劇場公開日 2023年6月16日

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「セクハラを黙認するオフィスのいやーなムード」アシスタント 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5セクハラを黙認するオフィスのいやーなムード

2023年6月17日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

怖い

週末にも出勤して黙々と仕事をこなす主人公のジェーンは、まだ就職して間がないのに疲弊し切っているように見える。やがて、理由が明らかになる。ジェーンは上司がセクハラを助長する中、少しでも仕事でミスると罵倒され、周囲は誰も助けてくれない、言わば四面楚歌の状態にいることが。極め付けは、悩みを相談した人事部長のありえない言動だった。みんなダメと知りつつ、そのダメにどっぷりと浸かり、自己防衛しか頭にないのだ。そんなジェーンを取り巻く凍りつくような状況が抑えた色調と最小限のセリフによって描かれて行く。

ハーベイ・ワインスタインのセクハラ事件をヒントに、実際、ワインスタインの下で働いたことがあるアシスタントにも取材して脚本に活かしたという本作は、映画ビジネスの生々しい実態を暴くと言うより、1人の女性がまるで使い捨てのコマのように扱われ、人としての尊厳をズタズタに踏みにじられる姿を描いて、その後、巻き起こった#MeToo運動の流れへと観客を誘導していく。製作が立ち上がったのが2018年、テルライド映画祭で初披露されたのが2019年で全米での劇場公開は2020年。それを考えると、3年という時間のズレ(日本公開まで)が若干歯痒いところではある。

しかし、当然、まだ、世界のどこかにはジェーンと同じく踏みにじられ、無視されている女性がいるはず。それを伝えるのにタイムラグは問題ないのかも知れない。

清藤秀人