「神話的?」墓泥棒と失われた女神 文字読みさんの映画レビュー(感想・評価)
神話的?
2023年。アリーチェ・ロルバケル監督。イタリアの田舎町に刑務所から帰ってきたイギリス出身の男。実は、ダウンジングの力で古代遺跡の宝を盗掘する集団の一員だった。失った恋人を探し続けながら、盗みをやめられない男。しかし、近づきになったシングルマザーの女性の一言で、自らの行いを振り返るようになって、、、という話。
前半はアクションにも主観の深みにも映像にもうまく入り込めず、ただバカ騒ぎ的なノリばかりが気にかかっていたが、自省するあたりから急激にみられるようになった。ほとんど終盤だが。失った恋人ではなく目の前の女性へと気持ちが動いていったあたりからは、それまでごかごちゃしていた画面もすっきりと整ってきたのではないか。しかし、最後まで見てみれば、古代の女神の発掘と失われた恋人との再会が最初からの象徴関係のまま崩れないという恐ろしく安定した秩序を保った映画だった。(シングルマザーとの駅舎での生活はなんだったのだ)。なるべくしてそうなったという結末は「神話的」というほかない。巷間言われているように「フェリーニ風」とつぶやきたくなるのは無理もないことだ。
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