「人間の本質を抉り出す会話劇」二つの季節しかない村 ひでちゃぴんさんの映画レビュー(感想・評価)
人間の本質を抉り出す会話劇
主人公サメットが人間の本質を代表として表現している気がしました。
サメットは先生にも関わらず、人格者ではないし、生徒を差別的な言葉で罵倒するし、
お気に入りの生徒にはチヤホヤしつつ、裏切られたと思ったら復讐する。
また、同居人ケナンとひとりの女性ヌライをめぐって策を巡らすも、
マウント取りたい気持ちが優先され自爆。
マウント取りたい気持ちが勝るのは、
ヌライとの会話シーン(ここは一番の見どころではないかと)でも明らかなんです。
まあなんとも人間のイヤなところをたくさん持ち合わせている人物像だなぁと思いましたね。
すごく興醒めしたのは、ヌライと事にあたる前の展開で、
映画のスタジオ(セット)にいきなり出ちゃうところ。そしてお手洗いで薬を飲む(強精剤でしょうかね)シーン。
これって、わざわざ撮影の裏側を見せる必要があったのか甚だ疑問だし、私は興醒めでした。
これはすごく余計なシーンだったように思います。集中していた糸がプツっと切れました。
でも、ヌライの義足着脱シーンは美しかったです。
ラスト近くの宣材シーン、女生徒ゼヴィムの雪景色をバックにアップシーンとなるところは、眼福でした。
あ、そうそう、主人公サメットは、この女生徒セヴィムを気にかけていたものの(裏切られたと思って酷い仕打ちをしますが)
最後の会話シーンで、セヴィムは難しいことは全然考えていなくて、というよりサメットのことなど気にもとめていない
純粋な学生だということがわかり、サメットの暴走が哀れに感じましたね。
サメットは小難しくてめんどくさいやつですが、こんな人いるよね〜と率直に思った次第です。
その哀れさを痛烈に描いた作品でもあるかなと思います。
いやぁ、198分、頑張りました(時折意識が飛びましたが・・・)。