしたら…。
喜びも哀しみも、総て陽光と共に…。
皆様にとって、パーフェクトな日々が訪れますように…。
公衆トイレ清掃員の日々の物語。 渋谷界隈の公衆トイレの独特な外観、...
公衆トイレ清掃員の日々の物語。
渋谷界隈の公衆トイレの独特な外観、
住まいは下町(おそらく墨田)で気取らぬ日常。
京島の銭湯、浅草の地下街で一杯、など。
ヴェンダース監督、ドイツ人ですが、目の付け所に驚きです。
主演の役所さんの演技、言葉を極限まで削ぎ落とし、日々の抑揚を表情と所作で見せる、じわじわ凄い見ごたえでした。
日本語の "木漏れ日" に着目する西洋人さん、ここ数年で増えていますね。
木の葉の揺らぎに心を留め、新たに芽吹いた木の若葉に目を細める。そんな一人の労働者の日常生活を、暖かく優しい眼差しで切り取り描き出した作品です。
トイレ清掃員が主人公のお話ということは知っていたので
着想・話題性だけが一人歩きしている作品なのでは? と
観るのを躊躇っていた作品です。(バリバリの先入観 ・_・;)
# 主演が役所広司。 うーん。どうしよう。
# 監督は? ビム・ベンダース…って え 日本人じゃないの?
# ドイツ人? が撮った日本トイレ清掃物語って どんな内容?
# これは観なきゃダメだよね。 @∀@;
…との脳内会議の結果、俄然観る気になって鑑賞しました。
◇ストーリー(もしくは「ある日の平山さん」・∇・)
主人公の平山は、トイレ清掃員。年齢不詳(50代~60代?)
渋谷区内の公衆トイレを、車で巡回して清掃している。
もちろんボランティアではない。仕事だ。
ユニフォームの背中には「 TOKYO TOILET 」の文字。
東京都からの委託なのだろう。(…多分)
一箇所のトイレを一人で綺麗にするのかと思えば、そうとも
限らないようだ。ある場所ではスクーターでタカシが合流する。
タカシは若い。彼女が欲しくてたまらないお年頃だ。
まじめに清掃の仕事をしている と思っていたのだが…あ~あ
貸したお金は返してもらったのやら。 はて?
平山は公園(寺の境内か?)のベンチで昼食をとる。
木の葉の間から光が漏れてくるのを眺め、カメラで撮影したり
しながら、サンドイッチを食べるのだ。
時折、隣のベンチのOLと目が合ってしまう。…どうする?
いやいや。 どうもしない。目が合っただけのこと。
木の根元に若葉を見つけた。 新しい命の発見だ。よしよし。
そっと周囲の土ごと掘り返し、折り紙細工の皿に収める。
持ち帰って、水を毎日あげよう。部屋には仲間がいっぱいだ。
寂しいことなど無いからね。
※育った苗木(?)はどこかに植えるのだろうか? はて
さあ 一日の仕事も無事に終わった。家に帰ろう。
スカイツリーの麓近くのアパートが住処だ。
二階もある。メゾネットという奴だ。古いけど広い。
他の住人は見かけないが、誰かいるのだろうか。
さあ着替えたら、自転車に乗って銭湯だ。
一日の汚れを落とし、疲れを癒すにはお風呂が一番。
銭湯の広い湯船に浸かるのは最高に気持ちが良い。¥_¥
他に客は2~3人。少ないが、経営は大丈夫か?
まあ、それは余計なこと。
営業開始すぐ後の時間だから空いているのだろう。きっと。
風呂の後は夕食だ。浅草の地下鉄駅に連なる飲食店。
いつもの場所に座る。すると
店主が ” お疲れさま ” と声をかけてくる。そして
何も言わずとも出てくる、いつものお酒と食事。うん
疲れを癒したあとの食事と一杯の酒。最高だ。
#今日も良い一日だった。
#明日も元気に頑張れそうだ。
家に帰り、寝床で文庫本を読みながらそう考える。
やがて心地よい眠りへと落ちていく。
平山の一日が、今日も無事に終わる。
◇
とまあ、平山の日常の生活ぶりが淡々と描かれていきます。
後半、平山の姪がアパートにやってきたりとか(家出)
タカシが突然「仕事辞めます」電話を入れてきて、二人分
働くハメになったりとか。
穏やかな水面に、ゆらぎ程度のさざ波が立ちますが
平山の生活は、基本変わらずに続いていきます。
変わらない、そして変化の少ない暮らし。
その中にこそ、穏やかで平和な日常がある。
それが実は、幸せなこと。
そう思わせる作品です。
エンターテイメント作品ではないですが、共感できる部分を多く
感じることのできる作品でした。
見て良かった。
満足です。
#外国人監督ならではの撮影場面やカットかな? と思える
#箇所も多く、派手なシーンは無いのに飽きませんでした。
#スカイツリーの映り込むシーンが多かったのが印象的。
◇あれこれ
◆平山さんの趣味
アナログ製品の愛好家と思われます。
自宅でも車の中でも、音源はカセットテープ。
そしてカメラはフィルムカメラです。
デジカメと違い、撮影枚数が極端に少なく、写真屋に現像に出さ
ないと、どんな写真が撮れたのかもその場では分かりません。
すぐに見られないからこそ、写真を受け取りに行きプリントされた
写真を見るまでのドキドキ感がたまりません。・-・
※アナログ写真の方が、フィルム代・現像代・プリント代と
デジタル写真よりずっとお金がかかります。
これは、平山さんのこだわりの趣味なのでしょう。・_・
■平山さん、それはダメでは? … @_@
と、気になった場面が実はありまして…。
トイレの個室の扉を開けたら男の子が隠れていた というシーン。
近くに保護者も見当たらないので、置いていくワケにも と
その子を伴ってその場から移動しようとする平山さん。 …あっ
#ゴミ拾いをしていた手で、子供の手を握ったらダメでしょ
と思ったのでした。
平山さん、何故かトイレのゴミを拾う時にはノー手袋なのです。
※便器拭きはゴム手袋を着用していたので、これはセーフ ・∀・
■平山さん対戦す
トイレの壁の隙間に挟んであったメモ用紙。
最初ゴミかとと捨てようとしますが、中を見て手が止まります。
そして何かを書いて、メモを元の場所に戻すのです。
次にこのトイレに来た際にも、同じ場所にメモはありました。
取り出して中を除き、嬉しそうな平山さん。
また何かを書いてメモを元の場所に。
後の方で、メモの中が明らかになります。
紙に書いたマス目に○印をつけていく対人ゲーム(…多分)
一日に一手ずつしか進まない、超スロー対戦です。
こういう時間の使い方ができる平山さん
こういう遊びを楽しみにできる平山さん
とてもいいなぁ そう思います。しみじみ。
◇最後に
” 平山 ”という名前について、もしかして
「富士山」に対して「平山」なのかな?
などと考えてしまいました。…・_・
「日本一の山」に対して、普通の「平らな山」の主人公。
この主人公は、ごく普通の平凡な日本人なだよ と
カントクが匂わせたかったのかなぁ。 …などと。
深読みしすぎかもしれませんが…。
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。
こわいくらいに評価が高いな。。 自分はこんな生き方できないと思った...
こわいくらいに評価が高いな。。
自分はこんな生き方できないと思った。
どう見られてるか気にするし、人と繋がってたいし1人で死にたくないし、トイレ掃除もしたくない。
街のトイレはあんなにきれいじゃない。
生きる事も同じで、あんなにきれいじゃない。
強すぎる主人公
私はあの人生じゃあ満足できない
せっかく生きるんだから。
あったかいお家と可愛い犬!たまにお洒落して出掛けたい!
そのくらい望んでもいいでしょ?
生きる事は大変なんだから。
見終わると日常が輝いて見える
非常に静かな作品でした。
この作品を見終わった後、映画館から出てまっすぐ車が停めてある駐車場に戻ろうとはせず、天気も良かったので、15分ほど散歩した。不思議と映画を見る前よりも日常が輝いて見えた。楽しい散歩ができた。
最初、役所広司の演技が日常を描いているにもかかわらず、やや緊張感があったため、演技のプランがこれで合っているのかと不安になったが、見終わった後はこの演技で正解だと感じた。
主人公のあまり多くを語らないが、社会に流されることなく、自分の軸と好きなものを大切にして生きていく姿を見て励まされた気がした。
職場が普段注目されない公共のトイレということもあり、東京を別の切り口で見ることができ面白かった。そして都会の中の生活を描いているものの、自然を移すシーンも多く、見ていて癒された。
昨今のエンターテイメント作品に溢れている、この作品面白いでしょう?といった観客に対しての押し付け感がなく、どう解釈し、どう受け取ってもらっても大丈夫。という作品のスタンスが心地よく感じた。
何か起きそうで起きなかったり、回収されそうな伏線が回収されなかったり、意味ありそうなことがなかったり、また出てくると思ったら出てこなかったり、私たちが普段日常の中でよく起きる出来事が作品の中にちりばめられており、共感できた。
この映画の主人公のように、人の目を過度に気にしようとせずに、自分が好きだと思える環境を作り、生きていけたら幸せになれるかもしれないと感じた。
静かで起承転結がなく、伏線も全て回収されるわけではなかったが、見終わった後の充実感があり、心豊かになる作品でした。
役所さんの演技につきる!
ほとんどセリフ無しで自然に顔で演技する役所さんに脱帽。毎日のほとんど同じルーティンの中での充実感を見事に演じてる。難解なヴェンダーズ監督作品の中でも意外と分かりやすく面白くずっと見守っていたくなった。
今もルーリードのパーフェクトデイ聴きながら毎日の幸せを噛みしめてます。
ひと時
ヴェンダースの目に映る世界は、こんなにも美しく、こんなにも儚い。木漏れ日も鳥のさえずりも街の音も、平山も私もあなたも永遠ではいられない。しかし、ひとりひとりに訪れるこのひと時、この一瞬こそが私たちが生きている全てなんですよね。そしてこのひと時は、誰かに批評されるものでもなく、誰かに支配されるものでもなく、誰かに捧げるものでもなく、私だけのものなのです。私だけに訪れるささやかな愛しい時間をとても詩的に表現していました。
ブラックミュージック〜ロック〜演歌、、、愛しい音楽、愛しい古本屋、愛しいカメラ、愛しい銭湯、愛しい飲み屋さん。私が生まれ育った昭和の板橋の風景を思いだしてしまいました。キャラクターを体現した役者さんも、ベンチや電車の隣同士になったことがありそうと思ったほど、東京の街の一部となっていました。
「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」に心を奪われた20代。「パリ・テキサス」のトラヴィスをやっと理解できた40代。
50代を前にして本作と巡り会うことができて本当に良かったです。映画との出会いは一瞬だと思うし、本作との出会いも2024年の「今」なんだと思いました。
ここ最近のヴェンダース作品はイマイチと感じていましたが、あの少年の様に瑞々しいヴェンダースに完全復活しましたよね。そしてヴェンダースの名作は間違いなく「場所」を主役にしています。東京の平山もベルリンの天使もキューバの音楽家も「その場所」だからこそ輝けるのですね。
本作を鑑賞してヴェンダースが撮る作品をこれからももっともっと観たいと思いました。そんな作品です。
特になにも起こらない
正直な話、私にはあまり刺さらなかった‥😢
もともと邦画好きで、役所さんの大ファンな私にとっては受賞関係なしに見ると決めていただけにちょっと残念。
日常を切り取ったような映画は好きなんですけどね。。
受賞作品って難しいですね😓
退屈だけど、美しい。
無声映画かな?と思うほど台詞が少なく役所広司演じる平山はとても無口で、淡々と日常が繰り返されていきます。
観る人をかなり選ぶ作品。
退屈に感じてしまっても無理もありません。
でも、その退屈で変わらない日常の中に、平山が時折見せる感情にとてつもなく心が揺さぶられます。言葉、表情、涙。
この作品を私には言語化するのは難しすぎるけど、鑑賞し終わって3時間、何故かずっと目が潤んでしまう。余韻が凄い。
最後の平山の微笑み、涙、グッときますよ。一緒に泣いた。
役所広司さんの演技力、いやはや流石ですね。。。
東京のTOILETは凄い
色々な東京の公衆トイレを見ることができて面白かった。この映画を見たらトイレ清掃員の方々への感謝の気持ちがさらにアップした。
それにしてもキャスティングが絶妙で、どの俳優もちょこっとの登場だが納得の配役だった。
主役役所広司の可愛らしい表情が良かった。
石川さゆりは話し声も綺麗で良かった。
しかし、日々の繰り返しが長々と続き途中で眠くなった。以前観た役所広司の映画にも似ていたが、今ひとつ何が言いたいかわからなかった。
色々良かったが最終的には退屈な日常という印象が残り残念だ。
人生を戦う兵士の話
ノワール
経験を武器に市街地のインフラのトイレを守っている
一見穏やかに見える戦場にも歴史があり、戦況は刻一刻と変わっていく
景色は立派になっていっているようだが
皆が皆消耗し、状況を必死に維持しようとしている
最前線のトイレこそこの男の戦場
歌と共に移動する
泣いてでも生きている強い兵士
こんなふうに生きていけたなら
というコピーで括られたヴィムベンダースの映画。仕事はトイレの清掃員だが、幸せに生きている。という内容の時点で気になっていた。内容は緻密に計算されたエンタメ映画の対局にある。平山はガラケーを使いカセットテープで音楽を聴いていてSpotifyは知らない。古本屋で100円で買った本を読んで、古いフィルムカメラで決まった場所で写真を撮り、安酒場で酒を飲む。他人には分からないレベルで自分の好きな事を深く味わっているのだ。情報が溢れ、忙しく大量の情報を摂取している現代人に向けて、自分の本当に好きな事を解像度を高く味わっていますか?と、聞かれた気がした。
淡々と綺麗にしてくれる人の存在があるから。
役所さんレベルになると、台詞はなくとも雄弁に伝わってくるものがあります。というか台詞が少ないことを感じることが無いというか。起きて仕事をして、食事をして寝て。仕事の日と休みの日のルーティン。家の中でのルーティン。日々、少しの人と関わり、小さな良いこと、小さな嫌なこと、嫌なことかと思ったらそうでもないことに変化したり。同じことの繰り返しのようで、同じではない毎日を感じます。日本のトイレは世界一綺麗とよく言われますが、いつも綺麗にしてくれる人のおかげで綺麗なのです。
一人でも映画を観に行きたいと思うことはほとんどないが、この映画に...
一人でも映画を観に行きたいと思うことはほとんどないが、この映画には呼ばれた。まあ、刺さること刺さること。が、この映画の身もふたもない要約をするとなれば、「役所広司がひたすら便所掃除する話」となる。役所扮する「平山さん」の生活は実に単調だ。近所のばばあの掃き掃除の音で目を覚まし、歯を磨き、オンボロ自動販売機でBOSS買って車に乗り込んで出勤する。最近のアニメやゲームに慣れた身からは「あれ、これタイムリープもの?」と訝しむくらい、「ループ感」は強調されている。平山さんの住まいもたいそう古く、昭和が舞台の話だっけと一瞬思うが、通勤経路で毎朝目にするスカイツリーの存在で、現在のストーリーだとようやく確信できるという有様だ。しかしもう、この通勤経路の描写だけでなんか涙が出そうになるんだよな。昭和の面影濃厚な下町から、アーバンな美的センスが張り巡らされる首都高まで、人の暮らしの生々しい香りにむせかえるし、自分のあれこれの記憶も刺激されまくる。
あまりにシンプルな生活に、「この人はこれを体が動かなくなるまで本気で続けるつもりなのだろうか」と心配になるが、自分の暮らしとその違いはいかばかりなのかという疑いも徐々に浮上してきた。組織の中で「やらされ感」のある毎日を送っていると、平山さんの生活はある意味ひじょうに美しく映る。トイレの清掃に実直に取り組む平山さんを、仕事のパートナーであるクズ男・タカシは「どうせ汚れるんですよ」と揶揄する(柄本時生の演じる「足りないけど憎めないクズ」は素晴らしい)。
しかしながら平山さんは幸せそうだ。節目節目でハンドルを握る平山さんの顔面が大写しになるが、私はほぼそこに多幸感を読み取った。彼は間違いなくperfect daysを過ごしている。平山さんは決して変化のなさに安住しているわけではない。むしろ彼は、「全く同じ日が巡ってくるはずはない」という意味のことを作中で何度も口にしており、「ループ」を拒絶している。平山さんの暮らしぶりには富の蓄積の兆しは全く見えない。なのになぜ、この男はこんなに美しく微笑めるのか。
一つにそれは、こんな平山さんでも「与える」ことができていることだろう。クズ男・タカシに女と遊ぶ金を貸してやる。家出してきた姪っ子に豊かな時間といちご牛乳と本を提供してやる。交わることのない異世界に住まう妹を抱きすくめる。末期がんの男に、缶のハイボールを分け、影踏みを提案してやる。決して「持てる者」でないのに、なんと確かな恵みを与えていることか。
もう一つは、彼が音楽を愛し、読書に耽る人間だからなのだろう。彼が車のカセットデッキで聴く音楽も、寝る前に開く本も、トイレ清掃員という仕事の割に異様なハイセンスが覗く。部屋の本棚・カセット棚のラインナップは、それぞれの筋の人が見れば「ほほう」と唸るものだろう。突然変異的なインテリ労働者というのは現実世界にもそれなりに観測されるものだが、こんな平山さんの属性の所以は、ストーリー後半でほんのり説明される。
「人生を豊かにするのは金ではないですよ」とストレートにいってしまえば実につまらないところ、こうして具体的な人間の姿を通してメッセージできることが映像(:広義の文学)の強みということなのでしょう。
あと石川さゆりと田中泯の使い方がずるい。アヤちゃんもニコちゃんも可愛い。
きれいすぎる公衆トイレ
私は「映画は映画館で観るべきである」という持論があるが、本作を観て、やはり映画館で観るべきだと、再度確信した。それは大きく2つの理由がある。ひとつは大きな画面で観ないとホントの感動や迫力は得られない作品が多いって事。MCUの作品や007、トップガン、ワイルド・スピードシリーズなどは少々大きなサイズでもテレビ画面ではもったいない。
そしてふたつめは、自宅のテレビで観たのでは、なかなか映画館ほどは集中出来ないということ・・・である。
この「PERFECT DAYS」は2番目に相当する。普段から娯楽映画、エンタメ映画好きの私はこの手の文芸作品風な映画は苦手である。カンヌ映画祭で主演男優賞を獲得したと聞いていたので、予想通り、エンターテインメントな物語ではなく、正直、125分は淡々と過ぎた。たぶん自宅で録画を観ていたら、寝るか、途中で止めて、最後までは観なかっただろう。
この映画、世間の評価はすこぶる高い。観客もそこそこ入っていた。ただ残念ながら、私の心にはそんなに響く作品ではなかった。トイレの掃除夫さんの日常。本当の日常ではありえないような、きれいすぎる公衆トイレ(まあ、現実的な汚いトイレを見せられるよりはよかったのだが・・・)。「THE TOKYO TOILET プロジェクト」のための作品。小津安二郎のオマージュ満載だというが、その辺も私には響かなかった。評価は★3.5にします。
人々の人生が織りなす木漏れ日が沁みたー
特に面白味のないアート寄りの作品である
なのに!
鑑賞後、席を立てないほど心に溜まるものがある
トイレ清掃員の平山は、人生訳ありぽくて
世間と距離をとりながら、淡々と毎日を過ごしている
それでも、
他人の人生と、木に茂る木の葉のように
風がそよげば、重なったり、離れたりする…
平山の前に現れた姪っ子、迷惑をかけ通しなうえ突然仕事ををやめる後輩、平山の音楽の趣味に好感をもつ若い女、死期が迫る飲み屋のママの元ダンナ…
同じように日々を過ごそうとしても
突然、木漏れ日が差したり、葉が重なって影が
濃くなったりするように日常は変化してゆく…
人生、みんなこうだよね
単調に思える日々の中に、ささやかな楽しみや
予測できなかった出来事が混ざり合う
そうして、人々の人生が織りなす木漏れ日は
風にそよぐたび、こんなに美しいんだよと
この作品に教えられた
たびたび、差し込まれる木漏れ日の映像が
象徴的だった
役所広司の演技は、世界の称賛に値する
素晴らしかった
特に、ラストシーンの音楽に合わせて表情だけで
語るシーンは忘れられない
60年代〜70年代の音楽もとても効果的に挟み込まれていた
映像も芸術的
うーん、
やっぱり、カンヌやアカデミーで話題になるのもうなずける
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