「心静かに過ごせる場所や時間を手に入れるにはそれ相当の犠牲が必要なのだ。」PERFECT DAYS はるさんの映画レビュー(感想・評価)
心静かに過ごせる場所や時間を手に入れるにはそれ相当の犠牲が必要なのだ。
路地を履き清める箒の音に目覚め布団を畳む。歯を磨き顔を洗う。そして夜明け前の空気を吸いこむ。まるで産まれたての赤ん坊のようの笑みが浮かぶ。しかし初老の域を歩きはじめたばかりの男。さあ、映画を始めるぞ!そんなことを言いたげな眼差しは晩秋の風の匂いのように少し悲しげだ。スカイツリーを間近で見上げることが出来るのは押上かな?イマジネーションが亀よりは優れた僕にもわかった。場所がらにこれ程似合うアパートはないだろうと思わせるところ憎い。どぶさらいのあとの消毒液が臭ってきそうだった。こんな風にこの映画は始まりそして静かに終わる。日々のやるべき事が決まっている暮らしには穏やかな空気が流れ誰も近づけない。好きなものは一体何か、好きな場所はどこなのか、好きな人は誰なのか、しかもどれもコレも必要で最小限。多くを抱えたりしない。そんな心情がどれほどの豊かさを人に与えてくれるかを教えてくれた。そんな暮らしを手に入れるためにどれほど辛酸をなめたのかはわからない。そんな謎を解き明かさないまま映画は終わる。中途半端さが許されるのは役者のせいなんだろう。
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