94歳のゲイのレビュー・感想・評価
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胸を打つけど「普通のゲイ」の話ではないです
私は63歳のゲイです。
長谷さんの周りの人は、彼の前半生がいかに厳しく不毛であったかと強調したいようですが、当人は幸せそうだったです。
最後の若い女性の「高齢者にはLGBTはいないと思っていた」という愚かな発言が興味深かったです。
三島由紀夫が生きていれば今年で99歳。
長谷さんはそれより年下です。
文学を志していたなら「禁色」を読んでいないはずはない。
私は先輩たちから、新宿などではそれなりの、楽しみや享楽があったと教わりました。
94歳の暗黒面の強調は、それはそれでバイアスを感じました。
長谷さんは大阪人。
ド田舎の人ではありません。
ただ、私の若いころ、ホモだとバレたら会社辞めるしかないわね、と言っていたおネエさまがたの話も思いだしました。
最後に、ある男性とふたりで銭湯にいくシーンが、あります。
彼は銭湯に行ったことがない。
人前で全裸になったことも全裸を見たこともない。
で、越中ふんどしを2つ用意するのです。
なかなか考えさせられました。
それだけ恐れが深かったのですね。
でもあれを昔のゲイとして一般化するのも違うなぁと言うのが、偽らざるところです。
深い人間関係になると「何故結婚しないの?」という質問が怖くて転職を繰り返したということです。
それだけ繊細で正直だったのでしょうが、そういう人もいたわよねぇと言うことで、多くのゲイはもっと図々しかったとも思います。
若い女がたいへんだったのね、と、うるうるするのはなんだかなぁでした。
ただ、監督はそのような眼差しとはちょっと違う、のが救いです。
長谷さんが、晩年、ゲイと親密な人間関係を持てたのは、素直に喜ばしく感じました。
ハゲてて趣味だったのね。
先人はこんなに苦労して今を勝ち取ってきたのだ、も良いけど、昔の人も結構、楽しんでいたのよ、のほうが慰めになると思うのですが…
ちなみにこれはゲイの物語であって「同性愛者」の物語ではないです。
ビアンは出てきませんから。
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