「戦争前夜」ロード・オブ・ザ・リング ローハンの戦い おひさまさんの映画レビュー(感想・評価)
戦争前夜
ロード・オブ・ザ・リングのファンは観て面白いと感じられる佳作です。主役のヘラ王女役の小芝風花さんの演技はなかなか良かったです。
ただ、私の映画を観たファーストインプレッションは、「なんだこれ?もしかしてAI作品?まぁまぁ面白いけど…」でした。そういう監督や脚本家の熱を感じない、とても人工的な印象を受けました。
正直に言って、CGアニメのバイオハザードよりも人工的な印象を受けました。
ロード・オブ・ザ・リングの外伝的作品。
作中に詳しい説明が無いので分かりづらいが、ロード・オブ・ザ・リング本編の一つの指輪をめぐる大戦の前夜を描いた物語。
騎馬民族の人間国ローハンは、強い英雄であるヘルム王のもと、平和で堕落した中央貴族、勢力を増す辺境領主、隣接する文明国で大国のゴンドール、という状況。
蛮族と血のつながりもある辺境領主は中央から一段低く扱われていたが、勢力を増し、国王の唯一の姫を息子の嫁にと強気に要求する。
だが、ヘルム王は大国のゴンドールからの求婚があり、権力欲をみせる辺境領主の申し込みを一蹴する、という所から事件が起こり、内戦へとなっていく。
ここでロード・オブ・ザ・リング的に注目すると辺境領はモルドールとも接する地域であり、サウロンの闇の影響を受けていたのでは?という点です。
ウルフの妄執のような復讐心もそうですし、その発端となったフレカ領主も簡単に死にすぎる。ウルフはまるで幽鬼のような…。
作品後半には「指輪」を探して人間の死体を食らうオークなどの魔物が少し姿を見せます。
おそらくサウロンの魔の手が少しずつ伸びてきて、中つ国に暗雲がたちこみ始める、という所が描かれていきます。
というわけでロード・オブ・ザ・リングのファンには面白い作品だと思います。
一転して初見やライト層のファンには分かりづらい、こじんまりとした作品だと見られるだろうな、とも思いました。
中世ファンタジーの王道な展開の王道なストーリーで面白いのですが、2回は見ないかな、というストーリー。
アニメーションとしては、人間の演技をモーションキャプチャーしてCGアニメとして作り、それを日本的な手描きアニメに変換するという、珍しい手法が採られているのだが、それが失敗していると思います。というのも、これは私個人の感想ですが、全体的にアニメがぎこちないのです。動きに滑らかさが無く、なんだかギクシャクしているし、背景からも浮いて見える。
キャラデザも韓国の有名な方を起用した、との事ですが、なんというか美麗すぎる、中華作品的な印象を受けました。
戦闘シーンもきれいではありますが、迫力が感じられない、物足りなさを感じました。
これは神山監督が悪いというよりも、おおもとのハリウッドの資本の問題だと思います。有名な日本の監督、有名な韓国のアニメーター、ハリウッドのスタジオとスタッフ、という寄せ集めできれいにまとめただけの作品と感じました。
ロード・オブ・ザ・リングのファンには良いが、一般的にはヒットしないだろうな、と思いました。原作では姫がいるとだけで描かれないキャラを主役にしたのは面白いと思いますが、なんというか、それだけという感じもしました。