「前作の凄さを再認識」マッドマックス フュリオサ キレンジャーさんの映画レビュー(感想・評価)
前作の凄さを再認識
私のオールタイムベストの一本である、前作「怒りのデスロード」。
その続編と聞けば、嫌でも期待値が上がってしまうのはしょうがない。
前作のキャラクターたちもたくさん登場するし、関連する小ネタも多い。
スピンオフである以上、前作観ずにこの作品だけを観るってのはさすがに無謀だろうな。
前作は、ほぼ2時間ずっとハイカロリーな激走・激突・激闘が繰り広げられただけでなく、「行って帰る」という物語のシンプルさに反して、ここで初めて見る文化や風俗・自然や宗教的な世界観のすべてがとにかくカッコ良かった。
今回はそれがベースなので、カーアクションなどは武器や空中戦などの新たな要素もあったが、この世界全体には特に大きな改変があるワケでもないって考えると、さすがに前作とそのまま比べる…ってのはちょっと申し訳ない。
でも、そういう「初めて見る驚き」「根拠の不明な独特なルール」を伴う、前作で感じた新鮮味を伴う感動はやはり本作には少ない。
加えて、言ってみれば今回は「フュリオサの復讐」が一つのテーマである以上、敵役のクリヘムをもっと極悪人に仕立て上げるべきではなかったか。
確かに今回の「ディメンタス」は、言うこと・やること・態度含めてクズ野郎なんだけど、あまりにアホ過ぎてコメディっぽく受け取れるシーンも多く、どちらかというと彼の持って生まれた愛らしさと相まって、最後の決着にカタルシスがあまり感じられなかった。
そして、戦闘モノに絶対大事なのは「魅力的な敵」。
イモータン・ジョー側に前作のキャラクターが多く登場する割に(当然ここで死なせるワケにいかないとは言え)あまり具体的な活躍はなく、ディメンタス側の敵はキャラクターが弱くて活躍も淡白だったのが残念だったな。
十分娯楽映画としては楽しいし、今観ておくべき作品。上映の2時間半なんてあっという間なんだけど、この作品を振り返る度に、「『怒りのデスロード』って、どれだけすごい作品だったか」という感想に結局至ってしまう。
偉大な父を持つ子供の苦しみ…ということですかね、これは。
繰り返しますが、それでも観るべき映画です。もちろん映画館でどーぞ。