「極少台詞がよい! 映像で語る作品♪ ★4.2」マッドマックス フュリオサ レオンさんの映画レビュー(感想・評価)
極少台詞がよい! 映像で語る作品♪ ★4.2
アクション映画は映像で語れ! を教えてくれる作品。 極端に少ない台詞と状況描写で、緊迫する物語を進め、2時間半で気を抜けるシーンは皆無だった。
流石、老齢のジョージ・ミラーが脚本も自身で書いているのが伝わる。 アクションをド派手に壮大にするのではなく、いかにリアルにその行動の心理を、言葉でなく、映像で伝えてる。
序盤、何気ないシーンだが心を打った描写があった。
掠われた少女(フュリオサ)を母親と仲間が追うシーンで、二人のバイカーを狙撃した母親は、仲間に私一人で追うと伝え、側にいた仲間(肉親?)に額を合わせ、言葉を唱える。
誰もがそんな暇があったら、早く追わないと手遅れになると思ってしまうが、その後の過酷な状況を観て、振り返れば納得する。 複数の無法者から娘を奪還するなど、命を落とす確率の方が高い。 命を掛けるのは母親である自分一人で十分と、身内に止まらせ、最後の別れをしたのである。
おそらく年期が入ってない監督や脚本家なら、そんな描写はスピード感を損なうと、カットしているだろう。 が、その後の母親の壮絶な決意を知ると、そのシーンが生きてくる。
アクション作品でも、その時点で登場人物の心情が描写されてなければ、ただのスタントショーになってしまう。
今作ではこの母親や、
フュリオサ(少女時・アニャ時双方とも)の怒りを押し殺しチャンスを伺っているという様な強い信念が伝わる。 (アニャの強い眼力も相当貢献している)
そして成長した後、力量を認めてくれ、女性?とバレるシーンでもその訳を聞かず自分を信頼してくれた、タンク運転する警護隊長ジャックとに絆が芽生え、あの母親と同じ、額を合わせるシーンが。
ただ仲間だから助けるのでなく、命を掛けてまで助ける価値がある者だという事を、あの描写が語っている。
普通なら二人の台詞であれこれ説明するだろうが、この額を合わせるシーンが一瞬でその代わりをしてくれ、やはり映像で語る脚本である事が伝わる。
物語全般では前作の方が起承転結に富み、まとまっているが、主人公の信念や精神性は今作の方が深く描写されていると感じる。
勿論、魅せ方も巧い。 下手な監督ほどズームが多く、しかも早いカット割りで、何がどう動いたのか目で追えない様な描写をしている場合もある。
が、本作ではバイク軍団が巨大な崖の下を、まるで "無数の蟻の大群" が動いている様に見えるほど、かなり引いたシーンもあり、遠近を巧く描写している。
アクションシーンは攻守とも移動しながらの戦闘は前作同様も、以前にないアイディアも多数盛り込まれ(特に空中からの攻撃)飽きさせない。
そしてひとつ気付いたのは、エグい殺戮シーンは描かれてない点。 これはR指定を回避する為か、そこまで描かなくても十分堪能してもらえるはず、という大人なミラー監督の判断なのだろう。
演者的に私は、母親役のチャーリー・フレイザーが出演時間は短いが、一番目に留まった。 あの迫真の表情が今作を序盤からシリアスにさせた。
ヘムズワースは、ソーの様な高潔さは失せ、稚拙な悪党にしか見えず、恐らく出演者を予め知った者しか、当人と分からぬほどと感じる おまけにいつもの野太い声ではなく、より高い卑しい声に聞こえた。(それだけこの役に徹したなら、むしろ褒めるべきだが)
アニャ・テイラーはその眼力で、存在感はシャーリーズ・セロンに劣らない。 が、セロンは訓練して格闘シーンでも男性に負けない、頼りがいのある存在だったが、アニャはか細いままで、近接での格闘シーンはなかった。 (恐らくアクションの為の筋トレなどはしてないかも・・。 が、セロンは「アトミック・ブロンド」出演時には歯を折るぐらいの訓練を積んでいた)
あと前作に出演したイモータン側の手下は勢揃いなので、前日譚だが、「デスロード」も観ておいた方が、各キャラの登場時に印象が全く違うはず。
前作(★4.3) より私評価の★は 0.1 下回るが、私的には期待を裏切らない出来!