「パルムドール受賞は納得の作品」落下の解剖学 関東Bluesさんの映画レビュー(感想・評価)
パルムドール受賞は納得の作品
『落下の解剖学』のタイトルの通り、夫婦の愛や信頼関係が下向していく様を、落下による死が妻による殺人なのか自殺なのかを切り開いて明らかにしていく。この2つの落下を掛け合わせたタイトルはあっぱれ。結末が観る人によって解釈が違うだろうと思われるこの映画は、見応えがあったし、久々にあれこれ考えさせられた。
冒頭の、学生がサンドラのインタビュー中に流れる大音量の音楽。たまに音量が小さくなったり止まったかと思えばまた大音量。最初理由がわからなかったが観ている私がイラッとした。サンドラは顔を顰める事も無く、話題を変え、逆に学生にパーソナルな質問をしていく。後にそれがバイセクシャルを理由に誘惑したのではと検察官に詰め寄られてしまうのだが…
私はあのインタビュー中に、サンドラは夫の殺害を決心したんだと思う。顔色も変えず、下から怒鳴って上にいる夫に音量を下げさせようともしなかった。蓄積された被害妄想のダメ夫への怒りが、リミットの線を超えた瞬間だったのではないか。
息子が犬にアスピリンを飲ませて検証しようとしたが、あれは母親が父親を殺そうとしたのではないかと疑っていたのではないか。犬が死にかけた事で、母親の父親に対する殺意を確信したんだと思う…
…てな具合に、ついついあれこれ考えてしまう映画なのである。まだまだあるがキリがないのでここまでにしておく。
印象に残ったのは、父親が車の中で死について息子に諭すシーン。父親の口パクに息子の声がアテレコ(?)されている。見事にズレもなく完璧だった。何度もやり直したのかなーなんて思いながら観てしまった。
役者一人一人が素晴らしい。犬も含め。裁判中のハゲの検察官の憎たらしさもこの映画にスパイスを効かせている。あと雪景色。最高。『シャイニング』には劣るが。
こんにちは♪
コメントありがとうございます。
1人で観に行ったので、他の方の解釈が聞けるのは嬉しい限り。
お父さんとのシーンはダニエルの空想だった!なるほど〜!
全く思いつきませんでしたw
今日もまた考えちゃいそうです。
もう一度観たいな…w
こんにちは。
自分はどちらかというと無罪派です。
ただ、口パクの件は“ダニエルの空想だから完璧だった”とも解釈できてしまいます。
物証もない以上、作中のとおり「自分で選ぶ」しかないのでしょうね。