「すがすがしい」アナログ penさんの映画レビュー(感想・評価)
すがすがしい
果たしてひとはこんなに純粋になることができるのだろうか。
ファンタジーだよねと抵抗するあまのじゃく的な声がかすかに聞こえたのは聞こえたのですが、ラストでは涙を抑えることはできませんでした。多分そんなあまのじゃくな反論をねじふせるような力がこの作品にはあるように思います。
それは、今ではWEB会議やWEB飲み会さえあたりまえのこの時代に、携帯電話はおろか固定電話すらなく、連絡手段が毎週木曜日に「対面で」会うしかないという・・・それって明治時代かよ・・・・とツッコミをいれたくなる設定だったり、PCの3Dソフトではなく手作り模型を使って建築デザインを考えるこだわりであったり、母親の形見のすり切れたオーダーメイドバッグだったり。効率重視のデジタルの世界では、失われつつあるかもしれない、非効率だけど、ゆっくり発酵させるような、人やものとの丁寧なやりとりで紡がれ、うまれてくるもの(感情や愛情を含む)・・・つまり「アナログ」の良い部分と思える部分が満載なのです。
先日ラジオで作家の村上春樹氏が「デジタルでほんとうに便利になったけど、これでよいのかなと思う自分がいる」と言った趣旨のことを言っていましたが、私も含め社会の進化についていけない年寄りの繰り言かもと思いつつ、アナログにもよいとこたくさんあるよねとさりげなく、でも説得力ある形で提示された感じで、それがまたすがすがしいです。
それにしても、二宮の演技、波瑠の上品な美しさは素晴らしかったなあ。
良い作品でした。
コメントする