「天国から地獄に堕ちたレスリーの再生への道」To Leslie トゥ・レスリー 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)
天国から地獄に堕ちたレスリーの再生への道
アメリカでは宝くじで天文学的な賞金を当てた幸運な人々のニュースが時折話題になる。そんな時、自分だったらそっとしておいて欲しいと思ったことはないだろうか。
本作のヒロイン、レスリーはそのことを町中、全米中に知られてしまい、挙句、手にした20万ドル弱を酒と麻薬で使い果たし、賞金に群がった悪い連中の口車に乗って、5年後の今は酒浸りのホームレス生活を送っている。あり得る話だ。突然手元に舞い込んだ大金は幸運を招くどころか、金銭感覚を麻痺させてしまうからだ。何よりも、人々の注目を浴びるのが良くない。残念なことに、人というのは誰かが幸福になることより、むしろ、不幸へと転がり落ちるのを見るのが好きだからだ。セレブリティは勿論、レスリーのような一般人もその標的にされる。
天国から地獄へ堕ちたレスリーが、酒を断ち、捨てた息子をその手に取り戻し、再び人間らしい生活を送れるのかどうかを追う映画は、観客をレスリーの周辺にいる残酷な傍観者にはしない。別段目新しくもない転落から再生への物語が、アンドレア・ライズボローの目まぐるしく変化する表情と、痛々しく、美しい演技によって斬新にアップデートされているからだ。そして訪れる終幕で思わず涙を流したのは自分だけじゃないだろう。
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