夜明けのすべてのレビュー・感想・評価
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日常を重視した新たなリアリズム
こんな映画を私は待っていた。
先日、職場の同僚(群発頭痛持ち)からこの作品を勧められ、私(腸過敏性症候群持ち)は久しぶりに映画館へ出かけてこれを観た。鑑賞後、とても心地良い感動を得ることができた。さらに、いろんなことを考えるきっかけにもなった。その同僚に感謝したい。
私はこの映画を観ている途中から《小津安二郎》《定点観測》そして《ネオ・レアリズモ》というキーワードが頭の中に次々と浮かんできた。
まず、三宅監督と撮影の月永氏による《やや低めで近めの画角》と《ごく自然な感じの構図》のカメラワークに注目した。その技法は、観る者がまるで登場人物とその場に一緒にいるかのような感覚にさせてくれて、人の心の機微を映し出すためにとても効果的だった。さらに、16mmフィルムによって温かみのある映像に仕上げたこともその効果をより一層高めた。小津安二郎に勝るとも劣らない絶妙なカメラワークであると思うのは、私だけだろうか。
また、栗田科学という会社を一つの定点にして、登場人物たちの交流が《定点観測》によって柔らかな雰囲気の中で見事に描かれていた。その描き方は、NHK 『ドキュメント72時間』を彷彿させる。特別な人々ではなく、ごく普通の市井の人々の心の中にこそ、それぞれの様々な人生の物語があるということに改めて気付かせてくれた。
さらにこの物語は、市井の人々の日常で始まり、劇的な展開もなく、モンタージュ技法等を用いた過激な演出もないまま、日常で終わる。そのような穏やかなストーリーにも関わらず、観終えると思わず涙が出る。私は、ネオ・レアリズモの代表作であるヴィットリオ・デ・シーカ監督『自転車泥棒』を思い出した。市井の人々の日常を重視した新たなリアリズム“Neo-Daily Realism”をこの作品によって三宅監督は生み出したのではないだろうか。藤沢さんが山添くんに譲った白い自転車を思い浮かべながら、この作品は新しい映画の夜明けだと私は確信した。
鑑賞後に同映画のパンフレットを購入した。そのインタビュー記事の中で、私が強く共感した次の言葉を引用したい。
「大げさなことじゃなくても日常にも素晴らしい瞬間がある」(三宅監督)
「外に出た時、見える風景がすべて、自分にとって出会えてよかったと思う風景に変わっていく」(松村北斗)
とても充実した内容のパンフなので、是非購入をお勧めしたい。
最後に、藤沢さんが山添くんの髪を切るシーンなど、絶妙な距離感でさりげなく助け合っていくという、難易度の高い役柄を見事に演じた上白石萌音と松村北斗の演技力に心から拍手を送りたい。
私にとっては大切になった時間
誰もが同じ気持ちになる、そんな映画ではないように思えて。
逆にこの映画でしか受け取れない独自性は、その芯に確固たるものとしてある。
そんな印象を受けました。
淡々とした生活の中でも、それぞれに生きづらさを感じる所はきっとあるけれど、
それを他人と共有する場合もそうではない場合も、何か生きづらさを感じていることを
分かってもらえたら嬉しい。
社会の一員として存在するからには、さすがに個人的な事情や感情ばかりを
表に出すことはもちろんできないのだけれど、
それでもお互いに補い合うことが出来る。
理想論かもしれないけれど、それでもそういう世界が、存在していたなら。
物としての豊かさよりも、心の豊かさや人との繋がりを改めて温かく感じることが出来た
素敵な映画でした。
暗くなるテーマなのに全く暗くない
優しい映画
幸せに暮らすために
PMS(月経前症候群)という病気で突発的にイライラして、周りにあたってしまうヒロインを上白石萌音。彼女の同僚となるパニック症候群のイケメンを村松北斗が演じます。
初めは、お互いを理解できない二人ですが、徐々に歩み合い、一緒に会社のイベントを作り上げる。互いの病気のことも、性格も分かり、良き理解者になっていく。
じゃあ、この二人が恋人になるのか?というと、上白石は母親の介護のため、会社を去り、村松は会社に残る選択。特に大きな盛り上がりがあるわけでなく、穏やかな日常に戻っていく。
地味ですが、とても味わいのある作品です。二人が働く理科の教材を作る会社がかなり丁寧に描かれます。二人とも前の会社では、病気や発作のため上手く働けなかったのが、この教材会社では、周りの支えで認められて活躍する。だからこそ、二人の成長や幸せを築いた会社をちゃんと描きたかったのかな。
この二人の関係も、恋人でも家族でもなく、友情以上のおせっかいな関係。単純に言えば「助け合い」なのですが、こういう関わり合い方がかけているのかな、とも。
あと、あえて「病気」という言葉を使いましたが、元気いっぱいでなくても、幸せに暮らせる世の中でありたいですね。
相互理解には全人的な愛が必要
原作を読んで、パニック障害とPMS(月経前症候群)の男女が、お互いの病気を理解し合い助け合う様がとても印象に残った。男女いや人間は、お互い表面的に見せてる部分で良好な関係を維持しようとしがちだ。裏の部分はなるべく見たくない。その裏の部分で相互理解をするには、恋愛とか夫婦愛とかではなく、全人的な愛が必要なんだと痛感する。
映画では、松村北斗と上白石萌音のキャラが、この相互理解のモードに見事にマッチしていた。
脇を固める、ふたりの職場の社長役の光石研、母親役のりょうらも、そのモードを踏襲していた。
会社という組織においては、なかなかふたりの病気は理解されないだろうけれど、原作と同じくそこを暖かく包みこむ会社の存在があり、とても安らかな気分になれた。
人の痛みに寄り添うこと、人を理解すること大切さを感じさせてくれた、三宅監督の心優しき映像も、いつまでも心に残った。
優しくて、あたたかい
自分自身を受け入れて生きていく
観る度に違った印象を受けそうな作品
視覚効果が印象的な作品だった。日常がフラッシュバックするような、どこかで経験したことのあるような場面がいくつかあって
あれ、なんか知ってる、って感情に度々なる作品だった
映画のことは詳しくないので正解かは分からないけど、
繰り返しのBGMと情景描写が多くて、特に情景に関しては一点から捉えて景色をぼーーっと眺めているような感覚を与えた
そのぼーーーっという時間の中には、それぞれ何を考えるんだろう
観る人によっても違うし、観るときの心によっても変わってくるんだろうなと思った
そう言う意味で、何度見ても違った印象を受けそうな作品だなぁと思った
内容に関しては、私の感想は多分捻くれた間違いなのだと思うけど、率直に、病名ついてるのいいなぁ。って思った
病名がついているから人が心配してくれる、正当化できる、そこには辛さの反面、楽さがあると思うんだよね
私も自分をうまくコントロールできない
けど、それって単なる甘えであるし、やらないだけ、とも捉えられる
自分でもよく分からない。本当にできないのか、本当に辛いのか、
よくわからない
ただそれに正当な理由をつけてもらえることは自己肯定になるし、出来ることとできないことの見分けがついて生きやすくなるんだろうなぁと思った
その点で、いいなぁと感じた、
思えば、もしかするとあのとき苦しくなったこと、電車でうずくまったこと、訳もなく悲しくて泣いたこと、必要以上に人に当たったこと、
たくさん思い当たる節があったし、自分と重なる部分があった
けどその部分が果たして病気の部分であるのか、人間とはそういうものなのか、は分からないじゃない
私は結局いつまでも生きづらいままなんだなと悲しくなった
日常に隠れてるもの
他者には見えない自身が抱え続ける問題との向き合い方を、同僚たちとの社会生活の中で寄り添いながら過ごす何気ない日常を描く。
とても穏やかな作品で、多少なれどだれしも感じたことのある孤独感や疎外感といった日々の中に埋もれる寂しさと誰しもに起こり得る病を通して、日常に隠れてる喜びと大切さを思い返させてくれた。
絶賛な評価に期待してたわりには、、な印象 入りがナレーションとクレ...
絶賛な評価に期待してたわりには、、な印象
入りがナレーションとクレジットで映像に入り込みにくい感覚で、文字表記もあったりと思ったより病気の説明が強め。
主人公の挨拶しないとか歩きながらみかん食べるとか普段の行動が理解しづらかった。
エキストラがやけに目につく写り方してのも気になった。
病気の理解と共感が難しい色んな人がいるってことを知ることがこの映画の趣旨でもあるのかな。
後半は比較的一気に心地よく進んだ。
病状を緩和させるのは医者でも薬でもなんとか療法でもなく、理解し助けようとしてくれる"人"。
最近やたらめったら病名つけられるけど、病名は主張する物にならなければ、自分を安心させられるし相手に知ってもらいやすい良い物だと思う。
ちょっとできずきているかな?
PMSはとてもよくわかるし、自分もイライラして人に当たってしまって自己嫌悪に陥ったりとかあるので、
それとどう向き合って生きていくのか興味があってみに行きました。
パニック障害もわかりみ。一時期、電車に乗るのに緊張して心臓がバクバクしてやばかった時がある。
まあ、3駅だったから耐えたけど、長距離だとしんどいだろうなあ、、
パニック障害を持つ同僚が、本読んでPMSを分かろうとしてくれるのとかはとてもいい。
仕事中、様子見て外に連れ出したりとか、、
いくら自分がそうだからって、そこまでしようとする人いるのかな、、
私の元友達がADHDで、どういうものか知らなくていろんなことを知ろうとして調べたりしたし、分かろうともした。夜中にまでも電話に付き合った。
でも向こうは私の心の病気には寄り添ってくれなくて、そのままブロックされた。
現実はこんなもん、、
こんな周りの人がみんな理解してくれて、その中でうまくやっていくとか、夢の世界。
なので後半はちょっと冷めてみてしまった。
友情とも恋とも違うストーリーはよかった。
萌音ちゃんの演技もとてもリアルでした!
穏やかな気持ちになる
グループセラピー
主人公はお互いPMSとパニック障害を抱える美沙と孝俊。美沙は少々自意識過剰気味で職場の上司が女性にもかかわらず自分の病の相談もできずに結局は辞職する羽目に。孝俊も周りには自分の病気のことを話してない。
いまの職場では周りはそれとなく気づいてるけど特に過剰に心配などせず普通に接してくれる。それが二人には居心地よかったんだろうけど、美沙はやたらと職場に茶菓子を差し入れたりして気を使いすぎだし、孝俊にもおせっかいが過ぎた感じ。でもそんなおせっかいに孝俊も次第に打ち解け始める。
自分の病気のことをわかった風に言われて気分悪い、なんて思った孝俊も相手の病気のことわかってないなと気づく。そうして自分のことだけでなく相手のことも気遣えるようになる。
彼らの職場の社長や孝俊の前の上司はグループセラピーに通っている。皆、家族のことでつらい体験をしたため同じつらい思いをした者同士がそれをお互い吐き出すことで気持ちが楽になったりする。グループセラピーは互いの悩みを他人に話して共感しあい、相互作用によって傷ついた心を癒す効果があるという。
一人よりも二人、二人よりも三人。一人で悩んでいても何も解決しない。流れる水は腐らない、流れが止まった澱みはたちまち腐ってしまうというように人の心も同じ。一人で心を閉ざすよりも他人を受け入れて自分の心の中に新鮮な空気を入れてあげればいやな気分も押し流されていくはず。
美沙と孝俊はグループセラピーには通わないものの、二人の関係はまさにセラピーそのもの。プラネタリウムの企画を共同する傍らでお互いの病気のことやお互いのつらさを分かち合って、それで二人の心は楽になったんだと思う。
ゆっくりとした時間が流れる作品。周りは少しづつ変化してゆくけれど、けして置いてきぼりになんかなってない。自分は自分の人生の時間の流れの中で生きていけばいい。焦ることなく病気と付き合ってゆけば、いずれは肩の荷が下りるように楽に生きられるようになるはず。
美沙と出会ってから孝俊の表情が徐々に明るくなっていくのがとても印象的。
苦しい闇が続いても、夜明け前には優しい星が降り注ぎ、夜明けへすべて繋がる。
ヒーリング効果のようなもの
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