「名探偵リーアム…だったかな?」探偵マーロウ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
名探偵リーアム…だったかな?
男は探偵。
依頼人は裕福そうなブロンド美女。消えた愛人を探して欲しい。
遺体は墓地に埋められた筈が、その後目撃証言も。奇妙な事件。
やがて巨大な闇に巻き込まれながらも、真相を突き止めようとするは、勿論この男!
リーアム・ニーソン!
祝!リーアムの映画出演100本目。
おめでとうございます。ご苦労様です。ありがとうございます。
なので、いつものアクションとは違う特別感。
監督は『マイケル・コリンズ』などでも組んだ盟友ニール・ジョーダン。ダイアン・クルーガーとは『アンノウン』以来、ジェシカ・ラングとも『ロブ・ロイ』以来の共演。
一度演じてみたかったと語るその役は、超有名キャラ。
レイモンド・チャンドラーが生んだフィリップ・マーロウ。
これまでハンフリー・ボガートやロバート・ミッチャムらが演じてきた名探偵。日本で言ったら明智小五郎か金田一耕助か。
タフでダンディ。友情を重んじ、正義感強く、権力に屈しない。女にもモテる。THEハードボイルドの漢! リーアムにもぴったり。
ボギーが演じた『三つ数えろ』は昔見た事あり。ロバート・アルトマン監督の『ロング・グッドバイ』は有名。
しかし本作、チャンドラーの原作ではないとか。『ロング・グッドバイ』の原作『長いお別れ』の公認続編として別作家による『黒い瞳のブロンド』の映画化。
ちょいとややこしいが、リーアムが魅せる本格探偵ハードボイルドに期待。
1930年代のハリウッドの雰囲気は堪らない。
そこに映えるダンディな探偵、リーアム。
ファム・ファタールな美女にダイアン・クルーガー。その母で往年の大女優にジェシカ・ラング。何やら訳ありな母娘の確執。
映画スタジオで何かの“仕事”をしていた愛人。その何かに関わって…?
映画スタジオのスポンサーであるイギリス大使。依頼人美女と関係が…。
ヤク漬けの愛人の妹。元締めのクラブ支配人。愛人はそのクラブで“消えた”との情報が…。
ヤク絡みで、闇の実業家。事情通の運転手。
謎や怪しい人物が交錯。
設定やムードはとってもいい。美術や衣装や音楽にも酔いしれる。
が、致命的な残念点と言うか、決定打とも言える話の面白味やスリルやテンポの良さに欠けた。
ムードに酔いしれなければ、退屈かもしれない。
退屈しのぎのリーアムのアクションもナシ。
オチもちょっと物足りない。
愛人は生きていた。遺体は替え玉。
映画スタジオでヤクの情報を掴み、それをネタにスポンサーを脅迫しようと。
スポンサーと映画スタジオ。金、名声、地位を守る為、愛人は哀れ依頼人美女に始末される。
マーロウとも取り引き。やはり惚れてはならないファム・ファタールだった。
人やハリウッドの闇を描いてはいるが、今一つインパクト不足。探偵ミステリーの醍醐味である名推理のカタルシスと鮮やかさ、悲劇的な真相と動機などに遠く及ばず。
って言うか、マーロウがあんまり名推理してないような…。寧ろ、あの運転手の方が名推理!
期待してた分、ちょっと肩透かしだったかな…。
とは言え、せっかくの役に一回きりは勿体ない。興行・批評共に撃沈したが、もし次の事件があれば、もっとのエンタメ性と名推理に期待。
でも、その前に…
これにてここ近年の日本公開済みのリーアム映画は見たかな。いつぞや見てなかったのを“リーアム祭り”したし。
この後日本公開決定作品はまだナシ。何だか寂しい…。
ご安心を。待機や製作/企画中の作品はある。
全米では公開済みの『マークスマン』のロバート・ローレンツ監督と再び組んだアクション。一番気になる『裸の銃を持つ男』のリブート。そして『アイス・ロード』の続編。
楽しみに待ってるぜ、リーアム!