夜明けのすべてのレビュー・感想・評価
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ずっと心に抱きしめていたい「心のお守り」になる映画
ベルリン国際映画祭の方が「小津安二郎」と表現していましたが、まさにそうだと思います。
正直、この映画に、恋愛やハラハラドキドキの展開、全くなしと予告され、じゃあ何が楽しいんだ?と、不安な気持ちで観に行きました。
しかし!!この映画を観ていたら、恋愛やハラハラドキドキがなくても、映画館に観に行く価値のある「映画」があるとわかります。
最近流行りの、刺激的な商業的映画を欲してる方の方でも、この映画は大丈夫です。
むしろ驚くほど、ジュワっと心にしみると思います。
この映画には、人々の日常がドラマです。
みんなの日常がストーリーです。
心は変化するし、景色も変化する。
本当は「変化」ではなく「うつりかわる」という言葉が正しいのかもしれませんが、日々うつりかわる心と景色に思いを寄せられる、優しい映画です。
登場人物の生きづらさを押し付けませんので、今苦しい方も、そうでない方も、ずっと「心のお守り」にできると思います。
人を選びそう
病気を抱えてる人がどう苦難し、苦労し、一般社会からはじきだされ、
それでも周りのやさしさにも支えながら前を向いて生きていく、
それを淡々と描いたような映画。
何かすごい事件が起こったり、劇的な恋愛に発展するわけでもなく・・・
ある意味ドキュメンタリーに近く、
人によってはかなり退屈に感じてつまらないと思う。
それにしても登場人物に悪い人はでてこなくて、優しい人ばかりで
やさしさにあふれている。そういう意味で優しい気持ちになれる映画なのではないか
と思う。
主人公たちを受け入れられなかった人たち(最初勤めていた会社であったり、別れた恋人であったり)も決して悪ってわけではないんですよね。そこを悪として問題視するような描かれ方をしてなかったのはすごくよかったと思います。
プラネタリウムで上白石さんが読み上げてた文章がすごい良いことを言ってたと思うけど、
完全に他ごとを考えてしまって聞き逃してしまったのが個人的に悔やまれます。
一人で抱え込まないでほしい
障がいを抱える方の辛さが
垣間見られた映画でした
今後、もっとオープンにしてもらえれば
この会社のようにみんなで助けあっていける社会ができるのではないかと感じました
三宅唱監督は「ケイコ〜」同様とっても良い
主演のお二方もとてもナチュラルでステキでした
精神的
な病は、第三者に伝わらないだけに、辛いですよね。最近は人との関わりが薄い時代だから、余計に知らん顔されるし、頼る所が無いしで、特に大変ですね。自分が一番楽にいられる場所が見つかればそれが一番ですね。主役二人の演技は良かったですが、特に上白石萌音さんは、平穏な顔から、急にスイッチが入った様に豹変する演技は良かったです。
男性の自分にとって衝撃。でもそれだけではない暖かい作品
女性特有の問題、なんとなく把握はしてたけれど、そこまでだろうと思っていた。
男性の自分にとってはわからないけれど、上白石萌音の急変する演技で、衝撃を受けてしまった。自分の理解のなさとそのような環境に出会ったらどうするだろう、と。苦しんでいる姿をみるとこちらまで辛くなってきた。
パニック障害の山添とあいまり、作中、いつ発作が起こるのだろうと、ハラハラしながら魅入っていた。
ただ、病気(と言っていいのだろうか)はきっかけであり、作品としては日々の豊かさであったり、助け合いだったり、優しく暖かい日常が描かれる。
辛さが誇張されることもなく、三宅監督特有の暖かさからくる、音楽と映像、周りの人物全体が見守ることで、とても良いバランスになっていた。
大きめなスクリーンで観たが、フィルムで作られているので、中小のスクリーンでみるのが味があってよいかも。
松村北斗の演技の新味を評す。
松村北斗の新味。
普通人の普通量の正義を何処か内包する気配。
きのう何食べた?からの有望株。
都会大企業でなく地方中小なら
時間空間の余裕と人情味アリ(ホンマ?)
と語るに最適の物語サイズを評す。
自他の欠点や苦手と生きる、か。
それを静かに体現する渋川清彦がまた良し。
こんな会社が理想
2024年劇場鑑賞30本目。
本編後舞台挨拶中継付上映なのでとりあえず最初のハードルはクリア。まぁ取材陣を入れていたので結局ネタバレができませんでしたが、その中でも本編の裏話をなんとか入れてくれていたので良かったです。
内容知らずに観に来たのですが、とにかく女性の観客しかいなくて、自分の視界は全員女性なくらいでなんか大丈夫かな、とファンになりましたが、生理の時に攻撃的になる病気の女性と、パニック障害がある男性が同じ職場で働いているという話。社長や、男性の元上司が優しいのですがそれぞれ事情があり、その事情のために上司同士でつながっていて、困っている人を暖かく見守ってくれています。
自分も障害者の施設で働いていて、職員の方にもなんらかの障害があるのではないかと思える人がいたことがあります。妄想がすごくて、明らかにそんな話をしていないのは自分もそこにいて知っているのに、あの人がこんな事を言ったと自分に言ってくるようなことを繰り返して、結局退職しなくてはいけなくなりました。その人の親も含めてその人に障害があることを認めておらず、そうなるとこちらも表立ってフォローできなくなるので本当に残念でした。
主人公たちの働いている会社は社員一同何かあったときに支えてくれるのが本当にすごくて、自分の時はそうはならなかった。早くあの人をやめさせてくれという意見を抑えられなかったのが残念でした。
まぁはっきり言って恋愛映画ではなく、だったらいっそルックス的にもっと地味な人をキャスティングしたほうがわかりやすかった気もしますが、是非みんなに観て欲しいから満点です。こういう病気はだれでも突然起こります。
プラネタリウム(天文)の分野が雑に過ぎる
今年60本目(合計1,152本目/今月(2024年2月度)13本目)。
(ひとつ前の作品「ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ」、次の作品「風よ あらしよ 劇場版」)
この映画自体は原作があるので、それを無視することはできない状況です。
一方、この映画の「主軸となる見方」では、PMSやパニック障害の当事者に対する接し方などが論点になってくると思うのですが、もう一つこの映画では主人公が務めている科学系おもちゃ等の製造の中小企業という前提から、いきなりプラネタリウムや天文の話に飛ぶという「飛びよう」がすごく、そこは一定知識があると???という部分は否めません。
一応にも趣味が天文観測であるのでこの部分はかなり気になったところです。映画の感想自体は多くの方があげられているので、感想というより上記気になった点をメインに書いていきたいと思います(あらすじ自体は多くの方が書かれている通り)。
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(減点0.4/天文に関する描写が不用意だったり、配慮が足りない(個別につき下記)
・ 後述しますが、2023~2024年の映画で、「サブ筋として」プラネタリウムや天文(星座ほか)の話が出る映画としては極端にマニアックな話題が出るかと思いきや、ちゃんと拾っていると???な部分が多々あり、ここは配慮ができなかったのか、と思います。
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(減点なし/参考/ベテルギウスまでの距離)
・ 映画内では「500光年」としてストーリーが進みますが、日本の科学館(博物館、プラネタリウムを併設する施設ほか)では、450~700光年と資料がバラバラです(どの観測結果を引用したかによって異なる)。この点、「一説によれば」の一言がほしかったです。
(※) 似た事例に、NHKアニメの「ふたつのスピカ」において、アニメ版は「スピカまでの距離は約350光年先」とあったのに対し、のちのコミック版ほかでは「当時の知見であり、現在では250~300光年とされる」と書かれたものがあります(同アニメの公開時期と現在とでは、こうした配慮の有無については当然差はあるもので、ここに触れていないのがかなり厳しい)。
(減点なし/参考/「なくなって(墓場ではなく)天に上る星座」)
・ 映画の中では冬の星座の一環として、オリオン座とふたご座が示されていますが、そうであれば「ぎょしゃ座」もそうであるはずです。
(減点なし/参考/移動式プラネタリウムの描写が不十分)
・ 移動式プラネタリウムなのである程度色の表現に限界がある点理解はしますが、オリオン座のリゲルが真っ赤に表示されていたり、そのすぐ近くに比較的明るい星が描写されていたり(この星は、エリダヌス座の「クルサ」で3等星)、やや変な部分が多々あります(かつ、この映画はエンディングロールで示される通り、科学館等がクレジットにあがっているので、そこが何か言わなかったのかという気もする)
(減点なし/参考/うみへび座のアルファルドの扱いについて)
・ うみへび座は全天で最も広い星座で、そこに2等星のアルファルドがあるため「孤独なもの」として描かれているのですが、星空を見上げても星座境界線等が実際に見えるのではなく(描かれているのではなく)、星座を問わなければ近くにレグルス(1.4等星)などがあります。
※ なお、うみへび座は一般に春の星座とされますが、ある地点から一周ぐるりと見渡したときの360度のうち220度を占めるほど「横に長い」星座なので、実際には「どの季節でも見える」星座です。
※ また、「うみへび座」と「みずへび座」の混同が多いので注意です(後者は日本では沖縄でしか見えない。
この先もずっと観続ける作品
泣くことで映画の良さ、評価とはしたくないけれど、終始涙が止まらなかった。
日々感じてしまう生き辛さに優しく穏やかに自然に、寄り添って希望をそっとみせてくれる作品。
山添さんは元々上昇志向が強く、知らず知らずのうちに自分を苦しめていた。しかし心身を壊してもなお上昇志向は残っているが、上昇志向とはまた違ったベクトをみつける。いまの環境に愛着をもつ、言葉にするとありふれているが、わたしにとってすごく理想的な仕事の仕方をみせてもらった。
どうしても抗えないこと、生き辛さはあるけれど、それでも、そのままでいられる場所がある。きっとその人にとって生きていける場所がある。人と人がそっと支え合う温かい場所で生きていきたいと思った。職場の人たちがみんな過剰に仲良いわけでもなく、でもお互いに思いやりがあり、社長や【おばちゃん】的な雰囲気を放つあの2人のような大人に、自分もゆくゆくはなっていきたいと思った。
日常の中で苦しくなったとき、なにかに迷ったとき、この映画をまた観たい。
そんな私にとってのお守りの映画がまたひとつ増えた。
これで、またきっと生きていける、無理なくそう思わせてくれるずっと大切にしたい作品でした。
本当に素敵な作品をありがとうございます。
日常が淡々と流れていくようなそんな映画
自分が障害者支援の仕事に関わっていることもあり、まだ私自身も過去にPTSDを患ったこともあるため予告編で内容が気になり見てみました。
内容的にはパニック障害とPMSを抱える男女それぞれの生きづらさがありながらもお互いを少しずつ理解し、さらにそこに関わる人や環境が映し出されていき、特に大きな展開や事件が起こることもなく淡々と日常が流れていくような映画に感じました。主人公2人は互いに生きづらさを抱えながらその中で辿り着いた小さな会社はみんな優しく接してくれて受け止めてくれて、以前の会社の上司もそれを見守ってくれて、でもそんな会社の社長や以前の会社の上司も実は過去に大事な人を亡くした大きな悲しみを背負っていて、それぞれみんな何かを抱えながらそれでも少しずつ自分や相手を理解し歩み寄って生きているんだよなーとなんとなくそんなことを思いました。作品の最後的にもわりとぼんやりで2人が結ばれハッピーエンドみたいなわかりやすいものではないけど、なんかたまにはこういう映画見るのもいいよなと思いました。若干、シーン的にこれはアドリブかな?と思うとこが気になりました、松村さんがばっさり髪切られたとことか!まあ、ぜひ見てみてください!
温かなまちの住人たち
この映画の中で何か劇的なことが起こるとか、ハッピーエンドが訪れるとか、そういうことはないけれど、人生の希望を諦めてしまったかのような、無関心をまとった表情から力みが抜けていき、うっすら微笑みが浮かんだり、柔らかな眼差しになったり。
そんな変化を見守ることができる、本当に素敵な映画です。
じんわり優しくなれる映画
待望の三池監督作品。淡々と流れる普通の会社の日常と少し特性のある若手の社員2人の物語。登場人物全てが優しくて刺激が強い映画が多いこの頃、久しぶりにほっとする映画を見たなぁと言う感じだった。
それにしても脚本が本当に素晴らしい。近頃ドラマでも映画でも原作と意図の違う変更を問題視されてるけど、この映画は原作と違うところはあってもちゃんと根っこを理解してるから原作ファンもすんなり受け入れるだろうし、観終わった後素晴らしい感動をくれる。
特に派手な演技や音楽が無くても観てるうちにいつの間にか涙が流れてた。
俳優陣も素晴らしくてキャスティングした人に賞をあげたい。ありがとうあなたのおかげで素敵な実写の藤沢さんや山添くん栗田社長に会えました。
一つだけ言わしてもらえるならばクイーンファンの私はボヘミアンラプソディのくだりも入れてくれると嬉しかったなー
自分ではどうしようもないことを受け入れるということ
キネマ旬報1月号で監督のインタビュー記事を読んだこと、原作者が瀬尾まいこだということで、観ようと決めていた映画。原作小説は未読。公開日2024年2月9日に鑑賞(2024年劇場鑑賞4作目)。
物語は、治療の難しい「上手く付き合っていくしかない病気(症状)」を抱えて生きる若い男女(山添くんと藤沢さん)の交流を軸に穏やかに、ゆっくりと展開していく。藤沢さんと山添くんが出会って、関わるうちにお互いを受け入れて成長していくというストーリーかと想像していたが、どうやらそう単純な話ではないようだと途中で気づく。
2人の周囲には、近親者を自死で亡くした人、介護を必要とする人(藤沢さんの母ら)が登場する。何故そういう人たちが登場したのか?。見終った後しばらく考えていると、タイトルの言葉が浮かんだ。
難治の病、老い、身内の死。自分ではどうしようもないものを抱えて苦しんでいるとき、心で寄り添ってくれる人がいると、そうした受け入れ難いものを受け入れて生きていく大きな力になる。そういうことを原作者と監督は言いたかったんじゃないのかな。
三宅監督のインタビュー記事によると、原作とは舞台設定が異なっているらしい。栗田科学というプラネタリウムを作る会社は原作には登場しないようだ。星の話、宇宙の話が出てくるので、星空が重要な意味を持っているのかと思い、星空がどこで出てくるのかを待っていたのだが、終盤にプラネタリウムの星空がちらっと出ただけ。星空それ自体は、この物語の重要な演出要素ではなかったようだ。
クライマックスの重要な演出要素は、藤沢さんを演じる上白石萌音の語りだった。星空は見せる必要はなかった。彼女の語りで十分だった。ずっと聞いていたくなるような語りだった。
難しい役を演じた松村北斗と上白石萌音の2人の自然な演技は良かったが、個人的には「君の名は。」で聞かせてくれた上白石萌音の声の魅力を再確認させられた作品だった。歌手、声優、ナレーター、朗読。彼女には、そういった声の仕事も、もっとやって欲しい。きっと長く、多くの人を魅了する名優になるはずだ。
もっと暗く重い話だと思っていたが全然ちがった。心が温まり優しい気持ちになる。相手を気づかうような気づかわないような感じの会話が良い。「パーフェクトデイズ」程ではないが日常的な出来事しか起きない。
お互いの病気(?)を知ってからの、相手を気づかうような気づかわないような感じの会話が良い。2人が友達でも恋人でもない関係なのも良い。ただの同僚だ。お互いけっこう言いたいこと言ってるのもいい感じだ
例えば、後半、日曜日の会社内での会話。ちゃんとは覚えてないが、
山添が藤沢に「何かあったらPMSのせいにすればイイから便利だよね」みたいなことを言う。皮肉やイヤミで言ったというよりは、思ったことをそのまま言っただけのように感じた。だから言われた藤沢も気にすることなく、「あっ、そだね今度からそうしよう」みたいな感じで受け流す ( ← 実際はこんなセリフ言ってません)。
藤沢も山添に、「パニック障害ってことで日曜に出勤してる」みたいなセリフを返す(ぜんぜん正確に覚えてません)。
何がどういいのか分析して説明出来ないが、「何か良くネ?」って思った。
あと、終盤の移動プラネタリウムのテントの中で、藤沢が山添と解説文を作った話が良かった。
観賞後、本屋で原作をパラパラっと見たら、映画であったような描写や会話がてんこ盛りで面白そうだった。買ってないけど図書館で予約した。
そして、2人の抱える問題が特に何か解決するわけでもない。
治っわけでも、症状が出なくなったワケでもない。PMSのときの憂うつ、イライラ、怒りは抑えられないし、パニックのときは死の恐怖を味わう。
だけど真っ暗闇に何となく微妙に光明が射したかな~?みたいな感じで終わったのが良かった。
それから、見ているうちに2人がホントに栗田科学の社員のような気がしてきた。
苦しみへの援助ではなく、ただ隣にいるということ
私自身も生理前になると気分がどーんと落ち込んで一人になりたかったり、人に不貞腐れた態度をとってしまうことがある。なので、そうした悲しみやイライラを引き起こすPMSには理解があるつもりだった。でも、藤沢さんのように、もはやイライラを越えて自分でコントロールできないほど怒り狂ったりする症状もあるのだと驚いた。
パニック障害についても理解していたつもりだったけど、発症のきっかけは人それぞれで、発作が起こるタイミングも人それぞれなのだと思った。劇中、山添君が会社の給湯室で発作を起こしてしまう場面がある。あれは何が原因だったのだろうか。電球が切れてチカチカしたことだろうか。「山添くんはパニック障害」という意識で観ていたため、忘れ物を取りに深夜の会社に行くシーンや、電車の通る線路横の道を自転車で走るシーンには内心心配しながら観ていた。発作が起こったらどうしよう…と。
PMSもパニック障害も、外見からその人がその病気を持っていることはわからない。私の身近にも、街中ですれ違う人の中にも、もしかしたらそういう人がいるかもしれないのに、思いやりができてないことがあるな、と我を省みた。
この作品では、思いやりが「わかりやすい助ける行為」で描かれるのではなく、「ただ隣にいること」として表れていた。苦しみを抱えている人が身近にいるとき、変に気を遣ったり助けたいと思ってしまうことがあるが、こんな風にいつも通りただ隣にいて会話したり日常を一緒に過ごすことだけでいいのだと思えた。
疲れた時に観るととても心に沁みる映画だ。主演のお二人以外の方たちもとても温かく優しい人柄を演じている。何より時間がゆっくり流れている感じがして、観ながらもこちら側に考える余白を与えてくれる。藤澤さんのお母さんはなぜデイサービスに通ってるのだろうかとか、二人が会社帰りに食べていた中華まんの中身はなんだろうなとか、藤澤さんは次の職場でどんな風に働いてるのかなとか。陽だまりの暖かさを感じさせるエンドロールもとてもよかった。
原作を読んだ上で見ましたが…
情報が解禁されてから原作を読み込み、今か今かと公開初日を待ち侘びていましたが、蓋を開けてみると意図がよく分からない謎の原作改変ばかり。私の好きなシーンもほぼ全カット。原作通りの藤沢さんと山添くんを望んでいた私にとっては、望んでいたものとかなりかけ離れている映画になりました。二人の友達でも恋人でもない関係性がじっくりと構築されていくところを描いた原作から、どうしてあんなものができあがってしまったのでしょうか。見ていてとても悲しかったです。キャストのお二方の演技はすごく自然で素晴らしかったので、それもあってとても惜しい!すべて原作通りにしろとは思っていませんが、いくらなんでも原作とかけ離れすぎていたのでこのような評価とさせて頂きました。
それでも生きていく
雨の中、ずぶ濡れになっている藤沢さんのシーン。オープニングから引き込まれた。
あいだあいだに挟まれる夜の街の光も素敵。
山添くんが電車に乗れず倒れ込む後ろ姿がたまらず、藤沢さんの柔らかい雰囲気とイライラした時の狂気めいた落差の表現。
二人とも自然で映画を見ていることを忘れてしまう。脇を固める役者さんも本当に存在する人たちみたい。
変に恋愛に発展するような展開でないのもよかったし、山添くんと恋人の別れのシーンもバッサリカットしているのもよかった。
「互いに助け合うこと」の大切さ
共にメンタル面での問題を抱える若い男女の物語だが、変にラブ・ストーリーのようなベタベタした展開にはならず、かといって「お互いに傷を舐め合う」みたいなジメジメした話にもならないところには好感が持てる。
特別な感情はないものの、相手を大切に思っている2人の距離間が絶妙で、とても心地よく感じられるのである。
そこで描かれているのは、「人を助けることによって、自分も救われる」という関係性で、人間というものが、助け合い、支え合う生き物なのだということを、改めて思い知らされた。
ゆったりとした時間の中で、淡々とした日常が描かれるだけなのだが、冒頭の上白石萌音のモノローグや、序盤のテロップでの病状の説明、あるいは終盤の松村北斗のモノローグなどがアクセントになっていて、劇映画としての作り方の工夫も感じられる。
「夜明け」を迎えるプラネタリウムのナレーションによって、「希望」が感じられるラストになっているのも良かったと思う。
その一方で、途中、近親者を自殺で失ったらしい人達のサークルが出てきて、主人公たちが勤める会社の社長や元上司が、二度と自殺者を出したくないと思っていることは分かるのだが、かといって、主人公たちは、病気を苦にして自殺を考えている訳でもないので、そうしたエピソードが、どこかチグハグで中途半端に感じられてしまった。
また、PMSの藤沢さんが、母親の介護のために故郷に戻って行くエンディングにも疑問が残る。
世の中での「生きづらさ」を感じていた2人のうち、パニック障害の山添くんは、何とか自分の居場所を見つけることができたのだが、藤沢さんの方は、はたしてどうだったのだろうか?
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