「素晴らしいテーマを、笑いと愛でひっくるめた。心に染みて残る気持ちに価値のある傑作。」幸せのイタリアーノ おひさまマジックさんの映画レビュー(感想・評価)
素晴らしいテーマを、笑いと愛でひっくるめた。心に染みて残る気持ちに価値のある傑作。
お気に入りの映画に出会うこと。
そんな瞬間のために映画館に行っている。
2018年 フランスの大ヒット映画「パリ、嘘つきな恋」。イタリア版リメイクの本作は、フランス版の素晴らしいストーリー・オリジナル脚本に最大限のリスペクトを抱いて作られていたようだ。
実は私はフランス版を見たことがなく、つい先ほど急ぎ見たところ。結果的によく比較することができ、にじみ出るお国柄の違いがあり面白かった。
フランスのジョジョが軽やかな女好きであることに対し、イタリアのジャンニはより性的欲求の強そうな伊達男、野獣系女ったらしだ。また、お相手のフランスのアレクサンドラはスポーティ&ヘルシーな大人の女性。イタリアのキアラは眩いほどの美しさを纏った若々しい女性。と、いったところで分かれるお好みも含め、見比べてみても楽しい両作だ。俯瞰すればイタリア版の方がより映画的で見やすい雰囲気に感じたが、どうか。
比較論はさて置き。
良質な恋愛映画には、必ず心に残る名シーンがある。
この映画にも忘れられないような名シーンがいっぱいだ。
例えば、車椅子同士(一方は電動ね)で手を繋ぎ、滑り踊るような夜。見ているこちらも、思わずうっとりしてしまうような恋の始まり。
究極は、ディナーでのサプライズ。プールで結ばれる二人のシーン。足が不自由であろうとなかろうと、水に浮いているだけなら同条件。こんなやり方で恋に落ちない男女がいるのだろうか?と思うほどロマンティックなシーンだった。
そしてラスト、ジャンニの元に戻ってくるキアラ。諦めるの?と問いかけるキアラ。これは「私を諦めるの?」の語彙なのだが、フランス原作では同じセリフに別の意味を持たせていて違ったものになっているのだが、いずれも、何とも面白い。膝の上に乗せてあげるアクションも、今後の二人の関係性を表すようでハートフル。
また、この映画で忘れてはならないのは音楽。
Piernicola di Muro氏の手掛けたサウンドトラックは、何度聴いてもイタリアにトリップさせてくれるような素晴らしさだ。特にタイトルと同名の「Corro da te」が醸し出す、郷愁を帯びた大人の愛のメロディは珠玉の出来。
シンプルに、ラブコメディとして見て充分に面白い本作。それでも見た後で心に残るのは、健常者でもハンディキャップでも生きる喜びをもつ、それが人生だという前向きなメッセージだ。