「素朴だけど味わい深い」枯れ葉 klopstockさんの映画レビュー(感想・評価)
素朴だけど味わい深い
なぜ北欧ってこう無愛想で、冷めていて、テキトーで、面白いことなんて何もないみたいな世界なのか分からないけれど、そんな無機質な世界にも愛は素朴に生まれて、誰かと誰かをなんとなく結んでゆくのだという風景がしっかり描かれたステキな映画。
登場人物が言葉少なで寡黙な分、ヘルシンキの情景が雄弁であり、色彩豊かに人物の心情描写を助けてくれているように見える。
音楽がほぼ全編鳴りっぱなしで、ある種音楽映画の趣きがある。選曲はどれもレトロで、少し感傷的だけど好き。人によっては痛々しい使い方にも見られるだろうけど、演技が抑えてあるのでそんなに気にならない。
電話のメモのところとか、2023年の物語とは思えないくらい焦れったい展開だけれど、一方でウクライナ戦争のニュースは日々流れ続けている。その時代錯誤的な感覚が、日本人からすると新鮮でありつつもゾッとする部分で、フィンランドには住みたくない感が否が応でも増す。
ただ、映画としてはそんなシュールな雰囲気がたまらなく魅力的であり、男女の粗野な関係性も本当に愛おしくなる。誰もが日常に耐えているという、当たり前のバックグラウンドがごく自然に描かれていて、ものすごく好印象。もっとも、アル中がそんな簡単に治るはずがないので、そこは違和感あったけれども…。
なんにせよ美しくて、詩的で、人生を肯定しようと戦う人たちの映画。今日見た中では一番良かった。
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