「見くびり陳謝」映画 窓ぎわのトットちゃん シューテツさんの映画レビュー(感想・評価)
見くびり陳謝
全くノーマクの作品で劇場で見る予定も無かった作品でしたが、映画友だちの推薦もありちょっと興味が湧き鑑賞してきました。
なので大ベストセラーの原作も当然未読で黒柳徹子の幼少期の話という事以外は予備知識ゼロでの鑑賞なのに、何故か勝手に黒柳徹子の戦時中の疎開先での物語だと思い込んでいて、これも見たら全く違う物語だったのでそれにも驚きました。
観終わって、まさに無知の過小評価という、最も私が毛嫌いしていることを私自身がしていたことに恥ずかしくなってしまいました。
内容を今更知ったのですが、原作の発行が1981年ということでまさに日本はバブル景気のピークの頃に、これほどド直球の“教育論”をテーマにしているとは全く想像も出来なかったのだと思います。
近年、多様性だのポリコレだのの言葉が使われ浸透し出したのもここ10年くらいで、その実態は言葉の表層だけ掬い取った様な中身のない、逆に偏見や差別を内向きに増長させている様な社会的傾向が見られるのだけど、40年前の原作で80年前の日本の出来事で、これこそが“多様性”であり“政治的正しさ”だろうと思える様なメッセージを発していることに、とにかく驚いてしまいました。
しかもノンフィクションでありながら、実写化せずに時折出てくる幻想的な絵本やアニメーションの最も得意分野である絵の力で想像力を増幅させるような効果にも驚かされ、とにかく好きになったシーンが沢山あるのだけど、特に映画ファンとしては、トットちゃんと小児まひの泰明ちゃんとの雨のシーンは、まるで「雨に唄えば」の名シーンと重なり胸が熱くなってしまいました。
あと、別の意味で小林先生が大石先生に、強く叱責するシーンも印象に残りました。あの程度でそこまで厳くなくてもと一瞬思いましたが、真の多様性あるとかポリコレに対して真摯に取り組む教育者に対しては、そこまで徹底した細心さが必要だという事なのだろうと教えられた気がしました。
今、北米やヨーロッパで「ゴジラ-1.0」や「君たちはどう生きるのか」が大ヒットしているというニュースが聞こえてくるのですが、テーマ・メッセージという面で、これらの時代背景の日本映画が欧米人にも受け入れられる様になっているのであれば、ゴジラとかジブリとかの世界的なブランドではなく「君たちはどう生きるのか」などの小難しい作品より、本作の方が日本人の国民性(若しくは総意?)などが分かりやすく、是非見て貰いたいと思いました。(見逃しかけた、私が言っても説得力に欠けるのですが…)
特に、この映画こそ世界的に今問題視されている上記の多様性だのポリコレに向き合う姿勢や無くならない戦争への批判としてストレートに学べる気がするのですけどね。