アウシュヴィッツの生還者のレビュー・感想・評価
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アウシュビッツに実在した残酷なボクシング試合
いわゆるホロコーストに関する映画から、また新しい作品が誕生した。アウシュビッツでナチスのために同胞相手のボクシング試合を強いられ、試合に勝つことで処刑を免れた実在のボクサーが、アメリカに渡り、ロッキー・マルシアーノと対戦することで注目を浴びようとする。戦時中に別れた恋人を見つけるために。彼の名前はハリー・ハフト。リングアナは"アウシュビッツの生還者"と高らかに歌い上げる。
アカデミー受賞監督のバリー・レヴィンソンはハリウッドの"ブラックリスト"に載った実録小説をドラマチックでエモーショナルな映画に仕上げている。ホロコースト時代と14年後のハフトをカットバックで描くことで、逃れたくても逃れられない過去の記憶に苛まれるハフトの葛藤が伝わる構成だ。
これは、過去と未来に関する物語でもある。ハフトがいかにして生還者としてのサバイバルギルトから脱却し、未来へ歩み出していくのか。そこが見どころであり救いでもある。
地味だが完成度は高い。演出だけでなく、激しい減量と増量にトライして生還者ボクサーを演じるベン・フォスターの俳優としての献身ぶりは、もっと話題になっていいと思う。
ベン・フォスターにしか体現し得ない傷だらけの境地
『グッドモーニング、ベトナム』や『レインマン』など80年代から名作を手掛けるバリー・レビンソン監督が、たとえスピルバーグ のような多作ではなくとも、80歳を超えた今こうして新作を届けてくれるのは嬉しい(ただし撮影は2019年)。本作は近年の彼の作品で最も覚悟みなぎる一作と言っていいだろう。まずもって主人公のユダヤ人収容所内での壮絶な日々をモノクロームで描き、戦後のアメリカ時代を、古いアルバムを開くような淡い色合いで彩っていく芸術性の確かさ。その上、ボクシングの死闘があり、愛する人を巡るドラマがあり、心の内側には決して消え去ることのない傷跡が刻まれていたりと、様々な要素が絡まり合って人生を紡ぐ。全ての核となるのはベン・フォスターだ。彼の痛々しいほど徹底された肉体改造と、苦しみや悲しみを心の底から吐き出そうとする人間性がしみじみと胸を打つ。激しさと繊細さと愛を織り交ぜた、味わい深い一作である。
The Grimmest of Boxing Dramas
Add Levinson's experience of Haft, a boxer who had to fight in the ring to survive, to this year's list of interesting films that explore the Holocaust. The oddball "friendship" between him and his SS manager as well as the pathological aftermath in his family life after war make for a fresh story in a film that welcomingly feels unusually 1990's. A film that shows it hasn't all been done before.
誰が死ぬかを決めなければならない負荷
ホロコーストものの作品であるが、本作品が他と比べて珍しいのは、内容の半分が「戦後」であるところだ。
アウシュビッツでの過酷な経験により、安全になったアメリカでの生き方に暗い影を落とす。
主人公ハフトは賭けボクシングで勝ち続けることで生き抜いた。それは対戦相手である同胞を殺して生き延びたともいえる。
ハフトに選択肢などなかった。自分が死ぬか相手を殺すかしかない中で、必死になっていただけだ。
このときのハフトは恋人に再び会いたいという想いだけで耐えたのではないか。
戦争が終わり振り返る。生きて恋人と再び会うとこの重要性が増す。なぜなら何人もの同胞の命の上にこの願いが立っているから。
ある意味でハフトが犯した罪は彼女との再会なくして清算されることはない。
ハフトの兄が、自分はお前のおかげで生き延びることができたとハフトを肯定するが、ハフトにとっては、兄の命だけではたりなかった。
ハフトの負の感情は息子との関係にも問題を生じさせる。
ハフトは良かれと思って自分の中に過去を閉じ込めるが、息子にとっては大きな壁があるようにみえたに違いない。
父親が苦しんでいる。だがその苦しみは分からない。分かり合えないままで親密な親子になるのは難しい。
ハフトの心の闇は、恋人が生きていたこと、そして息子に自分の過去を話したことで清算された。
何かが変わったわけでも、何かが赦されたわけでもない。しかしもうハフトの戦争は終わったのだ。
主演のベン・フォスターの演技が圧巻。現代ではCGかもしれないが、アウシュビッツ時代のやせ細った姿は別人のよう。
試合を重ね、おそらく食べ物を与えられているせいだろうが、体重が戻っていっている様子もこだわりを感じる。
監督のバリー・レビンソンを観るのも久しぶり。十年以上ぶり。まだ頑張って監督やってて嬉しい。
ボクシングを売り物にホロコーストを生き延びた人物がいたとは知らなか...
目的
ボクシングという格闘技は、
ここまで見る者を魅了するのかと思った。
ナチスの収容所でのユダヤ人同士の格闘は、
さながら闘鶏や闘犬を彷彿とさせた。
人間扱いされていない。
まさにそうである。ハリーが倒した相手は、
直ぐにナチス兵が銃で撃つ。
だから、ハリーは負けるわけにはいかなかった。
必ず生き延びねばならない目的があったのだ。
青春時代のレアとの恋❣️
ナチスに連れ去られたレア。
助けて、ハリー、と叫ぶ声。
生々しい収容所の様子。
素っ裸の死体の山。
数体ずつ手押し車に乗せ火の中に放り込む。
自分のしていることは人間の所業か、と
思い返す余裕も無しに
作業しなければならない。
戦争が終わり
生き延びてアメリカでボクサーとして
生活している。
ミリアムという女性と知り合う。
レアのことを心に秘めながらも、
ミリアムと結婚し三人の子供をもうけ
安定した生活を送っていた。
そこへレアの情報が入り
会いに行くが‥‥。
レアの為
レアに会う為、
生きていなければと必死だった思い
思ったあの気持ちは
忘れずにあるが。
遠い昔のことのようでもある。
追記:
主人公のハリーを演じたベン•フォスターさん、
ガリガリのガリガリ、役作りの為だろうが、
立ってられるのが不思議に思うほどの体。
希望が見えてくる
1949年、アウシュビッツの生還者というふれこみのボクサーハリーは、生き別れとなった恋人レアを探していた。もっと有名になるため、とアウシュビッツでの壮絶な経験を取材記者に語る。1963年、ミリアムと家庭を築いていた彼はついに。
ハリー・ハフトの息子アランが記した、実話をもとにした物語。アウシュビッツの厳しい経験と、公表した後の周囲の扱いが悲しい。それでも彼が報われたことに、胸が熱くなりました。悲劇を背負ったハリーに対し、子供のアランがきらきらしていて、希望が見えてくるようでした。そしてジョークのオチはちょっと笑えます。もったいぶった割にたいしたことない、それがまた平和で笑えました。
ダニー・デビートとジョン・レグイザモが、思ったより目立たないのがちょっと残念。
モノクロシーンと、役者の激しい体重の増減から、「レイジングブル」を思い出しました。
数カ月のことが生涯心に残る大切な時間に。
アウシュヴィッツの生還者の実話。
アウシュヴィッツでナチスの娯楽としてユダヤ人同士をボクシングさせて負けた方は殺されるというまさにサバイバルゲームを勝ち残り、さらには監視をかいくぐって生還する。
数カ月のみの恋人だったレアとの思い出を生還の糧とし、アメリカに渡った後もさがすものの別の女性と結婚して幸せな家庭を築くものの、サバイバルボクシングのことがトラウマにもなるし、レアのことは忘れることができない。
先が長くないレアと再会することができ、今までのトラウマの部分が払しょくされるほどに。短い会話ではあるが、一言一言が数十年分の重みを感じる。
アウシュヴィッツには行ったことがあるが、たくさんの命が奪われて、というだけではなく、失われた命にも生還した命にもそれぞれにストーリーがある。
たくさんのストーリーをこれからも大切にしていきながら、アウシュヴィッツのことは風化させてはいけない。
父との距離が縮まる
ハリーは自身のアウシュヴィッツ強制収容所における凄惨な体験から、男は強くあらねばならないという信念を持っていた。彼にとってはボクシングこそが生きる手段だった。だからこそ息子のアランも鍛えようと厳しく接し、ボクシングを強制させた。それは彼なりの愛情表現だと言えるだろう。だが、彼の想いは一方的過ぎて息子アランには伝わっておらず、萎縮させていた。最終的にはハリーが意を決してアランに自身のアウシュヴィッツにおける体験を伝えることで、なぜボクシングをやらせようとするのか、ようやく父の想いが伝わった。父との距離が初めて縮まった瞬間だった。
今作は以前にも観たことがあるが、『レインマン』や『グッドモーニング・ベトナム』のバリー・レヴィンソン監督の映画だとは知らなかったので、改めて観てみた。ストーリーはそれらの作品と比較すると淡々として、少し面白みに欠けた。そのため☆-0.5。
生きるためのボクシング
2022年に公開された
アウシュヴィッツのチャンピオン と同様
看守たちの娯楽として、生きるためのボクシングを
強いられたハフト🥊
負ければ「死」あるのみの非道なゲーム。
彼らにとって忌まわしいこのスポーツを
自由の身になってからも
生活の為、生き別れとなった恋人を探す手段として
続けなければならない苦悩
ホロコースト時代と14年後のハフトを
描くことで逃れられない過去との葛藤に
苛まれる姿が痛々しくも辛いです😢
幸せな結婚をしたはずのハフトが
息子との向き合い方が上手くいかない理由も
息子を思っているからで
ラスト、過去を語ることができたあの瞬間
やっと心からホロコーストより解放されたように
前進出来たように思えました。
アウシュビッツからの生還者ハリー・ハフトの
半生を息子アラン・スコット・ハフトが綴った
実話です📖´-
生き延びても地獄
収容所から生還しても、PTSDでフラッシュバックに苦しめられ、残りの人生も地獄に近い。
痩せ細った囚人たちを戦わせ、負けた方にはその場で死を、最強王者にはその親友と戦わせる。これが単なるドイツ軍将校の余興だという…
ホロコースト関連のものを見るたび、人の残虐性に底はないのかと思う。
洗脳のせい?集団心理から?
ナチスもヒトなのに、ここまで徹底して人間性を捨てられるのが、いつも、あらためて衝撃。
そういえば「ヒトラーのための虐殺会議」で、誰かが「徹底性がドイツ人の美徳」と言っていたのを思い出した。
現在パートのハリーがお肉がダブついていてボクサーの体型ではなく、ボクシングシーンが緩い。
本物のハリーは、ロッキー・マルシアノと戦ってたんだ!?
実話ながら、レアと再会できてよかった。その後も奥様のミリアムと寄り添って生きていけたようなのも良かった。
ベン・フォスター、恐るべき肉体改造も含めて、熱演。
でも、映画はちょっと冗長な気がする。散漫というか。
ベン・フォスターの男臭さ
ベン・フォスターは地味だけど強烈な男臭さを感じさせてくれる俳優。共演する女優さんも引き立つ。
激ヤセと激太りの役作り。ストイックな俳優根性にも脱帽。ベン・フォスターをはじめて認知したのはフランスの女優兼監督のメラニー・ロランが撮ったガルヴェストン。ベン・フォスターの男臭さに惚れた。エル・ファニングはベン・フォスターの男臭い自己犠牲のお陰でまばゆいほどに耀いていた。
にしても、これがハフトの息子が出した本が原作の実話とは。
ナチの将校たちのゲス加減が半端ない。これはボクシングではない。
ホロコーストのユダヤ人は好きで減量してるわけではない。痩せこけた彼らを無理やり戦わせ、負けた方を銃殺して見せしめにする。人間の尊厳をこれほどまでに貶めることができることに驚いた。
かつてコロセウムを建造し、殺しあいや虐殺を見世物にしたヨーロッパ人にとってはこの状況はさほどでもないのだろうか?
配給されたタバコを食糧と交換し、同胞を犠牲にして生き残った主人公の罪悪感とフラッシュバックとの戦いに明けくれた人生の過酷さは想像にあまりある。ただただ恋人レアに生きてもう一度会いたいという一途な信念は執念という他はない。
情報手段として新聞と雑誌しかなかった時代にボクサーで名を上げれば、レアが気づいてくれるかもしれないという一縷の望みに賭け続けたハフト。
彼を利用してひと儲けしようとしか考えていない男たちのなか、強制収容所のユダヤ人の消息を調査する機関の女性ミリアムに支えられ、その好意に答えようとしながらも、PTSDに苦しめられ、うまくいかないシーンはナチの将校たちの遊び感覚で行われた褒美の酷さにゾッとした。
プロボクサーのボクシング映画として試合映像はいまいちだったが、あれほど激ヤセしたのだから、そのうえ、ボクシング練習も充分にするのは無理だろう。
エリザベート1878ではおてんばで自己中心的だったヴィッキー・クリープスが演じた控え目だけど芯の強い女性ミリアム。ハフトの突然の旅行計画を不審に感じる。レアに会って帰って来たハフトとミリアムのふたりを背後から撮ったビーチのカットはなんとも言えない。
父親から戦争中の出来事を聴かされたハフトの息子の立場になってみると、とても自分だけの胸に閉まっておくのは辛すぎたのかもしれない。
ナチに関する映画は何年経っても繰り返しいくつも制作される。人体実験データ収集が主たる目的だった原爆投下も同じく人間が行った蛮行なのだが、圧倒的に映画作品は少ない。被爆者の口頭伝承にはおのずと限界がある。巨額の制作費がかかるだろうが、記録映像や被曝データを解析し、独自の視点から世界に訴えることができる映像作品を作ってもらいたい。
一筋縄では行かない映画
この映画を始まって、すぐに頭に浮かんだのは、何十年も前にNHKで見た「キティ、アウシュヴィッツに帰る」と言うドキュメンタリー番組だった。アウシュビッツから奇跡的に生還したキティ・ハートと言う女性が、再び収容所を訪れて当時の記憶をたどりながら、想像を絶する悲惨な収容所の生活を生々しい語り口で語ると言う内容で、あまりのインパクトの強さに今でも忘れられないドキュメンタリーだ。ネットで調べたら、やはりその当時に強く記憶に残っている人が結構いて、この番組が1985年に製作され、翌年の1986年の10月にNHKで放映されたことが判った。今でも図書館などの公共施設のビデオライブラリーで視聴出来るくらいの伝説的なドキュメンタリーであった。収容所時代の過酷な生活や生還するまでのエピソードも去ることながら、自分がこの番組で一番に強く記憶に残っているのは、彼女が生還後、イギリスでの日常生活のシーンの中で健康のためにプールで水泳をすると言う何気ない場面なのだが、その激しい泳ぎ方が、鬼気迫るものがあり、そこに生死の淵を渡って来た人間の生きることへの渇望の凄さを見せられた。戦争の地獄を体験をした人間にとって、その記憶と心の傷はなかなか消えないわけで、この映画はそうした経験を経た人々がその後、何を考え、どのように生きていったのかが、丁寧に描かれているところが素晴らしい。しかも声高にもヒステリックにもならずに、人間愛に溢れながら表現されているのは、バリー・レビンソン監督の力量ならではであり、ハンス・ジマーの内なる哀しみを秘めた重厚な音楽そのものだ。そして、何よりもレイジング・ブルやアンタッチャブルのロバート・デ・ニーロを彷彿とさせる主演のベン・フォスターの体を張った怪演しかもそれを感じさせない自然な演技がこの作品の成功の要因だ。この映画のあらすじを話すのは、一筋縄ではいかない展開だけに、やめておこう。一言だけ、ポスターから想起させる程の陰惨な印象はない仕上がりになっているのでは?
サバイバルのためのボクシング
スコセッシ&デニーロの映画みたい。
映画的に、ナチスとLGBTが食傷気味で、
またー?またナチス?
去年やった『アウシュビッツのチャンピオン』の焼き直し?
と思いスルーしようかと思ってましたが、観てよかった。
『アウシュビッツのチャンピオン』とは違う人間を描いた、別の話です。
ポスターで超損してる(笑)
白黒で捕虜時代の話かと思いきや、メインはカラーでアメリカの50年代60年代、
『グッドフェローズ』時のデニーロに似た、ギャング映画に出てきそうなオールバックの主人公。
実在した人物の事実に基づく伝記的映画で、細部まで再現した50年代60年代の、音楽、ファッション、街並み、がイカしてる♪
マジで、スコセッシ&デニーロの映画みたい。
スコセッシの映画やノワール映画のファンに、特にオススメです。
Temple
アウシュヴィッツ収容所の知識はなんとなく持っていますが、そこから生還した人の話はそこまで詳しくないので、勉強がてら鑑賞しました。
ボクシングで生き残ったハリーという方の史実を基に作られた作品で、現在と過去を行き来して物語を見せる作りになっていました。実話ベースなので物語が冗長に感じてしまったのが惜しかったです。そこの知識が足りてなかったので、追いついていけなかったのかなとも思いました。
ベン・フォスターの体重の増減による変化は凄まじかったです。あんなにガリッガリになるための肉体改造ってどれだけ苦しいのか…。役者魂を見せつけられました。
映画によって勉強すると少し前まで考えていましたが、史実を基にした作品を見る時にはその部分だけでも事前に勉強していくべきなのかなと考えるようになりました。うーん大変…。
鑑賞日 8/28
鑑賞時間 9:50〜12:05
座席 D-13
強烈なポスタービジュアルに囚われずに観るのが吉の良作な人間ドラマです。
以前からポスタービジュアルに惹かれて、鑑賞したかった作品をやっと鑑賞しました。
で、感想はと言うと…もっと強烈かつ壮絶な描写の数々と思いきや、ちょっと思ってたのと違いますが、一人の男性の強烈な体験からの人生を描き出すヒューマンドラマとして見応えがあります。
アウシュヴィッツ収容所から生還した、ハリー・ハフトの半生をを描いたストーリーでアウシュヴィッツでの壮絶なボクシング(と呼べない程の殴り合い)シーンなどのモノクロと生還後のカラー描写のコントラストが印象的。
ポスタービジュアルの印象が強すぎて、最初見た時に“ん?北欧の処刑人、ヨアキム・ハンセンか?”と思ってしまったw
アウシュヴィッツをテーマにした作品は多々ありますが、同じボクシングを題材にしたアウシュヴィッツ作品に2020年に公開された「アウシュヴィッツのチャンピオン」がありますが、モノクロが使用されている分、こちらの方がより凄惨に見える。
特にハリー役のベン・フォスターの過酷な減量で壮絶な収監者の身体を作り上げたのは見事としか言いようがない。
なので現代パートのハリーがものすごくポッチャリに見えるしw、全く別人にしか見えないのは凄過ぎ。
個人的には2016年の「疑惑のチャンピオン」の主人公のランス・アームストロング役が印象的だけど、結構カメレオン俳優で役幅も広い。特に今作でもうワンランク幅を広げたと思う。
作品の一番のウリはモノクロで構成されるアウシュヴィッツでの回想シーンでふとした事から賭けボクシングの選手として闘いを繰り広げられる。勝てば生還。負ければ死はまさしくDead or Alive。
お粗末なリングにお粗末なグローブ。もうボクシングのボクサーと言うよりかは闘犬や闘鶏のような感じで場末感どころの騒ぎではない。
奇跡的にアウシュヴィッツから逃走で生還したハリーのその後は恋人のレアを探しつつ、アウシュヴィッツから生還者の異名でボクサーとして活躍するが稀代のチャンプ、ロッキー・マルシアノとの対戦がボクサーとしてのクライマックス。
引退後は様々にサポートをしてくれたミリアムと結婚し、子供を設けながらも様々な苦悩に苛まれるがあんな壮絶な体験をしたらそりゃそうなるだろうと。
実際には逃走した際にももっと悲惨かつ凄惨な体験をしたらしいが劇中ではそこは端折られていた。
個人的にはちょっと惜しい。ここが深掘りしていればもっと感情移入もしていたと思うけど、口にも憚れるだけの内容なのでハリー個人の人間性を左右しかねない為に難しいところ。
個人的に難点に感じたのはアウシュヴィッツの体験からかボクサーとしてのハリーが些か生彩に欠けている様に映るのと壮絶な賭けボクシングの数々に比べて、収容所での生活というか日常描写が少ないせいか、アウシュヴィッツ収容所の悲惨さが薄く感じる。
また生き別れた恋人のレアのことやボクサーの活動。引退しても続く様々な苦悩などを取り入れているせいで些か焦点がブレる様にも感じる。
実話を元にしているので、様々なポイントがあるのは仕方ないんですが、もう少しポイントを絞っても良かったかなと。
ナチスの将校でハリーを賭けボクシングの選手に仕立て上げるシュナイダーはアメとムチがイヤラシイw でも意外と人情的にも見えるんですよね。
もっとアウシュヴィッツでの悪行の数々(十分悪行過ぎますが)を出してみて、“ザマーミロ!”と思わせても良かったかな。
いろんなトラウマから性行為もままならないと思いきや、無事に子供も授かり(それも3人w)、結構昭和のオヤジよろしくのスパルタパパな描写はちょっと今なら奇妙に映ったりしますが、意外と良いオヤジ感が板についてる。また結婚前にミリアムとデートをするハリーがまたダンディーで渋い。ボルサリーノな帽子もめっちゃ似合ってる♪
モノクロ映像が殆どかと思いきや、半分以上がカラーの現代パート。凄絶なボクシングと収容所生活が大半かと思うと結構肩透かしな感じがしますが、1人の男の半生として観ると凄く良い作品。
リングからの生還。
地獄からの生還。
トラウマからの生還。
過去からの生還。
束縛からの生還。
様々な事からの生還は全ての人生においてあるべきこと。
ちょっとポスタービジュアルのイメージで内容を固定してしまいがちになりますが良い作品。
上映館も結構少ないけど、機会があれば是非是非♪
見くびられて生きてきた人間は、それを武器にできる
kinocinemaみなとみらいにて鑑賞してきました。
ハリーを演じたベン・フォスターの、収容所時代とボクサー時代の演じ分けが素晴らしいですね。
身体の対比がすごいです。
アウシュヴィッツから生還してからも、そこで過ごした地獄のような日々がフラッシュバックする日常。
終盤には、収容所時代の一番の友達ジャンと試合を組まされ、殺すしかなかったことが明かされます。
ミリアムを演じたビッキー・クリープスも、子供が生まれてからは強い母になってましたね。
最後は生き別れたレアと再会出来て、感慨深い会話を交わし‥。
題材が題材だけに、重いシーンもありますが、私は観ても損はないと思いますね。
ただ、恥ずかしいことに私は遅刻して、本編開始1分後位に滑り込みました😅
面目ない。
全41件中、1~20件目を表示