「愛すべき掌編」枯れ葉 comeyさんの映画レビュー(感想・評価)
愛すべき掌編
フィンランドの寒々しい光のもと、飲んだくれの作業員と無表情な薄幸の女とが不器用に交わす言葉と地味すぎるロマンス。カウリスマキはここしばらく迷走している感があったけど、これは『マッチ工場の少女』や『ラ・ヴィ・ド・ボエーム』のような90年代の名篇を愛する観客を、大いに満足させるはず。
女の小さな家で食卓を囲む二人、映画館の前で古びたポスターを背景に視線をかわす二人…うらぶれた照明と絵画的な色調設計は、本当にこの人の独壇場。
映画史に足跡をのこす大傑作なんかでは全然ないけど、映画史を豊かにしているのは、これからもたぶん行くことのない街の出会うはずのない人々の暮らしを切り取る、こういう愛すべき掌編。多くの人は「なんだかいい映画だったね」と余韻をかみしめながら帰途につく。そういう映画です。
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