劇場公開日 2023年12月22日

「人生を磨く」PERFECT DAYS サプライズさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0人生を磨く

2023年12月25日
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鑑賞方法:映画館

楽しい

興奮

幸せ

行間が多く、セリフは少ない。大きな出来事が起こるわけでも、明確なメッセージがあるわけでも無いのに、なんだろうこの胸のざわめきは。当たり前だと、めんどくさいと思っていた毎日は、こんなにも美しくて素晴らしいものだったのか。なんと言い表せばいいのか分からないが、一生心に留めておきたい、今年ベストの映画だった。

〈こんなふうに生きていけたら〉のキャッチフレーズ通り、平山の人生はすごくカッコイイ。玄関前に必需品を並べたり、毎朝空を眺めたり、小さな照明の下で本を読んだり、どれもこれも自分の日常に取り入れたいものばかり。世界中が生きずらさを身体で感じた、2020~2022。1人で生きることが辛い、苦しいと誰しもが思ったはず。しかし、そんな世界で小さな幸せを見つけるというのは、ある種の生きる術であり、孤独を感じない唯一の方法じゃないだろうか。そんな空白の3年間を経験した我々にとって、主人公の平山は憧れの生き方をしている。無論、その"空白"は今なお続いており、いや、あの病気が進行させてしまったと言った方がいいのか。人の目を気にしたり、孤独を抱えながら生きる世の中で、この映画の世界は一筋の希望であり、この世界で生きることを肯定してくれたような気がした。

主人公を寡黙な人物にすることによって、主人公もその他の登場人物も、全員魅力的で輝いて見える。〈ほとんどの時間が無言の演技で支配している〉と予告で流れる感想にあるように、役所広司はほとんど口を開かない。それでいて、観客の心を震わせることが出来ている。ラストカットなんてすごい表現力だ。大好きなシーンは数え切れないほどあるけど、特にお気に入りなのは三浦友和との影踏みのシーン。日本映画界の重鎮2人が、意気揚々と子どもみたいなことしていて、すごく微笑ましかった笑 2人って共演したことあるのかな。もしあったら作品名教えて頂きたいんですけど...、記憶にないくらい珍しい組み合わせで、海外の監督だったからなし得たことだな〜と思ったり。役所広司と三浦友和の役柄が逆でも、めちゃくちゃいい感じになっていた気がするな。逆パターンも見たい😁

日本を舞台にしているのに同じ日本に思えず、ドイツの監督なのに、日本人監督が描く日本よりもリアルで鮮明に描かれていた。トイレや居酒屋、スナック、コインランドリー等のロケーションのセンスも抜群にいい。ヴィム・ヴェンダースは日本のことを日本人以上に理解している。この国の善し悪しどちらも絶妙なバランスで作品に取り入れているし、なんたって日本を舞台にした作品なのに70年代の洋楽がピッタリハマっている。ヴィム・ヴェンダースが監督だけど、一応本作は邦画という扱いでいいのかしら。もしそうだったら、これまでの邦画で1番音楽が輝いている作品だと断言していい。ここ2日間はプレイリストをリピートとし続けています。

フィルム映画のような縦横比もまたいい。エンドロール後だってカッコよすぎる。本作でしか味わえない養分がたんまり。思いっきり抱きしめたくなるほど、全てがたまらなかった。もう言いたいことがありすぎるけど、ひとつ言いたい。この映画は今を生きる全ての人に送る、最高の人生賛歌作品だ。

サプライズ
トミーさんのコメント
2023年12月26日

共感&コメントありがとうございます。
平山は代わり映えこそしないものの、日常を楽しもうという意識を持とうとしているようでした。何でも気持ちの持ちようですかねぇ。

トミー
ニコさんのコメント
2023年12月25日

私も、あまりに長くなるのでレビューでは自重しましたが、あまりに愛しすぎる映画で言いたいことがいっぱいです。
日本の風景の描写も、必要以上に美化するでもなく、でも実際に住んでいる日本人の私たちが当たり前すぎて見過ごしている美しさはきちんと拾ってくれていて、匙加減が絶妙でした。
日本発の企画×ヴィム・ヴェンダースという組み合わせの妙が最大限いい方向に働いた結果だという気がします。

ニコ
トミーさんのコメント
2023年12月25日

ヴェンダースの見た東京という感じでした、やはりどこか視点が違う気がします。
音楽といえばロードムービーですが、東京トイレ巡りが旅の様。

トミー