「ドイツの名匠ヴィム・ヴェンダースの不思議な作品」PERFECT DAYS しのぶさんの映画レビュー(感想・評価)
ドイツの名匠ヴィム・ヴェンダースの不思議な作品
始まりから静かに、そして淡々と同じ日常の繰返しが描かれる。小津安二郎を心底敬愛するヴェンダース監督が描く光と影とトイレ清掃を生業とする言葉少ない平山の日常。毎日毎日が同じことの繰り返しでこのまま終わるの?と思って観ていると、平山の姪と妹が現れるところから空気が一瞬に変わったように感じた。平山はまるで僧侶の修行のように、罪人が贖罪のためのように黙々とトイレ清掃に没頭し体を動かし続ける。もともとがインテリで上層の暮らしをしていた人で、何が有ったのかはわからない。「ただ、その何か」を拭い去るために、わざわざ職種としてトイレ清掃を選んだのではないか?と疑ってみたら、何故かそこから急に気分が下がってしまった。とても私にはきれいな話としては観られなかった。どうして平山をトイレ清掃員と設定したの監督に聞いてみたい気持ちになってしまった。
ストーリーとは別に、主人公平山のほとんど言葉を発しない演技と顔の表情の細やかさが素晴らしくって、それだけでも観ごたえが有った。さすがカンヌ国際映画祭で男優賞を獲った役所さん。
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彼は父への反発心故に、何よりも父の考えから遠いものを敢えて選び人生をかけて淡々とこなす(仕事、暮らし)ことで意志を表現したかったようにみえました。自分の老化も実感し、最期がせまる父を想像できたとしても二度と会わない道のり。その後ろには壮絶な時間、先には深い部分から湧く人情に抗う辛さもみえましたが〝貫く姿〟で、彼は父へ捧げる息子からの別れの段階に向かっていたラストだった気がします。
日常の小さな幸せに満足して満ち足りて生きている人を描写するのになんで「トイレ清掃員」? 私も聞きたいです。
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自分も、トイレ掃除がしたくて選んだ仕事とは思えませんでした。邪推を巡らすならば父との確執の際、売り言葉に買い言葉で真逆の底辺?仕事を選んだんでは。妹との会話にちょっとニュアンス有りましたよね。自分にもちょっと覚えがありますが好きでないからこそ、冷徹に仕事に向き合えて淡々とこなせるって事は有ると思いますね。