「理解しようとかいうおこがましい気持ちは捨てようと思う」アステロイド・シティ 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
理解しようとかいうおこがましい気持ちは捨てようと思う
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正直、最初に観たときは何が何やらさっぱりわかっていなかった。スカヨハの役のモデルがマリリン・モンローであるとか、リー・ストラスバーグやエリア・カザンといった演劇界映画界の大物と思しきキャラが登場していることとか、そういう裏設定をあとから知って、ようやく多層的な構造が見えてきた。とはいえ「マラーの死」の再現シーンに気づいたところで作品の理解が深まるわけではなく、考えれば考えるほど答えが遠ざかるようで軽く遠い目になる。でもその一方で、コロナ禍における隔離生活や核兵器に象徴されるきな臭い世界情勢など、われわれを取り巻く負の現実への目配せは確かに伝わってくるので、ただ「しらんがな」とも言い切れない。近年のウェス・アンダーソン作品は監督のこだわりが細かすぎ、観客を振り落としにかかっているのではと疑いそうになるが、おそらく本人はやりたいことを突き詰めているだけなんじゃないか。こちらも理解しようだなんておこがましいことは思わず、ただ目の前のものを受け止めればいいと思えるいいキッカケになった。そもそも100%の理解なんて幻影の過ぎないのだから。
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iwaozさんのコメント
2023年10月1日
100%の理解などない!確かにその通りですよね。同感です。^ ^
摩訶不思議映像と意味深言葉の組み合わせによるボケまくりの珍妙魔法世界に心の中で突っ込みを入れて楽しんできました。しかしあのボケに全て意味があるなんて!(><)
ついていけないけど、逆にそれ故に何回でも楽しめるという事なんですかね。f^_^;
うーん、本当に職人芸の嵐、繊細で緻密なアート作品ですよね。