「心に静かに染み入る作品」PERFECT DAYS Hrshさんの映画レビュー(感想・評価)
心に静かに染み入る作品
この映画の中で印象的なものは、主人公が好んで聴く60~70年代のロックとそれを再生するカセットテープや古本の文庫本である。
過去は捨て去るものでは無く、本質として良いものは良いという価値観。時代の最先端を行く大都会に於いても、時代に無理に追いつこうとせず、自分の価値観を大切にして生きる主人公に次第に共感さえ覚え、平凡にくりかえし生きる生活の意味や何気ないものから見出す美意識に気付かされる。それらは物質主義や大量消費社会へのアンチテーゼかもしないが、決して声高に叫ぶのではなく、静かに語るヴェンダース監督の世界に引き込まれていく。
今、この繁栄する現代社会にあって、色々なことに亀裂や矛盾、天変地異や不穏な動きが世界中で広がりつつある中、この映画の視点は何か大切な事を見る者に伝えている気がする。
今の社会につかれた気分の時に、この映画はそっと和ませてくれる、そんな作品である。
コメントする