劇場公開日 2023年12月15日

「予告と全然違います」ポトフ 美食家と料理人 頼金鳥雄さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0予告と全然違います

2023年12月26日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

知的

幸せ

美食家ドダンと、彼の料理人ウージェニー。ウージェニーはドダンのイメージを的確に掴み料理に反映してくれる天才です。もう20年も共に過ごしています。ある日彼女が原因不明の体調不良で倒れます。死ぬほど心配したドダンは、どんなに彼女を大切に思っているかを示そうと、彼女だけのために腕をふるいます。彼の渾身のコースを口にしたウージェニーはついにプロポーズを受け入れます。2人は仲間の祝福の中結婚しました。その幸せはずっと続くものと思われましたが、病魔はウージェニーを蝕み続けていて…。

予告だと「高貴な人をポトフでもてなす事にしたわよ!何!?ポトフなんて家庭料理じゃあないか。貴人に受けるのか?試行錯誤の結果宴席は大成功。停滞していた美食家と料理人の仲も深まり結婚に至る…」と言う物語を想像したのですが、全然違いました。貴人の話はメインではありません。何と言うか、人生と友情の話に感じました。

実際ドダンの仲間の紳士達は信じられないほどいい人ばかりです。ウージェニーを女と見下すことなくリスペクトしています。ウージェニーの焼き菓子に群がるところなんて可愛らしいかったです。美味しいものの前では、みんな素直になってしまうのでしょうか。終盤、打ちひしがれるドダンの為に何くれと無く尋ねて世話を焼いてくれるし、どうしたらこんな良い友人に恵まれるのかと羨ましくなりました。

悲しいことがあっても、生きなきゃいけない。ずっと悲しみに浸っていたくても、いつか自然と受け入れる日が来てしまう。辛いけど、そういうものなんですかね。それとも友達や知人がいてくれるから乗り越えられるのか。少し考えてしまいました。

この映画は料理が出来上がる過程がとても丁寧に描かれています。畑から野菜を吟味して収穫し、切って、焼いて、こして、また焼いて。スープやソースや肉のローストを作るのに幾つもの工程があり、それらをつぶさに見せてくれます。そしてそれらをホストの美食家が切り分けて、客が美味しそうに食べるところまで。多分見る人によってはいささか長くかんじるかもしれませんが、私は没入できました。YouTubeで時短料理ばかり検索してるけど、休日だけでもひと手間、ふた手間かけてみようか。そう思わされました。

それからジュリエット・ビノシュの洋梨のシロップ漬けのような肢体(本人ですよね?もし別のモデルさんとかだったら恥ずかしい。)美しかったです。ダイエット民の洋梨体型では無く、横たわった時の体の線です。

頼金鳥雄