「名脇役は1/fゆらぎ」PERFECT DAYS k kさんの映画レビュー(感想・評価)
名脇役は1/fゆらぎ
前半はいつもの見慣れた都内の景色がカーステレオから流れる音楽にのって、おしゃれに感じました。
先に見た方が木漏れ日が愛おしくなるよと言っていましたがその通りでした。
名脇役は1/fゆらぎ。
木漏れ日、木々の緑、葉擦れの音、鳥のさえずり、虫の音、水面のゆらめき、道をはく竹ぼうきの音さえも。
映画のシーンの多くに緑の木々が配置されています。
私事ですが足を骨折し、同時期に身内を失うという心折れた時期がありました。
リハビリを兼ねて大木が重なりあうように植えられた近所の公園に行きベンチに座り上を見上げた時、まさに映画のあのシーンが目に飛び込んできました。
折からの強い風に揺れる木の葉たち、葉擦れの音、私はそれを浴びて癒やされたことを思い出し、泣きそうになりました。幸せに満ちた瞬間でした。
真に人の心を満たすものは巨万の富でもお金で手に入る物でもない。
だから平山さんが木漏れ日や木々の緑に向ける満足そうな笑顔に激しく共感して「わかる!わかるよ!」と思いながら見ていました。
映画の冒頭で平山さんの部屋が質素できちんと整えられているなと思いましたが、それもそのはず、平山さん、掃除の達人でした。
出かける前のルーティンも必要なものだけをきちんと並べる。
掃除道具は手作り。
腰でシャラシャラ鳴っているのは全て違う仕様の各トイレの鍵たち。仕様が違えば掃除の手順も、使う道具や洗剤も違う。
それを手際よく作業していく平山さん。
掃除の匠、達人、一流のプロです。
匠は無口なのです。
でも、平山さんならどんな仕事に就いても極める事ができる人だと思います。
スカイツリーが必ず背景に出てきます。平山さんの質素な暮らしを見ていると、ここが東京であることを忘れるので、「ここは大都会東京ですよ。でも、自分次第でささやかだけど満ち足りた時間を過ごすことができるんですよ。」というメッセージのような気がしました。
余談ですが、平山さんのアパートのドアの鍵、閉めないで出かけるシーンがあり、オートロックではなさそうだしと心配になりましたが、最後までシンプルに心が満たされ続けたので星5です。
これは、映画館でぜひ見てほしいです。
1/fゆらぎ音、高く低く全身に浴びてみてください。
東京のど真ん中で鍵をかけないって、勇気のいることですよね。
鍵をかけなくても良いのどかな世の中は遠い昔の話です。
うっかりなのか、わざとの演出なのかなと、平山さんの住む部屋には警戒の必要のない清浄なエリアが存在するのかとか。まるでゲームの安全地帯のような、と考えてしまいました。
平山さん自身、最後の良心みたいな人だしと、深く掘り下げすぎかなと思いつつ、なんだか気になりました。
コメントありがとうございました。
きちんとできていました。
昔は田舎では、結構、玄関の鍵をかけずに出かけることは少なくありませんでした。
さすがに今は、鍵をかけずに出かけることのできる地域は限られているでしょうね。
こんにちは。つけられたタイトルが平山さんが見上げた風に揺れるみどりの心地よさを思い出させてくれました。ご自身の体験からの言葉も沁みます。本作同様素敵なレビュー、ありがとうございました。