「宝くじで人生外れても…」To Leslie トゥ・レスリー 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
宝くじで人生外れても…
宝くじ高額当選は誰しも夢である。
もし当たったら、まず引っ越すね。今住んでるアパートは古いアパートなので、いいマンションに越したい。
億単位で当たったら、仕事辞めるね。結構お金で苦労してきた人生なので、自由気ままに暮らしたい。
…と、夢妄想だけは限りなく。
でも、2500万円の当選だったら…?
確かに普通に暮らしてりゃなかなかお目にかかれない大金だが、それで人生悠々自適には…。
使い道を間違ってしまったのが、本作の主人公。
シングルマザーのレスリー。
宝くじ19万ドル(約2500万円)に当選するも、ほんの数年で使い果たす。
お酒に…。
以来まともに働きもせず、自堕落の日々。
宝くじが嘘のように、借金も。
行き場を失って、息子や知人を頼るが…。
宝くじ高額当選してその後人生狂った人の話は聞いた事あるが、この主人公の場合は…。
お酒に溺れ、人生ダメにしたのは自分のせい。
助けに船。そこでもお酒を飲んで迷惑掛けるんだから話にならない。
息子は見た目はチャラいけど、いい奴。知人は言う事はキツイが、レスリーがこんなんじゃキツイ事もそりゃ言うわな。
もし自分が宝くじに当たっても、お酒に消えたり、自堕落になんて…と、実際にその状況でないから言えるのかもしれない。
お金は麻薬。怠惰は中毒。
共感は一切出来ない主人公だけど、アンドレア・ライズボローの熱演は大いに見もの。
当選した時の大はしゃぎっぷり。現在の落ちぶれた醜態丸出し。感情のアップダウンも激しい。
決して真っ当な性格じゃないけど、一挙一動からは目が離せない。
確かにオスカーノミネート級。一騒動あったのは不運だった…?
それでも彼女に再び助け船。
モーテル従業員のスウィーニーが仕事を紹介。
真面目に働くが、やはりお酒の誘惑には…。
これまでなら完全に呆れるが、スウィーニーは見捨てようとはしない。
ベタだが、人間誰しもやり直せる。そのきっかけ。中年男女に芽生える恋模様も滲ませて。
どん底まで落ちて、再起。
よくあるっちゃあよくある話。
その描き方次第で佳作か凡作かになるが、本作は…。
スウィーニーとその友人ロイヤルの協力を得て、ダイナー経営で再スタートしたレスリー。
オープン日。客は一人も来ない。まあ、そんなもの。
閉店間近。思わぬ客が。ある人物を連れて。
本当に人生はやり直せる。失われたと思われた絆も。
しみじみ余韻が残るいいラストだった。