「脳の訓練とスリリングなメロドラマの融合」落下の解剖学 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
脳の訓練とスリリングなメロドラマの融合
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よくもわからない他人ごとなのに、すぐに答えを欲して雑な解釈に飛びついてしまう人間の勝手さ、愚かを「法廷劇」という体裁に置き換えた監督の手腕がみごと。劇中のできごとや登場人物の思惑について、細部を読み取って推理をしたり仮説を立てたりする作業はミステリーの醍醐味だし、その意味でも楽しめる作品になっていると思う。しかしこの映画の場合、どれだけ考えて「◯◯のように見える」「◯◯に違いない」と思ったとしても、結局は監督の手のひらでいいように転がされているともいえる。いずれにせよ、確たる結論が導き出せるわけではない状況に大切なのは、どこまで自分自身が対象を距離を取って、先入観に目を曇らされることなく思考ができるか。これは一種の脳の訓練であり、その訓練がスリリングなメロドラマを兼ねているという、刺激的でとても優れたエンタメだと思っています。
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