「それぞれの傷や闇とつきあっていくライトな人間ドラマ」ブルックリンでオペラを ターコイズさんの映画レビュー(感想・評価)
それぞれの傷や闇とつきあっていくライトな人間ドラマ
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スランプに苦しむオペラ作曲家のピーター・ディンクレイジを中心に、彼の義理の息子の恋人家族などとの人間模様が描かれる。人生は悲喜劇だというライトな人間ドラマで楽しく観られた。
この作品で最もおぞましいのは恋人の父親の法廷速記者だと思う。彼のおぞましさはどこに起因するかというと、自分の正しさを疑わず家族など他人の想いを顧みようとしないこと。
何が正しいかは価値観がゆらぐこの世界で、食い違って当たり前なのに聞き入れない姿勢はなんて醜いのだろうと思う。そしてその夫に従わざるをえなかった母の生き様も。でも、間違ってもいいし正しくなくてもいいし、己の決断の失敗も許してあげて、少しずつ、もっと自分を好きになれる道をそれぞれが歩めたら、それでいいじゃないかって思える。
それにしてもあの父の自分の価値観への拘泥は、怯えなんだろうなと思った。信仰も頑迷な過信も、怯えがゆえ。
個人的にはピーター・ディンクレイジ演じるスティーブンの選択が唐突に感じた。彼がああ感じたのは、女船長マリサ・トメイが彼にとっての創作のミューズだったからなのだろうか。あれほど創作欲がわかず苦しんだからこそ、創作のミューズであり人助けの女神への感動が愛情に変わったとみたらいいのかな、あとは彼女を助けたいという救世願望のせいかも。でも、愛情の動機はなんであれ、基本、おわりよければすべてよし。
そういう意味ではまとまりのよい作品だったと思う。
アン・ハサウェイ含め、大人たちはみなそれぞれ闇や傷を抱えているのだけど、それをどうやり過ごし、どう自分で受け入れて、日々を楽しんで生きていくか、そういうことを感じられた。
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