劇場公開日 2023年12月22日

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「安定という不安定」PERFECT DAYS しゃぐまさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 安定という不安定

2025年9月8日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

平山の年齢が65歳位の設定だとすると、平山の妹が中高生の頃アメリカのかっこいい音楽を聴いたり文学を嗜む兄の姿は眩しく自慢だったのかも知れません。娘をニコと名付けたのも兄の好きなベルベットアンダーグラウンドの影響が無いとは考えにくいです。なので現在の平山の姿は彼女には受け入れがたく、彼女にとっての兄とはかつての兄なのでしょう。
平山は何かの決断をして現在の生活をしているのだと思います。普通あれだけのルーティンをこなし、何も変えずに日々を生きていると一年なんてあっという間に過ぎてしまいます。そしてふと我に帰り恐怖するなんて事もあるはずです。それが過去に後悔を持っていたり、やり残した事があると感じている人にとっては特に。
妹を抱きしめ車を送り出したあと平山は涙を流し泣きます。予想外(ルーティンの外)だったであろう泣いてしまうという行為が、日頃押し殺していた気持ちや本心みたいなものを意識下まで浮上させたかのも知れません。そして涙は加速します。
平山は間違いなく今の生活を愛していると思いますが、人は無意識に自分を偽ったり偽りの自分が本当の自分になったりもするのなのでよくわかりません。複雑で滑稽です。でもそんな個人の事情とは関係無しに、毎日朝は訪れ世界は美しいし、それを美しいと感じる気持ちはまあ本当なのでしょう。あのエンディングはすごく良かったです。

しゃぐま
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