通信簿の少女を探して 小さな引き揚げ者 戦後77年あなたは今のレビュー・感想・評価
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入口は興味深かったものの、行き止まり感多く、最後出来過ぎ
テレビ局ディレクターがたまたま購入した古本に古い通信簿が挟まれていたことから、持ち主を探し始めるということになるが、そう簡単にはみつからない。当時の情勢として、特攻回天の基地であり、その生き残りの人の証言が出てきたり、持ち主の親が中国からの引き揚げ者ではないかという話から、同じ体験をした加藤登紀子氏、山田洋次氏、秋吉敏子氏の話が出てきて、初めに協力を依頼した地元新聞社が住民名簿をもっていて、その住所を手がかりに地権者を探し当てると、同姓同名の別人だとわかった。たまたま同姓の誼でルーツの問い合わせをした人がいるとわかり、その問い合わせ先が持ち主の親戚で、持ち主の息子と姪から証言を得られた。持ち主は高齢でコロナ禍でもあり、面会は無理だということになり、そこで終わりかと思われたが、何とか実現した。何と、山田洋次氏が見抜いた通りの気丈な人柄だった。あまりにでき過ぎで、本人証明を示してほしいと思うほどであった。少し前に、NHK で放映された、別府には進駐軍のために夜の街で命をつないだ女性がいた、というドキュメンタリーとも関係あるかな、と思った。 父親の話は、映画『ラーゲリより愛を込めて』を連想した。
スリリングで良心的な作品…ではあるけれど
ネットで購入したゴーギャンに関する古書に、 70年以上前の小学生の通信簿が挟み込まれていた。ありえない偶然、しかも購入者はテレビのディレクター…。中を開くと成績優秀、しかし担任のコメントには影がある。ゴーギャンというのも蠱惑的だ。
匂坂ディレクターは、この偶然(僥倖?)がもたらした細い糸をたどり切って、長い時間をかけ作品に昇華させた。その粘り強い取材に拍手を送りたい。
通信簿の本人にたどり着けるのか、取材は難航し、紆余曲折を続ける。そこにも偶然が左右をして、徐々に本人に近づいてゆく。その過程で、終戦時の引揚者の過酷な運命が明らかになっていく。スリリングな追跡には、引き寄せられた。その分、今も地球上で戦争が続いている中、戦争が何をもたらすのかというメッセージ性は、本人以外のところで語られる要素が多く、少し後ろに引いた印象を持った。
この作品は、TBSドキュメンタリー映画祭の冠のもとで公開されている。他の作品もそうだが、テレビ番組として放送したものが、 ベースとなっている。面白い作品であれば何でも良いのだけれど、正直、劇場で料金を払って見る立場としては、テレビ番組と同じでは、物足りない。付加価値をつけて欲しい。本作の場合、ナレーターや案内人に有名俳優を起用したり、サイドストーリーとして 著名人を登場させたりしているが、これはいかにもテレビ的な盛り上げ方ではないか。過剰気味のナレーションやBGMと相まって、 映画作品と言うよりは、テレビ番組と言う印象が強くなってしまう。
題材は同じだとしても、画面設計とか構成とか演出とか、根本的なアプローチを変えて劇場公開に臨んでほしいと思うのは、欲張りすぎだろうか。匂坂さんは、作中では「ディレクター」と連呼されるが、エンドでは「監督」とクレジットされているのだから。
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