「推定無罪」落下の解剖学 じきょうさんの映画レビュー(感想・評価)
推定無罪
「落下」と「解剖学」とをくっつけるとは、うまい名付けと思ったよ。
これだけで見る気満々。アカデミーの候補にもなってるらしかったけど、当地では発表後の公開になってしまった。
お客さんは日曜にもかかわらず白い頭のベテラン勢が多く、地に足のついたサスペンスを楽しんでいた。
話は、家の3階から落ちて死んだ夫を巡る家族の話。だから密室とかトリックとか犯人とかが話の中心ではなく、なぜそうなったのかを暴く話になる。したがって法廷ミステリー。
結局、夫を殺したのか、夫は自殺したのかが焦点となり⋯妻は無罪となる。
釈然としない。
こんな話を前にも見たなあと思ったら、「ザリガニの鳴くところ」がこんな感じだった。
主人公は殺人を犯したのかどうか曖昧なまま幕を閉じる。
今作の名演は禿げの検察官だ。舌鋒鋭く家族の闇を暴く。私たちは妻の非を感じ旦那可哀想となっちゃうね。
しかも、妻は弁護士のイケメンといい仲になるようだし、過去に女性相手の不倫もしている。あかんやろ。
法廷劇が終わり無罪を勝ち取ったけど、どういう訳か作画に晴れやかさはない。
妻はスタッフと乾杯しあって遅めの帰宅、子供は寝てしまうけど、ベットに連れて行ってからのーひとことに愕然
⋯とはならなかった(笑)ベッドに入って犬が来て添い寝して襲撃おっと終劇。
結局なんなん?ハリウッド映画なら「何も起きないなら切る」でしょ。
そこそこ長いんだから。
英語、フランス語、ドイツ語の入り交じるところがセンスのいい面白い脚本だが私には冗長と感じたね。
何度か意識を失いそうになった。
『ザリガニ~』は、最後には真実が分かる上にそれを墓場まで持って行ったところが秀逸でした。
それにより、ダイジェストとなった裁判以降の人生に想像が働いた。
本作は、それに比べて人間と人生の描き方が薄かったのかなぁ、なんて思います。