劇場公開日 2024年5月31日

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「悪の軍団同士の「戦争」が描かれなかったのは物足りない」マッドマックス フュリオサ tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5悪の軍団同士の「戦争」が描かれなかったのは物足りない

2024年5月31日
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物語の前半に疾走感が感じられないのは、フュリオサの目的が、「帰郷」なのか、「復讐」なのかがはっきりしていないからだろうか?
フュリオサが、新造されたウォー・タンクの下に潜んでいたのは、おそらく脱走して、故郷に帰ろうとしていたからだが、はじめは、彼女が何をしようとしているのかが分からないため、せっかくのアクション・シーンにも、すんなりと入り込めなかった。
その、ウォー・タンクとバイク軍団の攻防にしても、パラシュートやハングライダーを使った空からの攻撃も加わって見応えがあるものの、逆に、それ以上の新鮮味はなく、「スタントマンに死者が出ているに違いない」と思われた前作ほどの迫力は感じられなかった。
いずれにしても、最初から最後まで、「帰郷」という目的が物語を牽引することはないのだが、それは、今回、フュリオサが故郷に帰ることはないと分かってしまっている前日譚としての本作の弱点でもあるのだろう。
「復讐」という目的にしても、ディメンタスは、確かにフュリオサの母親や師匠の仇敵ではあるのだが、イモータン・ジョーのように、圧政を敷いて人々から搾取したり、若い女性を集めてハーレムを作ったりしている訳ではなく、極悪非道な暴君というイメージからはほど遠い。それどころか、クリス・ヘムズワースのキャラクターのせいか、「善い人」に見えるところもあり、憎むべきヴィランとしては「今一つ」と思えてしまう。
それでも、そんなディメンタスを、復讐の炎に燃えたフュリオサが追い詰めるくだりは、本作のクライマックスとして盛り上がるのだが、その直前にあったと思われる、「砦」に攻め入ったディメンタスをイモータン・ジョーが撃退するシーンが、そっくりそのまま省略されているため、ここでも、当初、何が起こっているのかが分かりづらいのは残念だ。
何よりも、ディメンタスのバイク軍団とイモータン・ジョーのウォー・ボーイズが激突する大規模な戦闘シーンは、本作の大きな見所となったはずなので、そこは、制作費をケチらずに、しっかりと描いてもらいたかったと思う。

tomato