劇場公開日 2023年5月26日

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「鑑賞後感とは裏腹に残酷な話」aftersun アフターサン Jongoさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0鑑賞後感とは裏腹に残酷な話

2023年6月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

今作はメンタルヘルスを扱っていることは明らかで、今年3月に公開された大傑作(と自分は思っている)『The Son/息子』と重なる。
非常に期待していた作品なのだが、自分とは合わない点が多くモヤモヤした。

まず個人的に、カルムと自分で重なる部分がほとんどなかった。『The Son/息子』では、ニコラスが「人生に押し潰されそうだ」と言っていたことにティーンの時の自分を重ねずにいられなかった。何のための勉強?俺は何を期待されている?そして俺はそれに応える力量を持っている?何も確かなものがなく、一寸先は闇としか思えない人生感を持っていたあの頃の自分が甦ってきて非常に辛い作品だった。
今作のカルムもまさしく「人生に押し潰されそう」になっているが、でもお前には娘という絶対的に確かな存在がいたじゃないか!故郷もなく職もなく頼れる友人も恋人もおらず、ただ人生が過ぎてゆく中で唯一生きる意味を見出せた娘の存在。その彼女から「お金ないのに無理しなくていいよ」と言われたのは胸に突き刺さっただろうが、どれほどのダメージだったかははっきり言って想像するしかない。現在の自分はカラムの年齢に近づきつつあるが、職もあるし、辞めても帰る場所があるし、友人も少ないがいる。それらが全てなくなったとしても、映画が慰めてくれる。ストッパーが多すぎて、彼の気持ちが分からなかった。

また、映画的な決着も『The Son/息子』と比較してモヤモヤした。ソフィはカラムと同じ歳になり、彼の気持ちを理解して、自分の中であの時のまま時を保っていたカラムを行かせることができた。それは美談的な描かれ方で表現されている(と自分は受け取った)が、そこに非常にモヤモヤを感じる。
どんな理由であれ、若者があのような末路に至ることは嘆かわしいことだと思う。彼を理解するだけではなく、救うためにはどうするべきだったのか?メンタルヘルスに関して話すきっかけを作るという観点からも『The Son/息子』から後退している印象を受けた。

Jongo