「ただの衝撃的なストーリーではない」ジョーカー フォリ・ア・ドゥ humさんの映画レビュー(感想・評価)
ただの衝撃的なストーリーではない
ジョーカーという仮面の下で自分の存在意義を叫んだアーサー。あの5年前もそうだった。
音楽と共にある時、彼は内面にひとり向き合い心酔しのびやかに踊った。
その姿は、負にひきずられそうな彼に音楽が呼応しながら何かを与えているかのようにもみえた。
それは例えば、惜しみなく手をさしのべ抱きしめ肩をたたき鼓舞する肉親だったり、さらけ出した感情を互いに享受する友や恋人のような役割だっだのかも知れない。
そうやって生き延びてきた孤独なアーサーの心情を追う今作にも、寄り添う歌やダンスのシーンは欠かせない深い意味があったのだと私は思う。
彼が音楽を通じ出会ったリーは、アーサーにとって類いなき魅力を放つメロディであり、リズムでありハーモニーになった。
文字通りそれを〝魅せる〟シーンでアーサーが、曲がった権力に諦めていく日常も、法廷で砕かれ散った母との思い出の言葉も、恐怖心を友に与えてしまった過ちも、彼女の存在があれば不運を分かち合い変わっていく未来を信じられたのが伝わってくるのだ。
悲しいかなその愛の歪みを知ることになるまでは。
ジョーカーは「あの日」から屈折した世界の眩いライトを浴び冷たく重い足枷だけをアーサーに遺したまま別者として動きだしていた。
そしてようやくみつけた心地よい愛が彼から消え去ったあと、もう1人の自分こそが取り返しのつかないほどに強大な力で自身に刃をふりかざしてくる相手だったとわかる。
そのリズムの波も、安らぎのメロディの風も、心を震わすハーモニーの温かさも霧の向こうの幻に。
popなアニメの冒頭〝Me and My shadow.〟がこんなにも苦しい意味だったなんて。
予告のイメージを遥かに超えたこの顛末、それを続編に掲げた意図とは。
愕然としながら、この瞬間も澄んだ目たちがみるものに心を沿わせる。
「虫も殺さぬ優しい少年だった」という彼の変貌。
未来を助けるチャンスはどこにどうあったのか。
この頭にずっとあるアーサーの最期の心の声がするエンディングと法廷のレンズ越しに突き刺してきた哀しみを宿したままの眼光。
それらにはきっとヒントがあるような気がしてならない。
憑依するMe and My shadow、ホアキンの全身全霊が物凄く苦しいアーサーをそこに呼ぶ。
ガガも凄まじい魅惑のキャラを思い切りぶつけてくる。
そうして「ジョーカー フォリ・ア・ドゥ」は、ジョーカーとなった男、アーサーの心を描いた。
これはただの衝撃的なストーリーではなかった。
訂正済み
映画はできるだけ前情報なし、出来れば予告動画も観ないで観たいと思っていますが、この映画は「ミュージカル」ということだけ知っていた方が良さそうですね。
前作の圧倒的なカリスマ的な悪に惹かれてしまった私は、続編を知った時にゾクゾクして楽しみにしていました。
そんな期待をしてしまったので、私には違う衝撃が凄かったです。
公開1-2週は評価も低かったですが、上がってきましたね。名作なのだと思います。
humさん
コメントを頂き有難うございます。
ガラス越しに見つめ合うシーン、とても素敵なシーンでした。
アーサーになりきって演じたホアキン・フェニックス。オンオフをどう切り替えていたのでしょうね。
ふと気が付けば、アーサーの意識になっていた、なんて事もありそうですよね。
コメントありがとうございました♪😊見ようによってガラリと変わる評価な作品でした。脚本そのもので観ると良作、基本 勧善懲悪のバットマンシリーズとしてみると外伝も外伝、違和感が優ってしまうのでしょうね!
こんにちは。
コメントありがとうございます。
冒頭のアニメーションから、影の方がアーサーだ!と伝わってきて哀しかったです。
アーサーの影が身体を通った感覚?哀しみが伝染しましたよぉ泣
アメコミの"ジョーカー"を知らない身としたら、前作と本作で表現された"ジョーカー"が悪のカリスマになんて見えなかった。
ただただ、アーサーが可哀想でした。
アーサーとしての物語であればいい作品だと思います。
だけど、自分の中で出来上がっているジョーカー像を粉々にされたように感じてしまって、受け入れるのは難しいですね。
共感ありがとうございます。
レビューを読ませて頂きこの作品への受け止め方が全く変わりました。
表面的な私の観方が恥ずかしくなりました。
素晴らしいレビューに感謝です。
humさん、共感&コメントありがとうございます。冒頭アニメの考察に納得です。なるほど!と映画への理解が進みました。
シャドウは、世間から決めつけられているイメージ、世間が期待しているイメージ両方にも感じられました。それが最終弁論でのカミングアウトにつながるとしたら、本当に一筋縄ではいかない映画でしたね。ありがとうございました。
おはようございます!
今作面白かったですよね。
「死刑求刑」というワードが出てるなかリーとの出会い、先はないかもしれないとJOKER自身も分かってるけれど、閉鎖施設内で見えた一瞬の光、リーのホントの心情は分からないけどJOKERにとっては彼女は光でしたよね。
そんな一瞬でも心が踊るJOKERとリーの歌にはやられました。
おはようございます。本作の意図をくみ取れず、「ジョーカー」というキャラクターに心酔し彼が暴れる姿を見てカタルシスを得ようとした観客は、まさに劇中アーサーに対して彼自身でなく、彼の作られたキャラクターに酔いしれる大衆の姿と被るものでしたね。
今回の続編は「ジョーカー」というキャラクターを完璧に描いたものとして私は高く評価しました。
アーサーは悲劇のうちに亡くなりますが、ジョーカーから解放された彼の心は安らかなものとなったはずです。そして現実社会はこれからもジョーカーに翻弄されるのでしょう。
イイねありがとうございました😊おっしゃるとおりですね共感。皆さん 低評価の方は 表層的すぎます🎯。影のマンガ 法廷で持ち出さなくてもイイじゃないか『母親』『真の親友への恐怖心』極めて真っ当な続編 後編でした。激しく同意です。
ただ 個人的に蛇足ですが・・映画は気晴らし娯楽なので 違う見方否定的の方もそれはそれでありですね。感想は何でもあり🆗
勉強に📚なりました。ありがとうございました😊😊
humさん、コメントありがとうございます。冒頭アニメのは "Me and my shadow"という歌(シナトラ?)なんですね。知りませんでした。もうここでこの映画のテーマが提示されていたんですね。教えて下さってありがとう。humさんのコメントに心から同感して共感しました。どうもありがとう