「じんわりと沁みる温かさ」夜明けのすべて 梣さんの映画レビュー(感想・評価)
じんわりと沁みる温かさ
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悲しい場面もないし感動を誘われた訳でもないが、なぜかずっと泣きそうになりながら見ていた。PMSによって前の会社でうまくいかず、今の会社でもイライラが抑えられないことのある藤沢さん、パニック障害で普通の人が普通にできることができない山添くん。相手のことを知らなければ「なんだコイツ」と思ってしまうようなことをお互いしていた2人が、相手のことを知って関わるうちに、男女だろうと苦手な人相手だろうと、助け合うことはできるということを認識する。最近はよく男女間のいがみ合いや気に入らない人間には何をしてもいいだろうというような人たちが多いような気がしていたので、この映画の中の人たちの優しさがそういったいざこざに疲弊していた心に沁みた。エンドロールも秀逸で、主題歌が流れて以上映画でした、というような感じではなく、日常がずっと続いていくような終わり方がこの映画のテーマに非常にマッチしているように感じた。
主演二人をはじめ、脇を固める俳優陣も皆よかった。
なにか大きな事件が起こるわけでも、ありえないような設定がある訳でもない。私たちの日常と地続きの世界で、藤沢さんと山添くんが生きている。現代社会に生きている人々にこそ見て欲しい映画だと思える作品だった。見られてよかった。
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