劇場公開日 2023年5月26日

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「80〜90年代OVAカルチャーに捧ぐ」アラーニェの虫籠 リファイン版 因果さんの映画レビュー(感想・評価)

2.580〜90年代OVAカルチャーに捧ぐ

2024年2月7日
iPhoneアプリから投稿

80〜90年代のゴア系OVAブームのノリを3DCGで再奏した中編作品。

しかしながら大前提としてゴア系OVAの真骨頂は暗澹たる物語とセル画のダーティな色彩のマリアージュにある。『メガゾーン23』や『ジェノサイバー 虚界の魔獣』が一部でカルト的な人気を博したのは、首の千切れるシーンで神経系や毛細血管に至るまでが細かく描き込まれていたからだ。

したがって、アナログならではの迫力やきめ細やかさが一切合切欠落した3DCGという土俵でただただ律儀に再奏されただけの本作が往年の手書きゴア系OVAに能うかというと首肯しかねる。

『GHOST IN THE SHELL』『serial experiments lain』よろしく謎めいて衒学的な雰囲気は確かに興味をそそられるし、化け物の造形もなかなかにおぞましい(それこそ中村隆太郎っぽさがある)のだが、やっぱりそういうのも画面のテクスチャの如何によって印象が大きく変わってしまう。3DCGの嘘臭い立体感とこういう作風はそもそも折り合いが悪い。

フレームレートを意図的に落とすことでローファイな画面を再現しようという努力はわかるものの、むしろいたずらに安っぽさに拍車をかけるだけの結果となってしまっている。

物語に関しても、救済をちらつかせたうえでの世界滅亡という展開は80〜90年代の露悪を基調としたアングラオタクカルチャーにおいて頻繁にみられたものであり、目新しさはない。ただ、見方を変えれば80〜90年代OVAカルチャーへの憧れを最後の最後まで貫徹したわけであり、その気概というか情熱には敬意を表したい。

因果