劇場公開日 2024年12月27日

「正統派の物語アニメーション」ロード・オブ・ザ・リング ローハンの戦い sokenbiteaさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0正統派の物語アニメーション

2025年1月5日
iPhoneアプリから投稿

大して期待せずに見に行きましたが、見て正解でした。
きちんと作られた、正統派のアニメ作品で、とても楽しめました。

低めの評価のレビューが目立ちますが、確かにどこに向かってボールを投げてるんだかわからないようなところがあって、指輪物語のファンが喜ぶようなネタが山ほど盛り込まれているわけではないかもしれないです。
見たことのないような新しさや、どんでん返しや泣ける要素があるわけでもなく、派手な映像美がふんだんにあるというわけでもないです。
ただ、少なくとも自分としては、アニメーションにもストーリーにも演出にも音楽にも、残念なところは一つもなかったです。
全てが手抜きなく、丁寧に作りこまれたものだと感じました。

キャラクターも良かったです。古典的とも言える正統派のデザインながら、いかにも狙ってる風のあざとさを全く感じなかった。
それでいて、それぞれにちゃんと命を吹き込まれた魅力的なキャラクターになっていて、ここまで王道なのにこれは何気にすごいと思う。
あからさまな特徴を持たせていない分、一見地味にも見えるのですが、見ていくほどに実在感が増して、それと共にじわじわとキャラクターに惹かれていきました。
アクションも大仰な派手さはなくとも、素晴らしかったです。
ヘラとウルフの戦闘は、まともに剣同士で戦うシーンとしては今まで見た中で一番かもしれません。

ストーリーは俯瞰してみると、ウルフの身勝手な復讐心に振り回されてるだけとも言えて、そこを指摘しているレビューもあったりするのですが、それを言うなら、突き詰めて考えたときにバカバカしくならない戦争の理由なんて、あるのでしょうか?
くだらない原因が発端で、そこに色々な思惑や打算や事情が積み重なって、のっぴきならない状況に追い込まれていく。
世の中の争いごとはそもそもそうしたものかと思います。
それに抗って生きるようとする、真っ当な意志。
それがこの映画で描かれているものなのではないかと思います。
それを感じることのできる優れた作品だと自分は思いました。

sokenbitea