「私にとっての木漏れ日」PERFECT DAYS カンパク薬局さんの映画レビュー(感想・評価)
私にとっての木漏れ日
各国で様々な賞を受賞した本作でしたが先日遅ればせながら鑑賞しました。
本作のストーリーは役所広司扮するトイレ清掃員の日常生活を描いたものです。
普通のこの手の映画であれば「そんな主人公がひょんなことから◯◯に巻き込まれ」的な展開を見せるのですが、
(以下、少しネタバレになります)
この映画ではそんな「ひょんなこと」は発生しません。
都内の若干ボロなアパートで起きて植木に水をやり、軽自動車に乗って都内各地の公衆トイレを清掃する。仕事が終れば銭湯。地下街の飲み屋で1杯やり、古本屋で買った文庫本を読みながら床につく。この繰り返し。しかしこの延々と続く日常を見ている内に、主人公の不思議な充実感や、この「Perfect days」を送る何かしらの意味合いを感じるようになりました。
そしてその「何かしら」をイメージ出来る事が起きてラストシーン。
主人公は一切言葉を発せず、軽自動車を運転して一人で笑い、そして泣き出すのですが、その時やっと私が延々と主人公の日常生活を見続けたことで彼のこのシーンに感動出来ることに気づく仕掛けになっているのです。
と、この映画を見ていない人には訳のわからない感想を書いてしまいましたが、昨今は数分に一回クライマックス的なシーンを入れていくような気ぜわしい映画が多い中でこのような映画が評価されたのは驚きです。
多分この映画を見た人にとってこの映画が日々の生活の中で見つけた木漏れ日(この言葉もこの映画の大事なキーワード)のようなものかも知れません。